カテゴリー「化学」の70件の記事

2023年3月12日 (日)

元素の周期表を考えた人たち

 古代の科学者たちは物質は「火」「土」「水」「空気」の四元素からできていると考えました。特にアリストテレスの四元素説は古代ギリシアや古代ローマの時代から19世紀頃まで広くヨーロッパで支持されました。四元素説を最初に唱えたのは古代ギリシアの自然哲学者エンペドクレスですが、これを発展させたアリストテレスの四元素説の方が後々まで広く支持されたのです。

 古代ギリシア学者デモクリトスは「ものを分けていけば、もうそれ以上分けることができないものになるはずだ」と考えましたが、この考え方は受け入れられませんでした。17世紀にアイルランド出身のロバート・ボイルは理論的に同じような考えを提唱しましたが理解されませんでした。

 18世紀の後半、フランスのアントワーヌ・ラヴォアジエはボイルの考え方を追及し、水素と酸素の性質を明らかにしました。そして彼はそれまで有力であった4元素説を否定し「元素とはそれ以上分解できないものである」と再定義し33種類の元素を掲載した表を発表しました。

 19世紀の初めにイギリスのジョン・ドルトンが原子論を発表すると、科学者たちは競って新しい元素の発見に取り組むようになりました。元素が発見されていくにつれて、多くの科学者は元素がその性質によって分類できるのではないかと考えました。

 1862年、フランスのベギエ・ド・シャンクルトワは元素を原子量の順番で円筒の表面に立体的にらせん状に並べていくと、ちょうど原子量が16番ごとによく似た性質をもつ元素が重なることに気がつきこれを「地のらせん」と呼びました。同じように1864年、イギリスのジョン・ニューランズは元素を原子量の順に並べて行くとまるでドレミの音階のように8番ごとに性質が良く似た元素が現れることに気がつき、1865年に「オクターヴ説」を発表しました。

 このような中、1863年にロシアのドミトリ・イヴァノヴィチ・メンデレーエフは当時発見されていた63種類の元素に対応する原子を原子量の順に並べると同じ性質の元素が周期的に現れることを見い出しました。1869年にそれを表にまとめ、この表を「元素の周期表」と名付けました。

メンデレーエフと1869年に作成された周期表
メンデレーエフと1869年に作成された周期表

 シャンクルトワやニューランズのように多くの科学者が「元素は同じ性質の元素が周期的に現れる」ことを示し表を作りましたが、現在ではメンデレーエフが周期表を作った人として知られています。それは多くの科学者が当時見つかっていた元素に対して表を作ったのに対し、メンデレーエフは表を作るにあたって元素が存在しないところには未知の元素があるはずだと予言して空欄にしていたからです。その後、その空欄に入る元素が次々と発見されていきメンデレーフの周期表の正しさが実証されたのです。

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メンデレーエフが周期律表を発表(1869年3月6日)

112番元素の名称をコペルニシウムと決定(2010年2月19日)

金・銀・銅の元素記号はなぜ Au・Ag・Cu なのか

ココログ夜明け前

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2023年2月28日 (火)

世界初の合成繊維「ナイロン66」開発(1935年2月28日)

 繊維にはいろいろな種類がありますが、大きくわけると天然繊維と化学繊維にわけることができます。天然繊維には麻や綿花などの植物から得られるセルロースを主成分とした植物繊維、羊や蚕などの動物から得られるタンパク質を主成分とした動物繊維、石綿やガラスなどの鉱物から作られる鉱物繊維があります。

 化学繊維は化学的処理で作られる繊維で、天然高分子を化学薬品で処理・溶解した後に繊維とする再生繊維、天然高分子と化学薬品を化学反応させて作る半合成繊維、主に石油を原料とする合成高分子から作られる合成繊維があります。

 世界で初めて開発された合成繊維はポリアミド系のナイロンです。ナイロンは1935年に米国デュポン社のウォーレス・カルザースの研究グループによって合成されました。同年2月28日、研究グループのジェラード・ベルシェがカロザースの指導のもとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からポリアミド6-6 を作りました。この物質を棒で引き上げると繊維ができました。デュポン社はこの合成繊維の製品化を決め、カロザースに部下をつけましたがカルザースは体調の問題で解任され部下がプロジェクトを引き継ぎました。

ウォーレス・カロザース
ウォーレス・カロザース

 デュポン社はこの合成繊維をナイロンと名付け、「石炭と水と空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」というキャッチコピーで発売しました。ナイロンは現在でも衣料品、自動車のシート、カーペット、釣り糸、ギターの弦などとして幅広い分野で使われています。

 カロザースは1928年頃から精神疾患をわずらい1937年4月29日に青酸カリを服毒し自殺しました。カロザースが発明したナイロンが発表されたのは彼の死後から2年後の1939年でした。

たカロザースは1937年4月29

。ナイロンで成功したが「達成できているモノは何もなく才能が枯渇した」と考えるようになる。妹が死去するという不幸も重なり、1937年4月28日、フィラデルフィアのホテルの一室で青酸カリを混ぜたレモンジュースを飲んで自殺した[4]。彼の娘が誕生したのは自殺からおよそ7カ月後(1937年11月27日)だった。

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ウォーレス・カロザースの命日(1937年4月29日)

プラスチックの語源|塑性と弾性の違い

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2023年2月19日 (日)

112番元素の名称をコペルニシウムと決定(2010年2月19日)

 1996年2月9日、ドイツの重イオン研究所は112番目の元素の合成に成功しました。しかしながら、この元素は極めて短時間しか存在できないため本当に存在するのかどうか再確認が難しい状態でした。2000年と2004年にロシアのドゥブナ合同原子核研究所、2007年に理化学研究所の仁科加速器研究センターが合成に成功すると、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)は2009年5月にこの元素の存在を正式に認める声明を出していました。

 この元素は暫定的にウンウンビウムと名付けられていましたが、この元素の名前は合成に成功したドイツの重イオン研究所のジクルト・ホフマン教授が地動説を提唱した天文学者コペルニクスにちなんでコペルニシウムと名付けることを提案していました。ホフマン教授によれば「世界観を変えた傑出した科学者の名をたたえる」というのが命名の理由だそうです。

コペルニシウムの原子構造
コペルニシウムの原子構造

 IUPACが112番元素の名前を「コペルニシウム」と正式に命名したのは2010年2月19日です。IUPACはコペルニクスの誕生日2月19日にあわせてコペルシウムという名称を発表したのです。

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2023年1月28日 (土)

プラスチックの語源|塑性と弾性の違い

 日本語でプラスチックというと、多くの場合はプラスチック材料やプラスチックで作られたもののことです。ところが英語のプラスチックplasticには日本語と同じ名詞としてのプラスチックという意味の他に形容詞としての「形を作ることができる」という意味があります。もともとplasticはギリシャ語で塑造という意味をもつplastikos という単語に由来しています。塑造とは粘土などの柔らかな材料で像などを造ることです。

塑造
塑造

 プラスチックが意味する「形を作ることができる」という性質のことを可塑性または塑性といいます。可塑性とは「外から力を加えると形を変えることができ、力を取り除いても元の形に戻らない性質」です。例えば、粘土の固まりは力を加えると変形しますが力を取り除いても元の固まりに戻ることはありません。またゴムのように「外から力を加えると形を変えることができ加えた力を取り除くと元の形に戻る性質」を弾性といいます。

>塑性と弾性の違い
塑性と弾性の違い

 プラスチックは合成樹脂とも呼ばれます。樹脂は松ヤニや漆などのように樹液が固まったもので、自然由来の樹脂のことを天然樹脂といいます。私たち人類は古代から天然樹脂を利用してきましたが、天然樹脂は採れる量が少ないうえに取り扱いが面倒という問題がありました。そのため、人類にとって天然樹脂に代わる材料を手に入れることは積年の夢でした。

 やがて天然樹脂によく似た性質を持つ物質が人工的に作り出されると、それらの物質のことを合成樹脂と呼ぶようになりました。今日では、合成樹脂というと原料や素材、プラスチックというと成型品を意味することが多いようですが言葉の使い分けに厳密な区別はありません。

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2022年11月18日 (金)

実用的写真術を発明|ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールの誕生日(1787年11月18日)

 1787年11月18日は世界で初めて実用的な写真技術を発明したフランスの画家・写真家のルイ・ジャック・マンデ・ダゲールの誕生日です。

 ダゲールは若い頃にパノラマ画家ピエール・プレボに師事し、建築、劇場の舞台美術、パノラマ画を学びました。タゲールは優れた劇場イリュージョン技術により劇場設計者として有名になり、1822年7月にパリでジオラマ劇場を開きました。

ダゲレオタイプで撮影したダゲールの肖像写真
ダゲレオタイプで撮影したダゲールの肖像写真

 同じ頃、写真の技術の基礎となる印刷技術ヘリオグラフィを発明したフランスのニセフォール・ニエプスはカメラ・オブスクラの画像を写真に残す技術の開発を始めました。写真の撮影はすぐに成功したものの長く定着させることができるまで数年かかりました。何とか画像を写真として残すことができるようになりましたが、写真を撮影するのに非常に長い露出時間を要するためこの写真技術は実用的なものではありませんでした。

 1829年、ニエプスは自身が発明した写真技術を実用化するためダゲールと共同研究を始めました。そして光化学反応で変色する銀化合物を写真に利用することに成功しました。しかしながらニエプスは研究途上の1833年にこの世を去りました。ダゲールは単独で研究を継続し、ついに銀板写真法を発明し1839年に発表しました。この写真技術はダゲレオタイプと呼ばれ、10~20分の露光時間で写真を撮影することができました。フランスの科学者フランソワ・アラゴはこの実用的な写真撮影法を政府に推薦しました。ダゲールは政府から終身年金を受け取るかわりにダゲレオタイプを公開しました。これによってタゲレオタイプは世界中に広まりました。

 ダゲールがこの世を去ったのは1851年7月10日、有益な技術を研究開発した科学者として彼の名前はエッフェル塔に刻まれています。

【関連記事】

写真技術の先駆者 ジョセフ・ニセフォール・ニエプス没

カメラ発明の日(1839年8月19日)

カメラ発明の日は3月19日ではなく8月19日

写真の日(6月1日)

カメラと写真の仕組み

ピンホール現象とカメラオブスクラ 写真の仕組み(1)

カメラオブスクラの像を写真に残す 写真の仕組み(2)

白黒写真の仕組み 写真の仕組み(3)

カラー写真の始まり 写真の仕組み(4)

加色法によるカラー写真の仕組み 写真の仕組み(5)

減色法によるカラー写真の仕組み 写真の仕組み(6)

 

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2022年11月14日 (月)

油脂とトランス脂肪酸

〇動物性油脂と植物性油脂

 油脂は天然の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物で脂質の仲間です。油脂は大きくわけると動物から取れる動物性油脂、植物から取れる植物性油脂があります。油脂は常温で液体のものは「油」、固体のものは「脂」と表します。

 動物性油脂には魚油や鯨油など海生の動物から取れるものとラード(豚脂や牛脂)やバターなど陸生の動物から取れるものがあります。植物性油脂にはコーン油、大豆油、ヤシ油、パーム脂、カカオ脂、木蝋(もくろう)などがあります。バターやマーガリンは食用の油脂の中に水分が分散したコロイドです。

〇マーガリンは健康に良くない?

 多くのマーガリンは植物性油脂から作られているので一般的にマーガリンの方がバターよりも健康に良いというイメージがあります。ところがマーガリンにはトランス脂肪酸がたくさん含まれており、健康に悪影響を与える可能性があるという指摘があります。

 自然由来の脂肪酸は二重結合の部分がシス型という折れ曲がった構造をしています。マーガリンを製造する際、マーガリンを常温で固体とするため水素を添加しますが、このとき脂肪酸の二重結合の一部がトランス型という直線状の構造になりトランス脂肪酸となります。

トランス脂肪酸の例(オレイン酸)
トランス脂肪酸の例(オレイン酸)

〇トランス脂肪酸の問題

 トランス脂肪酸は血中の悪玉コレステロール(LDL)を増加させ善玉コレステロール(HDL)を低下させることから心臓疾患を発症するリスクを高めると言われています。現在のところ日本では食品中のトランス脂肪酸について特段の規制はありませんが、欧米では含有量の表示が義務づけられたり、含有量を制限されたりしています。日本食品油脂検査協会によれば日本で販売されているバターとマーガリンに含まれるトランス脂肪酸の平均の含有量はそれぞれ100 gあたり1.95g、7gであり、確かにマーガリンにたくさんトランス脂肪酸が含まれていることになります。

 WHO(国連世界保健機関) と FAO(国連食料農業機関)の合同専門家協議会でまとめられた報告書によると、トランス脂肪酸の摂取はエネルギー比で1%以下にすることとされています。米国人の一日あたりのトランス脂肪酸の平均摂取量は報告書の値を上回りますが、日本人の場合は下回っています。これは食生活の違いによるものです。つまり日本人の平均的な食生活を考えると、それほど心配ないということになります。しかし、日本人の食生活は欧米化していますし、偏食をしたり脂肪分の多い菓子類をたくさん食べたりしている場合には注意が必要です。

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バターとマーガリンの違い

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2022年11月11日 (金)

バターとマーガリンの違い

〇バターとマーガリンの生い立ち

 人間は太古の時代から牛や羊の生乳を利用してきました。今から約5千年前のメソポタミアの遺跡で当時の人たちがウシを飼い牛乳を絞っている様子を描いた石版が見つかっています。私たち人類はそれ以前の新石器時代から酪農を始め牛乳を利用してきたと考えられています。

 生乳を静置しておくと、表面に乳脂肪(クリーム)が浮いてきます。その乳脂肪を練り上げたものがバターです。古代の人たちが生乳をかき混ぜているうちに期せずして乳脂肪が自然に固まりバターができることもあったでしょう。そのためバターの歴史はとても古く詳しいことはわかっていません。

 バターの製法の最も古い記録としては今から約4千年前のインドの教典にバターの作り方が書かれているそうです。バター(butter)の語源はギリシャ語で凝固した乳を意味する「boutyron」と考えられています。

 人間は太古の時代から牛や羊の生乳を利用してきました。生乳をかき混ぜていると期せずして乳脂肪(クリーム)が分離して固まることもあったでしょう。そのためバターの歴史はとても古く詳しいことはわかっていません。最も古い記録としては今から約4000年前の紀元前20世紀のインドの教典にバターの作り方が書かれています。紀元前5世紀頃のメソポタミア文明や古代ギリシアの時代にも記録があり創世記などにも登場します。

 一方、マーガリンは歴史は浅く今から約150年前に発明されました。1869年にフランスのナポレオン3世が当時戦争下で不足していたバターの代替品を募集しました。フランスの食品化学者メージュ・ムーリエ・イポリットが牛脂に牛乳を混ぜて冷やして固めるとバターによく似たものができることを発見しバターの代用品を作ることに成功しました。

 マーガリン(margarine)の語源はギリシャ語で真珠を意味する「margarite」です。マーガリンを作るときに真珠のように輝く油脂の粒ができることからマーガリンと名付けられたそうです。

メージュ・ムーリエ・イポリット
メージュ・ムーリエ・イポリット

〇バターとマーガリンの違い

(バター)

 バターは原料が生乳で乳脂肪分80%以上、水分17%以下と定められています。添加物も食塩と香料しか認められていません。原料が生乳ではないものや、原料が生乳であっても食塩や香料以外の添加物が含まれるものはバターとは呼びません。

 古代のバターは乳脂肪の分離に時間がかかり乳脂肪が乳酸発酵するためヨーグルトのような酸味と独特の風味のある「発酵バター」となりました。現在では遠心分離器を使って速やかに乳脂肪の分離を行うことができるので「非発酵バター」を簡単に作ることができます。日本では非発酵バターが主流ですが、ヨーロッパでは非発酵バターより発酵バターの方がよく食べられています。食塩は風味や保存性を良くするために加えられますが、お菓子やケーキなどを作るときには食塩を含まないバターが使われます。

 原 料:牛の生乳

 定 義:乳脂肪分80%以上、水分17%以下

 種 類: 発酵バター(乳脂肪を発酵)、非発酵バター(乳脂肪を発酵させない)

      加塩バター(食塩1~2%を添加)、無塩バター(食塩を含まない)

 添加物:食塩および香料のみ

 バターの色はビタミンAに含まれるカロテンによって黄色です。牛が食べる牧草は夏になるとカロテンを豊富に含みますが、牛は冬の間はカロテンをあまり含まない干草を食べます。そのため冬に作られるバターは白っぽくなります。

(マーガリン)

 マーガリンは原料に乳脂肪を含まないか、乳脂肪を主原料としない食用油脂で脂肪分80%以上と定められています。マーガリンは食用油脂に水を加えたり、水素を化学反応させたりしたものを固めて作ります。市販されている多くのマーガリンに使われている食用油脂はコーン油や大豆油などの植物油脂ですが魚油・豚脂・牛脂などの動物性油脂を使ったものもあります。 このことからもわかる通りバターが動物性油脂でできていることは間違いありませんが、マーガリンには動物性油脂のものがあり必ずしも植物性油脂からできているとは限りません。

 マーガリンはバターと違って乳化剤や安定剤などの食品添加物を使うことが可能なため、保存性を高めたり脂肪分の割合を変えたりいろいろな風味をつけたりすることができます。最近、スーパーマーケットの売り場には脂肪分80%未満のマーガリンに似た商品がたくさん並んでいますがこれはファットスプレッドといいマーガリンとは区別されます。

 原 料:植物性油脂・動物性油脂

 定 義: マーガリン:脂肪分80%以上

      ファットスプレッド:脂肪分80%未満

 種 類:さまざまな種類がある

 添加物:食塩、香料、乳化剤、安定剤など

 マーガリンやファットスプレッドは保存状態によって変色することはありますが、季節によって色が変わるということはありません。

バターとマーガリンの原料
バターとマーガリンの原料

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2022年9月 2日 (金)

図解入門よくわかる最新プラスチックの仕組みとはたらき[第4版]

図解入門よくわかる最新プラスチックの仕組みとはたらき[第4版]

秀和システム 桑嶋幹・木原伸浩・工藤保広

 久しぶりに書籍の紹介です。この本は書籍としては新刊ですが、初版2005年7月、第2版2011年9月、第3版2019年9月と内容が更新され続けています。今回出版されたのは第4版です。

 ここ数年でプラスチックを取り巻く環境は大きく変化しています。プラスチックの自然環境や資源問題への影響が注目され、新たな法整備も進みました。

 この本はプラスチックの基礎(第1章)・合成(第2章)・用途(第3章、第4章)・新技術(第5章)・環境問題(第6章)について最新の情報が網羅されている入門書です。プラスチックの合成方法の解説では難しい化学式を使わずに様々な重合を解説しています。プラスチックの利用や環境問題に関わる統計データも最新のものに更新されています。

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 私たちの身の回りには、日用品や家電品、自動車や飛行機などプラスチックが使われているものがたくさんあります。ところがプラスチックをどうやって作るのかなどその詳細は、あまり知られていません。本書は、プラスチック(合成樹脂)の種類や特性、用途などをやさしく解説した入門書の第4版です。新しく施行された「プラスチック資源循環促進法」やSDGsに対応した、新しい生産・分解技術についての解説を追加しました。


目次

はじめに

第1章 プラスチックとは何か

1-01 プラスチックを探してみよう
1-02 そもそもプラスチックとは
1-03 人類とプラスチックの関わり合い
1-04 プラスチックの発展(合成樹脂の利用)
1-05 プラスチックはどのような物質か
1-06 プラスチックの種類と性質
1-07 プラスチックの見分け方(用途や品質表示)
1-08 プラスチックの見分け方(化学分析)
1-09 広がるプラスチックの利用

第2章プラスチックができるまで

2-01 プラスチックのもと(モノマーとポリマー)
2-02 手をつなぎ変えながら伸びていく重合(付加重合) 
2-03 手をつないで伸びていく重合(縮合重合)
2-04 どうすれば長くなるか
2-05 プラスチックの性質を決める(分子間相互作用の重要性)
2-06 2種類以上のモノマーやポリマーを使う(共重合とポリマーアロイ)
2-07 プラスチックに形を与える(成型)
2-08 熱による成型方法いろいろ
2-09 融けないプラスチックを作る(架橋)
2-10 ゴムとエラストマー
2-11 樹脂
2-12 プラスチックの大部分はプラスチックではない!
2-13 発泡体

第3章 私たちの暮らしとプラスチック

3-01 家庭用品には汎用樹脂が活躍
3-02 文具では用途に合わせて様々な素材が活躍
3-03 家電製品はメンテナンスが少なくてすむ素材が活躍
3-04 包装はプラスチックの最も大きな利用先 
3-05 衣料には適度な強度と肌触りが大事(合成繊維)
3-06 軽くて高機能なメガネ、コンタクトレンズ
3-07 錆びない材料で維持しやすい住居
3-08 スポーツ、レジャーでは軽くて強い素材が活躍
3-09 子どもが安心して遊べる素材を
3-10 携帯電話、スマホ、タブレットにもプラスチックを幅広く活用

第4章 産業で活躍するプラスチック

4-01 自動車では内装からエンジンルームまで幅広く使用
4-02 鉄道車両とプラスチック
4-03 駆体は鋼板から繊維強化プラスチックへ(船舶、航空機)
4-04 スポーツ施設で活躍するプラスチック
4-05 実は軽くて強い発泡スチロール(土木) 
4-06 季節に関わらず様々な食材を得るために(農業、水産業)
4-07 風雨などから素材を守る(塗料)
4-08 飛行機の構造材から付箋紙まで様々なものを結ぶ(接着剤)
4-09 自然エネルギー利用で活躍するプラスチック(風力発電、太陽光発電)
4-10 電子回路を使用した製品で活躍するプラスチック
4-11 医療用器具で幅広く使用されるプラスチック

第5章 進化するプラスチック

5-01 光とプラスチック(透明性と光応答性)
5-02 音とプラスチック(防音と発音)
5-03 包装を変えたプラスチック(食品はもう腐らない)
5-04 医療を変えたプラスチック(衛生と生体適合性)
5-05 微生物や光で分解するプラスチック(分解性材料)
5-06 プラスチックによる構造材料(強力なだけではなく)
5-07 電気と磁気とエネルギーとプラスチック
5-08 薄皮 1 枚で分ける(膜分離)
5-09 プラスチックを印刷する(3D プリンター)

第6章 プラスチックの課題と私たちの生活

6-01 プラスチックがもたらすもの
6-02 プラスチックの安全性
6-03 プラスチックと資源問題
6-04 プラスチックと環境問題
6-05 プラスチックとごみ問題
6-06 プラスチックのリサイクル
6-07 容器包装リサイクル法とは
6-08 ペットボトルのリサイクル
6-09 科学と技術でプラスチックの課題を解決することができるか 
6-10 持続可能な社会とは
6-11 心豊かで快適な暮らしを続けるために

索引 
参考文献

コラム

・目的によって作り出される複合材料
・高分子の概念を提唱したヘルマン・シュタウディンガー
・レゾール型とノボラック型のフェノール樹脂
・赤外分光法 
・超高分子量ポリエチレンとゲル紡糸法
・ポリマーアロイがもたらしたエンジニアリングプラスチック、PPE
・アクリルとは
・架橋と紙おむつ
・フッ素樹脂で加工した調理器具
・プラスチックと金属の表面の違い
・不織布マスクにもプラスチックが活用されています
・プラスチックボディの車?旧東ドイツのトラバント 
・接着剤による接着の仕組み
・太陽電池(PN 接合型太陽電池と色素増感太陽電池)
・高分子圧電材料
・プラスチックによる電線の被覆
・インテリジェント材料
・レジ袋に使われている原油の量
・洗濯バサミがバラバラに崩れる理由は?
・二酸化炭素からプラスチックの合成
・ゴミ収集車
・有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約 
・生分解性プラスチックは環境にやさしいと言えるか? 

出版社 :秀和システム; 第4版 (2022/8/31)
発売日 :2022/8/31
言語  :日本語
単行本 :318ページ
ISBN-10:4798068292
ISBN-13:978-4798068299
寸法  :14.8 x 2.3 x 21 cm

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2022年7月25日 (月)

うま味調味料の日(1908年7月25日)

 うま味調味料の主成分がL-グルタミン酸ナトリウムであることを突き止めたのは日本の化学者の池田菊苗博士です。子どもの頃から昆布だしに興味を持っていた池田博士は1907年にそれまで知られていた「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」の他にも味があると考えそれを「うま味」と名付けて研究を始めました。

 池田博士は大量の昆布を買い込み妻の貞は博士に協力し昆布を刻みました。池田博士は貞が刻んだ昆布を茹でて煮汁からL-グルタミン酸ナトリウムを単離しました。得られたL-グルタミン酸ナトリウムの量は乾燥昆布12キログラムからわずか30グラムでした。なおグルタミン酸自体は1866年にドイツのリットハウゼンが発見した物質でよく知られていました。

 池田博士は1908年4月24日に「グルタミン酸を主要成分とする調味料製造法」の特許を出願しました。そして同年7月25日に特許が登録されました。この特許取得を記念し日本うま味調味料協会は7月25日を「うま味調味料の日」と制定しました。

 池田博士が単離したうま味成分は鈴木製薬所(代表:鈴木三郎助)が製造販売することになり、1909年5月20日に「味の素」として売り出されました。鈴木製薬所は1912年に鈴木商店、1932年に 味の素本舗 株式会社鈴木商店、1943年に大日本化学工業株式会社と名称変更し、1946年に味の素株式会社となりました。

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池田菊苗博士と味の素

 昔から味覚には「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」があると考えられていました。「うま味」が本当に味覚として存在するかどうかは長らくわからなかったのですが、舌の味蕾の細胞にグルタミン酸受容体が発見されたことから味覚として認められました。グルタミン酸受容体が発見されたのは2000年で「味の素」の販売開始から90年以上も後のことでした。

 なお鰹節のイノシン酸がうま味成分であることを突き止めた小玉新太郎は池田博士の優秀な弟子の1人でした。シイタケのグアニル酸が旨味成分であることを突き止めたのはヤマサ研究所の国中明です。

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鈴木梅太郎がオリザニン(ビタミン)を報告(1912年12月13日)

マヨネーズの日(3月1日)

カルピスの日(1919年7月7日)

ヨーグルトの日(1845年5月15日)

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2022年7月18日 (月)

光化学スモッグの日(1970年7月18日)

 1970年7月18日、東京の空は白っぽく霞がかっていました。杉並区の東京立正中学校・高等学校のグランドで体育の授業を受けていた生徒43名が突然眼の痛みや喉の痛みなどの健康被害を訴えました。東京都公害研究所(現:東京都環境科学研究所)が調査したところ原因は大気中の化学物質によるものであることがわかり、太陽光に含まれる紫外線で窒素酸化物(NOx)が有毒な光化学オキシダントに変化して光化学スモッグが生じていたことがわかりました。光化学スモッグはこれ以前にも発生していましたがこの事件によって広く知られるようになったことから1970年7月18日は「光化学スモッグの日」とされています。

 光化学スモッグは5月から9月の午前10時から午後5時ぐらいにかけて日射が強い・気温が高い・風が弱いなどの気象条件が重なったときに生じます。スモッグは煙(スモーク、smoke)と霧(フォッグ、fog)を合わせた言葉で、工場や自動車の排煙の粒子が核となって霧が発生じている状態です。スモッグには排出された石炭の微粒子や二酸化硫黄など有害な化学物質を含むロンドン型スモッグと、排出された物質が紫外線で光化学反応を起こしてさらに有害物質を生成するロサンゼルス型スモッグがあります。ロンドン型スモッグでは大気中に黒いスモッグが発生し、ロサンゼルス型スモッグは白いスモッグが発生します。光化学スモッグはロサンゼルス型スモッグのことです。

光化学スモッグで白く霞がかった街
光化学スモッグで白く霞がかった街

 ロンドン型スモッグはイギリスの産業革命以降に発生するようになったスモッグですがロサンゼルス型スモッグは1940年代に米国のロサンゼルスで発生したものです。ロサンゼルスの地形は盆地であり大気が滞留しやすい土地柄です。人口増加に伴って産業が発展し自動車が増加したことで大気汚染が発生するようになりました。ロンドン型スモッグは排煙などの規制により改善されましたが、1943年9月8日に高濃度のスモッグが発生し多数の人々が眼や喉の刺激を受けるなどの健康被害に遭いました。調査の結果、工場や自動車から排出される窒素酸化物および光化学反応性の高い炭化水素が紫外線のエネルギーを受けて光化学反応を起こしその結果生じた有害な大気汚染物質が原因で発生すした光化学スモッグであることがわかりました。この大気汚染物質を光化学オキシダントといいます。オキシダントは大気中に存在する酸化力の強い物質の総称でオゾン、硝酸ペルオキシアセチル、二酸化窒素、過酸化物などがあります。光化学オキシダントはオキシダントから二酸化窒素を除いたものと規定されています。

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