迷探偵 おじさんはどこに?|志賀高原ゲレンデ迷子事件
いまから30年以上前、職場でスキー旅行をすることになった。行き先は志賀高原に決まった。週末の夕方に5台ぐらいの車に分乗して出発し夜半には目的地の旅館に到着した。温泉も快適だった。翌日は朝食後にスキーの準備をし旅館のバスで近くのゲレンデまで送ってもらった。夕方5時半頃に迎えに来てくれるとのこと。
さっそくスキーを装着しリフトに乗って山頂へ登っていく。何度か同じゲレンデで滑った後、少し遠出をしてみようということでリフトを乗り継いであちこち滑り降りた。何度滑ってもどこに行ってもとにかく終わりがない。志賀高原の広大さを改めて実感したのである。
やがて夕方になり最初のゲレンデに戻ることにした。リフトを乗り継いでもとのゲレンデの山頂にやって来た。メンバーも全員揃っていることを確認。では最後の滑りを楽しみましょうと皆ゲレンデに向かって滑り降りていった。急なコースが良いと少し遠回りする者もいたが、最後は同じところに降りてくるので問題ない。
めいめいが山頂から滑り降り始め順次ゲレンデに集結。滑り降りていくと仲間たちのいる場所がすぐわかりそこへ向かって降りていった。全員が集まっただろうと思って確認したところ1人だけいない。当時50代後半のスキーが上手なおじさん。山頂には確かにいたのである。
皆でゲレンデを眺めていたがそれらしき姿は見つけられない。特徴のある滑り方だったので降りてきたらすぐにわかるはずである。途中で転んで怪我でもしたのかと心配になるが特にパトロールや救助隊が動いている気配もない。まだ17時前で旅館のバスが迎えに来るまでには30分あるのでもう少し待つことにしたが10分たっても20分たっても降りて来ない。
皆が心配になって山頂の方からゲレンデあたりを見ている。
すると「みんな何を見ているの?」との声が。
皆が声の方に視線を向けると皆につられて山頂やゲレンデを心配そうに見つめているおじさんがいたのである。
一同びっくり。おじさんに「いつからそこに?」と聞くと「数分ぐらい前」とのこと。いったいどうなっているのか聞いたところ、山頂から降りたときに少し難しいコースに入ったら隣のゲレンデに降りてしまったとのことである。リフトに乗り直すと時間がかかるので、ちょうどいたタクシーに乗ってやって来たそう。バスが迎えにくる時間には間に合うので本人はまったく心配していなかったのである。
現在ならスマホで電話をかけて連絡することができるが、当時は携帯電話を持っている人はほとんどいないし、スキー場で携帯電話が繋がるかどうかもわからない時代です。
そう言えば朝、旅館のバスがゲレンデまて送ってくれたとき、運転手さんが志賀高原は降りるコースを間違えると全く違う場所のゲレンデに出てしまうので注意するよう教えてくれていたのです。
もうほとんどチャップリンやドリフのコントの状態でしたが、おじさんが無事でやれやれでした。
その日の宴会はおじさんの話で盛り上がったのは言うまでもありません。
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