カテゴリー「化学」の56件の記事

2021年5月27日 (木)

絶対に面白い化学入門「世界史は化学でできている」

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている

左巻 健男 (著)

 左巻健男さんの大著作「世界史は化学でできている」です。この本は化学を専門とする筆者があえて化学者の目線で世界史を振り返ったものです。ですからタイトルは『世界史は「科学」でできている』ではなく『世界史は「化学」でできている』なのです。「科学」にするとより範囲が広くなり、いろいろな話を取り上げられるはずですが、あえて「化学」に絞っているところがこの本の企画が優れているところです。

 全392ページですから相当の時間を費やして調査および執筆をされたことは容易に想像がつきます。何十年にも渡る執筆活動で書き上げてきたたくさんの化学本の経験と知識から新たに生み出した集大成の本と言えるでしょう。下記に目次を紹介してありますが、多岐にわたった人類の歴史がいかに化学と密接な関係にあるのかがわかります。専門書のような難しい解説はいっさいなく、あくまでも読み物として楽しめます。

絶対に面白い化学入門 「世界史は化学でできている」
絶対に面白い化学入門 「世界史は化学でできている」

 筆者者の左巻さんからサインをいただくことができました。「これたいへんだったんだよ」と。「やーそう思います」と。

左巻健男さんのサイン
左巻健男さんのサイン

出版社からのコメント

「化学」は、地球や宇宙に存在する物質の性質を知るための学問であり、物質同士の反応を研究する学問である。火、金属、アルコール、薬、麻薬、石油、そして核物質・・・。化学はありとあらゆるものを私たちに与えた。本書は、化学が人類の歴史にどのように影響を与えてきたかを紹介するサイエンスエンターテインメント。

出版社 : ダイヤモンド社 (2021/2/17)
発売日 : 2021/2/17
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 392ページ
ISBN-10 : 447811272X
ISBN-13 : 978-4478112724

 

【目次】

はじめに

第1章 すべての物質は何からできているのか?

第2章 デモクリトスもアインシュタインも原子を見つめた

第3章 万物をつくる元素と周期表

第4章 火の発見とエネルギー革命

第5章 世界でもっともおそろしい化学物質

第6章 カレーライスから見る食物の歴史

第7章 歴史を変えたビール・ワイン・蒸留酒

第8章 土器から「セラミックス」へ

第9章 都市の風景はガラスで一変する

第10章 金属が生み出した鉄器文明

第11章 金・銀への欲望が世界をグローバル化した

第12章 美しく染めよ

第13章 医学の革命と合成染料

第14章 麻薬・覚せい剤・タバコ

第15章 石油に浮かぶ文明

第16章 夢の物質の暗転

第17章 人類は火の薬を求める

第18章 化学兵器と核兵器

おわりに

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2021年5月 6日 (木)

ゴムの日に天然ゴムのおはなし(5月6日)

 毎年5月6日は「ゴムの日」とされています。この日に因んでゴム製品をPRする企業はたくさんありますが、どの団体がいつ頃に「ゴムの日」を制定したのかはわかっていません。

天然ゴムの原料

 人類が初めて使ったゴムは、南米のアマゾン川流域の熱帯雨林を原産地とするパラゴムノキの樹液を固めた天然ゴムです。パラゴムノキはトウダイグサ科パラゴムノキ属の常緑高木で、名前の「パラ」はブラジル北部のパラ州に由来しています。

パラゴムノキ(函館市熱帯植物園)
パラゴムノキ(函館市熱帯植物園)

 このパラゴムノキの幹に傷をつけると、乳液状の白い樹液が得られます。これが天然ゴムの原料となります。

天然ゴムの採取
天然ゴムの採取

 採取したばかりのパラゴムノキの樹液は、ゴムの成分が分散した白い水溶液(ラテックス)です。これに少量の酸を加えて凝固させて乾燥すると生ゴムになります。

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生ゴム

天然ゴムの発見

 紀元前1200年頃から紀元前300年頃、現在のメキシコのベラクル州とタバスコ州の境目あたりでオルメカというアメリカ大陸最古の文明が栄えていました。オルメカという名前は現地のインディオの言葉で「ゴムの国の人」という意味です。このあたりにはパラゴムノキが豊富にあり、人々は天然ゴムを使いこなしていたのでしょう。

 オルメカの遺跡から、宗教的儀式として球技が行われた祭祀場と、その球技に使われた天然ゴム製のボールが発見されています。この球技は「トラチトリ」と呼ばれるフットボールによく似た球技として、その後に発展したマヤ文明やアステカ文明にも受け継がれました。

 1493年にクリストファー・コロンブスが第2回目の航海でジャマイカに立ち寄った際に、原住民が天然ゴムで作ったボールで遊んでいるところを発見したことで、天然ゴムがヨーロッパに伝わりました。

クリストファー・コロンブス
クリストファー・コロンブス

 しかし、その後約300年の間は特に利用価値もなく希少品として扱われるのみでした。天然ゴムが初めて道具として使われたのは1700年代後半になってからです。酸素の発見者としても有名なイギリスの科学者ジョセフ・プリーストリーが天然ゴムを使うと鉛筆で書いたものを消せることに気がつき、1772年に消しゴムを作りました。この天然ゴムを使った消しゴムはあっという間に世界中に広まりました。ゴムのことを英語でRubberといいますが、これはrub out(文字を消す)という言葉が語源になっています。

天然ゴムの主要生産地が東南アジアなのは

 19世紀の終わりになると、自動車などのタイヤに天然ゴムが使われるようになり、天然ゴムは需要に対して供給が不足して価格が暴騰しました。そのため、イギリスは南米からもち帰ったパラゴムノキの苗木を、当時植民地支配していた東南アジアのセイロン島(現在はスリランカ)に持ち込み天然ゴムの栽培を始めました。これが南米を原産とするパラゴムノキの樹液から作られる天然ゴムの主要な生産地が東南アジアとなっている理由です。

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2020年12月13日 (日)

鈴木梅太郎 オリザニン(ビタミン)の発見を報告

 現代においては「脚気」は直る病気ですが、昔は不治の病として人々にたいへん恐れられていました。日本では、元禄時代に江戸の町で大流行し、以後昭和に入るまでにたくさんの人々が脚気で命を失いました。脚気の原因はビタミンB1の不足ですが、当時は原因不明の病気だったのです。

 脚気の原因がビタミンB1の不足であることを突き止めたのは、日本の農芸化学者の鈴木梅太郎です。鈴木博士は脚気にかかった鳩に米糠を与えると、脚気が治ることに気がついたのです。

鈴木梅太郎
鈴木梅太郎

 1910年に脚気を治す成分を米糠から抽出することに成功し、同年12月13日にその研究成果を東京科学会で発表しました。1911年1月の東京化学会誌に「糠中の一有効成分に就て」という題名の論文が掲載されました。その論文には米糠の有効成分が脚気を治すだけではなく、動物に不可欠な栄養素であることが明記されていました。鈴木博士はこの成分を「アベリ酸」と命名し、後に「オリザニン」と付け直しました。このオリザニンがビタミンB1(チアミン)だったのです。オリザニンの発見は世界で初めてのビタミンの発見でした。

チアミン(ビタミンB1)の構造
チアミン(ビタミンB1)の構造

 しかし、残念ながら鈴木博士の研究成果は日本では大きく取り上げられることはありませんでした。当時、日本の医学界で脚気は伝染病であるという考えが中心的だったためです。その跡、鈴木博士の論文はドイツ語に翻訳されましたが、「オリザニンは新しい栄養素である」という1行が削除されてしまったため、ビタミンの発見としても世界的な注目を受けることはありませんでした。

 1911年、ポーランドのカシミール・フンクがオリザニンと同じ成分を抽出することに成功し、生命(ビタ)に必要な有機化合物(アミン)であるとしてビタミンと名付けました。

カシミール・フンク 
カシミール・フンク

 鈴木梅太郎は間違いなく世界で初めてビタミンを発見した人です。しかし、世界で注目を受けることがなかっため、ビタミンの発見をカシミール・フランクに譲ることになりました。

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2020年11月 7日 (土)

ケミカルライトはなぜ光る?

 コンサートやパーティーなどで使われるケミカルライト。最近はいろいろな色のものが手に入るようになりました。ダイソーで光の三原色の赤・緑・青のケミカルライト買ってきました。さっそくスティックをボキッと折って点灯させてみましたが、なかなか綺麗な色が出ます。

Chemicallight_2

 ケミカルライトの発光原理は化学発光(ケミカル・ルミネッセンス)です。化学反応で高エネルギー(励起状態)となった分子が元の安定したエネルギー(基底状態)に戻るときに、その差分のエネルギーを光として放出する現象です。科学捜査で血痕の分析に使われるルミノール反応も化学発光によるものです。

 ケミカルライトのスティックの中には2つの液体が別々に入っていて、スティックを折ることによって混合します。片方の液体は光のエネルギーの元になる物質と色の元になる色素と反応を進めるための物質(触媒)の混合物です。もう片方の液体は過酸化水素水です。

 この2つの液体を混合すると、シュウ酸ジフェニルが分解し、高エネルギー状態の物質ができます。その高エネルギー状態の物質が色素を高エネルー状態にします。色素が高エネルギー状態から元の安定したエネルギー状態に戻るときに、その差分のエネルギーを放出し、そのエネルギーに相当した色の光が出てきます。


(光のエネルギーの元になる物質+色素+触媒)+(過酸化水素水)

 →高エネルギー状態の物質+色素

 →高いエネルギー 状態の色素

 →安定なエネルギー状態の色素+差分のエネルギーに応じた色の光

 色素を変えることにより、差分のエネルギーが変えることができるので、異なる色の光を発光させることが可能です。また、光の三原色を出す色素を任意に混ぜると、異なる色を作り出すことができます。たとえば、赤・緑・青の色素を混ぜると白い光が出てきます。これは光の三原色の混色によるものですが、その原理については「光の三原色」と「色の三原色」|色が見える仕組み(7) で説明がありますので、興味がありましたら是非ご一読ください。
 

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2014年1月22日 (水)

ノロウイルスによる食中毒は最近になって増えたのか

■ウイルス性食中毒は古くて新しい食中毒

 食中毒とは、自然の毒物、化学物質、病原性の細菌などが混入した食品を食べることによって、中毒症状や急性の感染症を引き起こすことです。

 食中毒には様々な種類がありますが、ノロウイルスやロタウイルスなど、ウイルスが原因のものをウイルス性食中毒といいます。

 最近になって、ノロウイルスによる食中毒の事故のニュースが増えている印象があります。例えば、厚生労働省の食中毒事件一覧速報 2013年の食中毒の発生件数は1100件、そのうち細菌性のものが419件、ウイルス性のものが432件(ノロウイルスが416件)でした。一方、2000年の食中毒の発生件数は2247件、そのうち細菌性のものが1783件、ウイルス性のものが247件(小型球形ウイルスが245件)でした。

 実際のところはウイルスが原因の食中毒は古くからあったはずですが、厚生労働省がウイルスを食中毒の原因物質と認定したのが1997年であったこととも関係します。1997年以前は、ウイルス性食中毒は原因不明の食中毒として扱われました。

 ですから、厚生労働省の食中毒事件一覧速報の統計資料では、ウイルス性食中毒の発生件数が記載されたのは1998年からです。1997年にはウイルス性食中毒の発生件数は記載されていません。ウイルスが食中毒の原因として認定されていなかったからです。

 このようにウイルス性食中毒は古くて新しい食中毒なのです。

■ノロウイルスによる食中毒が増えている理由は

 ノロウイルスは1968年に米国のオハイオ州ノーウォークの小学校で発生した集団食中毒で初めて発見されました。このとき、発見されたウイルスはノーウォークウイルスと名付けられました。

 1972年に電子顕微鏡でノーウォークウイルスの構造が明らかになり、ウイルスの形状から小型球ウイルスと名付けられました。それ以降、このウイルスとよく似たウイルスを原因とした食中毒事故が各地で報告されるようになり、総称としてノーウォーク様ウイルス、小型球形ウイルスと呼ばれるようになりました。

Norovirus

  1990年に小型球形ウイルスの遺伝子の解析が行われ、カリシウイルス科の属に分類できることが判明しました。2002年の国際ウイルス命名委員会の提言と、パリで開催された第12回国際ウイルス学会において、ノーウォーク様ウイルスはノロウイルスと命名されました。つまり、ノロウイルスという言葉が初めて使われたのは2002年のことです。

 また、最近になって、ノロウイルスを簡易に発見する方法が確立され、2007年から検査が行われるようになりました。2012年には3歳以下の乳幼児と65歳以上の老人に保険が適用されるようになり、普通の病院でも検査を受けることができるようになっています(対象外の人の検査は保険適用外で自費になります)。このような背景から、食中毒事故が発生した際に、ノロウイルスが発見されやすくなっています。

ひと昔前は、今年の風邪はお腹にくるなどという言い方があったように思います。発熱、嘔吐、下痢などを伴う風邪は、ノロウイルスだった可能性も否定できません。

ノロウイルスによる食中毒は最近になって増えたような印象があるのは

  • ウイルス性食中毒が古くて新しい食中毒だったこと
  • ノロウイルスという言葉が使われ始めたのは2002年だったこと
  • ノロウイルスの簡易検査が行われるようになり、発見されやすくなったこと

などを理由として挙げることができるでしょう。

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2013年12月21日 (土)

複合材料とは 目的によって作り出される材料

 複合材料は2種類以上の材料を組み合わせたもので、元の材料よりもすぐれた特性をもっています。複合材料に使う材料は、その目的や用途によって選ぶことができます。

 複合材料は材料の中心となる素材によって分類され、プラスチックが母材になっているもの、金属が母材となってるもの、セラミックスが母材となっているものがあります。

 たとえば、鉄筋コンクリートはセメント、砂、砂利を混ぜ合わせたコンクリートに、鉄の細い棒を埋め込んだ複合材料です。鉄筋コンクリートは、次の図のように、圧縮に強く、引っ張りに弱いコンクリート材料に、引っ張りに強い鉄の棒を埋め込むことによって、全体としてコンクリートの強度を高めています。

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 プラスチックを母材とする複合材料の代表は、繊維強化プラスチックです。繊維強化プラスチックは、ガラス繊維や炭素繊維とプラスチックを組み合わせた複合材料です。プラスチックが繊維で強化されていることから、繊維強化プラスチックはFRP(Fiber Reinforced Plastics)と呼ばれます。ガラス繊維強化プラスチックはGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、炭素繊維強化プラスチックはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)と略されます。

 FRPは軽量で強度が高く、弾性が高い、耐衝撃性・耐熱性・耐水性・耐薬品性・電気絶縁性にすぐれているなどの特性から、いろいろな用途に使われています。

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 複合材料はさまざまな材料を組み合わせてつくるため、目的や用途に合わせた特性をもつ製品をつくりだすことができます。目的や用途に応じて柔軟な設計が可能な目的指向型の材料といえるでしょう。

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2013年12月18日 (水)

プロパンガスと都市ガスの違い

家庭で使うガスには「都市ガス」と「プロパンガス」があります。この2つのガスは成分がまったく異なり、同じものではありません。違いを知らずに利用すると、事故が発生する可能性もありますので注意が必要です。

■プロパンガス

プロパンガスは、油田や天然ガス田または石油製などの処理の過程で生じる副生ガスから作られてもので、正式な名称は石油ガスです。圧力をかけて液体にしたものは、液化石油ガス(LPG)と呼ばれます。プロパンガスの主成分はプロパンとブタンです。

現在、プロパンガスの消費量は都市ガスより多く、ガスの需要の半数以上となっています。

■都市ガス

一方の都市ガスは地層中に存在するガスを採掘して取り出したもので、正式な名称は天然ガスです。圧力をかけて液体にしたものは、液化天然ガス(LNG)と呼ばれます。天然ガスの主成分はメタンです。

都市ガスはガス会社がガス管を使って供給するガスの総称です。1970年代は石炭を原料として作られる石炭ガスやナフサやブタンなどを改質したガスが使われました。当時の都市ガスには一酸化炭素が含まれていたため、ガス漏れによる死亡事故が発生する場合がありました。現在は、熱量調整のために、天然ガスに液化石油ガスを混合した13A規格のものが主流となっています。この規格は14種類あり、地域によっては、13A規格と異なる都市ガスが使われている場合もあります。なお、一酸化炭素は含まれていません。

■ガスコンロは共通ではない

 家庭で使われているガスにはプロパンガスと都市ガスがあります。また、ひとくちに都市ガスと言っても様々な種類があります。そのため、引っ越しをしたときには、使っていたガスコンロが使えなくなる場合があります。誤ったガスコンロを使うと不完全燃焼による一酸化炭素中毒や、火災などの事故が起こる場合もあります。必ずガスの種類を確認するように注意しましょう。

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2013年12月 9日 (月)

繊維の分類 天然繊維と化学繊維

 繊維にはいろいろな種類がありますが、大きく分けると天然繊維化学繊維があります。 

 天然繊維には、麻や綿花などの植物から得られるセルロースを主成分とした植物繊維、羊や蚕などの動物から得られるタンパク質を主成分とした動物繊維などがあります。また、石綿やガラスなど鉱物由来の鉱物繊維があります。

 化学繊維は化学的処理でつくられる繊維で、天然高分子を化学薬 品で処理し、溶解したあとに繊維にする再生繊維、天然高分子と化学薬品を化学反応させてつくる半合成繊維、おもに石油を原料とする合成高分子からつくられる合成繊維などがあります。

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2013年7月30日 (火)

合成洗剤のソフト化とは ABSからLASへ

 昭和30年代に入り電気洗濯機が普及し始めると、合成洗剤の需要が急激に伸び始めました。この頃、合成洗剤は高級アルコール系洗剤が主流でしたが、石油系合成洗剤のABS(側鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)の性能が認められるようになると、ABSが合成洗剤の主流になりました。

 また、この頃から台所用洗剤など洗濯以外の目的に使われる合成洗剤が登場したこともあって、合成洗剤の消費量はさらに増加しました。ABSは洗浄力が高く、泡立ちが良いことが消費者の好みに合致したこともあって、合成洗剤として不動の地位を占めました。

 ところが、この消費者にとって大人気のABSの消費量の増大は、皮肉にも消費者の生活を脅かす環境問題を引き起こすことになりました。昭和35/36年頃から、河川での洗剤の発泡が目立つようになり、時間が経過しても泡が消えないということが社会問題となりました。

 当時は家庭排水を直接河川などへ流す場合が多く、ABSが排水中に泡だって長時間滞留し河川や湖沼の水質汚濁や地下水の汚染問題を引き起こしたのです。また活性汚泥法といって微生物の力を借りて排水処理を行う下水処理設備をもってしても対処できないことが分かりました。

 この問題はアメリカを始めとする先進諸国でも発生し、その原因究明が行われました。調査の結果、アルキル基が枝分かれした構造をもつABSが化学的にも生物学的にも極めて安定な物質であり、分解しにくい物質であることが分かりました。すなわち、ABSが排水中で分解されることなく河川などに長時間滞留してしまうことや、下水処理場で微生物による分解ができないことの原因が明らかになったのです。

 ABSが環境問題を引き起こすことが分かると、ABSに替わる合成洗剤の開発が進められました。その結果、アルキル基が枝分かれしていないLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)が合成洗剤として使われるようになりました。LASは生分解性が良く、下水処理場での微生物による分解ができる合成洗剤としてABSに置き換えられました。

 この生分解性の良い合成洗剤をソフト型、ABSのように生分解性の悪い合成洗剤をハード型と呼び、ハード型の合成洗剤からソフト型の合成洗剤に転換していくことを、合成洗剤のソフト化と言います。日本では昭和四十年頃から合成洗剤のソフト化が進められ、その数年後にはほとんどの合成洗剤がソフト型になりました。現在はJISの規定から生分解性の良い合成洗剤しか使うことができずABSは使用されていません。LASよりもさらに生分解性の良い合成洗剤も使われています。

 さて、合成洗剤のソフト化により環境汚染の問題が解決できたと言えるでしょうか。ソフト型洗剤は生分解性が高いのは事実ですが、その分解には下水処理場での微生物分解が必要です。従って排水を直接河川に流している場合には、ソフト型合成洗剤でも環境問題を引き起こします。

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2013年7月19日 (金)

おならは爆発するのか? NASAがおならの研究をしていた

 おならによるガス爆発を心配して、おならの研究に真面目に取り組んだ世界屈指の研究者達がいました。アポロ計画やスペースシャトルで有名なアメリカのNASA(米国航空宇宙局)の研究チームです。

 彼らは狭い宇宙船内でのおならによるガス爆発やガス中毒を防ぐ必要があると考えました。彼らの研究によって、おならには、なんと約400種類の成分が含まれていることが分かったのです。

 おならは窒素、二酸化炭素、メタン、水素、酸素が主成分です。このうち、メタンと水素は燃料としても使われており、燃えるどころか、爆発の危険性があるガスです。人によってガスの含有量には幅がありますが、メタンは0~26、水素は0.06~47パーセント含まれています。

 メタンと水素は、腸内の細菌によって作られるもので、体では作られません。ちなみに、メタンは主に結腸で作られますが、腸内にメタンを作る菌がいない人のおならにはメタンは含まれません。

 さて、ものが燃えるためには、可燃性物質と酸素供給源と着火源の三つが必要です。この三つの条件がそろうと、燃焼したり爆発が起こります。またガスが燃焼・爆発するには、ガスが空気中にどれぐらい含まれるかが重要になります。メタンでは5.3~14、水素では4~75パーセントの範囲にあるときに燃焼・爆発します。この範囲のことを、爆発限界あるいは燃焼限界といいます。

 おならに含まれるメタンや水素の成分比を考えると、それらが爆発限界の範囲にある場合もあるでしょう。酸素は空気中にありますから、あとは着火源さえあれば三つの条件がそろうことになります。もちろん、煙草を吸っているときに、おならをしたとしても、おならが燃焼・爆発することはありませんのでご安心ください。これは、おならが空気中に拡散してしまうからです。お尻から出てすぐのおならは燃焼する危険性があります。時々、おならが青白い炎を一瞬出して燃焼するのを見せるタレントがいますが、やけどをする危険性もありますから、実験はしない方がいいでしょう。

 おならの爆発事故を調べてみると、対外に出たおならが爆発したという例はないようです。しかし、腸内にたまったガスでは、医療現場で不幸な事故が全世界で起きていました。例えば、今から20年ほど前、デンマークの病院で26歳の男性が腸の手術を受けました。

 このとき、男性の腸内にたまったガスが、電気メスの熱で引火し、爆発を起こしました。爆発で男性の結腸はメチャクチャになり、手当ての甲斐もなく男性は死亡してしまいました。

 日本でも、過去に東京の大学病院で起きています。大腸の手術を受けた女性のおならが爆発、原因はやはり電気メスでした。この女性は命には別状はありませんでしたが、腸を余計に切り取られることになりました。

 現在は、手術前に感染予防のために下剤や浣腸で腸内をカラにしますし、不燃性のガスを予め注入しておくなどの対処をしているそうです。実際には、上述のような爆発事故は過去に起きた非常に稀なことですので、ご安心ください。

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