カテゴリー「生物」の8件の記事

2021年5月14日 (金)

種痘の日(1796年5月14日)

 天然痘はウィルスが原因の感染症ですが、過去に多くの死者を出しています。天然痘を発症すると、高熱が出て、全身に化膿した発疹ができ、やがて死に至ります。運良く助かった人も、発疹の後が残ることから、不治の病として恐れられました。

 一方で天然痘は一度発症すると二度と発症しないということがわかっていました。このことから、天然痘に感染した症状の軽い患者の発疹から取り出した膿を健康な人に接種して予防するという試みが行われていました。しかし、これはあくまでも民間療法的なもので、決して安全な方法ではなく、この予防接種で天然痘に感染して死亡した人も少なくありませんでした。

 また、同じ頃、牛痘にかかると天然痘にかからないという言い伝えがありました。乳搾りなど牛の世話をしていて牛痘にかかった人は天然痘にかからないというのです。牛痘はヒトが感染しても症状が軽く、発疹の跡も残りません。

 このことを手がかりにイギリスの医師のエドワード・ジェンナーは牛痘を使って、天然痘の予防をすることができないか研究を始めました。

Photo_20201228130501
エドワード・ジェンナー

 1796年5月14日、ジェンナーは乳絞りをして牛痘にかかった女性サラ・ネルムズの手にできた発疹から取り出した膿を、ジェンナーの使用人の8歳の子どもジェームズ・フィップスに接種しました。ジェンナーはその1ヶ月半後にフィップスに天然痘を接種してみましたが、フィップスが天然痘を発症することはなかったのです。このことから5月14日が「種痘の日」とされています。

Photo_20201228130901
5月14日のジェームズ・フィップスへの予防接種の様子

 ところで、ジェンナーが自分の息子に予防接種をしたと記述されている伝記がありますが、ジェームス・フィリップスは使用人の子どもでジャンナーの子どもではありません。ジェンナーが自分の子どもに試したのは牛痘接種以前に行われた軽い天然痘(小痘瘡)の接種です。

 ジェンナーは1798年に天然痘の安全な予防方法について論文を発表したのですが、しばらくの間は認められませんでした。しかし、ジェンナーはその後も治療の実績をあげていきます。そして、1840年にはイギリス政府がジェンナーの予防接種を唯一の天然痘の予防接種とと認めました。ジェンナーは予防接種の特許を取ることができましが、ワクチンが高価となり、多くの人々が接種できなくなると考え、あえて特許を取得しませんでした。

 後にジェンナーが業績を高く評価し、ジェンナーこそが免疫学の祖であると述べたのは近代細菌学の開祖と呼ばれるルイ・パスツールです。パスツールはジェンナーを感染症のワクチンを初めて開発した人と認め、予防接種のことを「Vaccination」と名付けました。なお、Vaccaはラテン語で雌牛のことです。今ではエドワード・ジャンナーは「近代免疫学の父」と呼ばれています。

 WHO(世界保健機構)は1980年に天然痘は根絶されたと宣言しています。その後、世界中の研究機関で保管されていた天然痘ウィルスは米国とロシア(当時はソビエト)の研究機関で厳重に管理されることになりました。

 WHOは保管されているウィルスを廃棄するよう決めましたが、米国とロシアは、天然痘ウィルスが外部に持ち出された可能性があり、生物兵器として使われたときの対策や、将来のワクチンの研究開発のためにも保存しておくべきであると主張しました。

 なにしろ、天然痘ウィルスが根絶されてからは、予防接種をしたことがない人が増えていますし、過去に予防接種を受けた人も既に免疫を失っている可能性があります。

 ウィルスが生物兵器としてテロに利用された場合、大きな被害が出ることは容易に想像できます。この主張に多くの国が賛同し、天然痘ウィルスは今でも保存され続けています。

人気ブログランキングへ

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2021年1月11日 (月)

【おもしろ映像】イカの捕食のようす

 イカの口はどこにあるでしょうか。イカを料理するときによく見てみると、目と目の間にひょっとこの口のようなものがあります。これは口ではなく、漏斗と呼ばれるもので、イカはここから吸い込んだ海水を吹き出すことによって、勢いよく移動します。

 イカの口は10本の足の付け根にあります。そこには、トンビやカラスのくちばしのような鋭い歯のようなものがあります。

 イカの足は10本と言いますが、10本のうち2本はひときわ長く、これは触腕と呼ばれるます。イカはこの2本の腕を使って餌を捕らえます。 そして、残りの8本の足で、餌を包み込むように口に運びます。そして、くちばしで、餌を食いちぎり、口の中にあるヤスリのような歯舌で肉をすりつぶします。

 新江ノ島水族館公式チャンネルでイカの捕食のようすの映像が公開されていました。

Photo_20210111175201
イカの捕食のようす

イカだらけの水槽で - A lot of cuttlefishs

人気ブログランキングへ

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2020年10月 8日 (木)

世界の人口と地球の表面積|1人あたりの面積は?

 いまや世界の人口は77億人にもなりました。

 地球の表面積はどれぐらいかというと510,065,600平方キロメートルです。このうち、海洋の面積が362,822,000キロ平方メートルで、陸地の面積は147,244,000平方キロメートルです。

 地球の陸地には人が暮らせないところもありますから、本当はもっと狭い値になるはずですが、約1億5000平方キロメートルとします。これは正方形で考えると、その1辺が約1万2,250キロメートルになります。この値は地球の直径1万2,472キロメートルよりやや小さい値ですが、地球の円がちょうど入る正方形と考えても良いでしょう。

 陸地の面積を人口で割り算してみると

1人あたりの面積=1億5000平方キロメートル/77億人

 =0.0195平方キロメートル

 正方形で考えると、その1辺が約0.14キロメートルなります。140メートル四方に1人です。

 陸地全体の面積の正方形の1辺が12,250キロメートルでしたから、

12,250/0.14=87,500

で、その正方形の一辺には8,8000人しか並べないことになります。人口が多いところ、少ないところもありますが、ならすと、これぐらいの密度ということになります。

 日本は人口減少といいますが、現在の問題は人口減少そのものではなく、少子化といわれているように、各年齢層の人口のバランスが崩れていることです。人口が減りすぎるのはまずいでしょうが、未来の子孫にとっては人口が今より減るのは決して悪いことではないように思います

人気ブログランキングへ

| | | コメント (0)

2020年5月 8日 (金)

ウイルスの存在理由⑤ーまとめ

 ウイルスの存在理由について、起源ワクチン遺伝子組み換え技術ミクロなモノ造りについて考えてみました。

 そもそも、ウイルスは人類が誕生するずっと前から地球に存在していました。最初の猿人が現れたのがおよそ700万年前、現在の人類の祖先が現れたのはおよそ20年前です。それに対して、ウイルスが生まれたのはおよそ30億年前と考えられています。ウイルスが存在したから生物の進化もあったのです。ウイルスが存在していなければ、人類も誕生していなかったかもしれません。

 また、ここで紹介した最新の技術を使うことによって、人類はウイルスをより有益なもととして扱うことができるようなるでしょう。

 そのように考えると、ウイルスの存在理由は「ある」と結論づけることができるでしょう。しかしながら、ウイルスの存在理由というのは人間(筆者)の勝手な判断基準で、考えること自体がおこがましいことかもしれません。『善玉ウイルス』『悪玉ウイルス』『善悪両方の働きをするウイルス』というのも人間にとっての判断でしょう。

 遺伝子組み換え技術を使えば、迅速に新しいウイルスを作り出すことができます。しかし、この技術が悪用されると、生物兵器などが簡単に作られてしまうことにもなり兼ねません。さまざまな技術を使いこなし、ウイルスをどう利用するのかは人間側の問題だということを忘れてはいけないでしょう。

 下記は中古本ですが、ウイルスと地球の声明について論じており、とても面白いです。ただし、現在はamazonでは中古本も入手不可能のようです。

 

同じ著者の下記の本は電子書籍版は入手できます。

人気ブログランキングへ

 

| | | コメント (0)

2020年5月 7日 (木)

ウイルスの存在理由④ーウイルスとモノづくり

 最近になってもの作りの技術で注目を受けているのがナノテクノロジーです。ナノテクノロジーとは、一口に言えば、極めて微細な加工をしたり、極めて小さなものを作ったりする技術のことです。原子や分子を操作・制御したり、原子や分子に近いサイズのスケールで物質の構造や配列を制御したりすることによって、新しい機能、優れた特性を生み出す技術のことです。ナノテクノロジーの「ナノ(n)」は私たちが聞き慣れているセンチ(c)やミリ(m)と同じく、単位の前につける接頭辞です。ナノは10億分の1を意味し、長さの単位メートルと使うとナノメートル(nm)ということになります。1ナノメートルは10億分の1メートル、すなわち100万分の1ミリメートルです。

 ウィルスは光学顕微鏡で観察できないことからわかるように、その大きさは数十ナノメートルから数百ナノメートルの大きさです。この小さなサイズで、特定の細胞に寄生して、自分自身を複製したり、細胞を破壊したりします。こうしたウィルスの性質を利用して、現在、ミクロな世界で、ものを加工したり、組み立てたりするための工具としてウィルスを利用する研究が進んでいます。

 例えば、米国の研究グループは遺伝子操作によって電気を通す金属を集める性質を与えたウイルスを並べることによって、直径6ナノメートルの極細の電線を作ることに成功しています。この電線を使うことによって、従来よりも小型で大容量の電池を作ることに成功しました。これらの電池は現在のところ研究段階ですが、さらに研究を進めると、従来の電池よりも高性能な電池が作れるようになると期待されています。

モノづくりのミクロな現場で活躍するウィルスが省エネルギー対策や環境問題にひと役買うときが来るかもしれません。

人気ブログランキングへ

 

| | | コメント (0)

2020年5月 6日 (水)

ウイルスの存在理由③ーウイルスと遺伝子組換え技術

 新型インフルエンザが出現したように、ウィルスは自然の中で突然変異を起こす場合があります。現在においては、遺伝子組換え技術を使って人工的にウィルスの突然変異を起こすことが可能になっています。

 1999年に日本の研究グループが遺伝子組換え技術を使って、世界で初めて人工的にインフルエンザウィルスを作り出すことに成功しました。わざわざインフルエンザウィルスを作ることに何の意味があるのだろうと思うかもしれませんが、インフルエンザの予防ワクチンを作るのに役に立ち、インフルエンザそののもの研究が進みます。

 現在では遺伝子組み替え技術を使ったガンのウィルス治療などの研究も進んでいます。もともとウィルスはある細胞を狙って寄生しますが、遺伝子組み替え技術によってガン細胞のみに寄生するウィルスを作り出すことができます。このウィルスに抗がん剤の効果を高める性質をもたせたり、あるいはガン細胞を直接破壊する性質を持たせたりすることによって、ガンを治療をする方法が研究されています。

 また、ウィルスは食品添加物として利用することができるようになっています。ウィルスには細菌に寄生するバクテリオファージと呼ばれるウィルスがあります。遺伝子組み替え技術を使うと特定の細菌を殺すウィルスを作り出すことができます。食品が腐るというのは、細菌によって食品が腐敗することですから、このウィルスを使うと、食品を長持ちさせることができます。つまり、ウィルスが食品の防腐剤となるのです。このウィルスは細菌に寄生するウイルスなため、動植物の細胞では増殖しません。人に対する安全性も問題ないと考えられており、米国では認可されています。

人気ブログランキングへ

 

 

| | | コメント (0)

2020年5月 5日 (火)

ウイルスの存在理由②ーウイルスとワクチン

 ウイルスは人間に悪影響を及ぼすものという認識をもっている人が多いと思います。ウイルスはラテン語で毒という意味で、病気を引き起こすものという意味で名付けられました。事実、これまでに多くのウイルスが人間の病気を引き起こしてきました。

 例えば、天然痘はウイルスが原因の感染症ですが、過去に多くの死者を出しています。しかし、1797年にイギリスの医学者エドワード・ジェンナーによって天然痘ワクチンが開発されると、天然痘患者の数が激減していきました。

 WHO(世界保健機構)は1980年に天然痘は根絶されたと宣言しています。その後、世界中の研究機関で保管されていた天然痘ウイルスは米国とロシア(当時はソビエト)の研究機関で厳重に管理されることになりました。

 WHOは保管されているウイルスを廃棄するよう決めましたが、米国とロシアは、天然痘ウイルスが外部に持ち出された可能性があり、生物兵器として使われたときの対策や、将来のワクチンの研究開発のためにも保存しておくべきであると主張しました。

 なにしろ、天然痘ウイルスが根絶されてからは、予防接種をしたことがない人が増えていますし、過去に予防接種を受けた人もすでに免疫を失っている可能性があります。ウイルスが生物兵器としてテロに利用された場合、大きな被害が出ることは容易に想像できます。

 この主張に多くの国が賛同し、天然痘ウイルスは今でも保存され続けています。今のところ、天然痘ウイルスの存在理由はあるとされているわけです。

 こうした話は天然痘に限った話ではありませんが、生物兵器の話を除いても、ウイルスを根絶させてしまうと、そのウイルスに関する研究や新しい予防ワクチンの研究ができなくなってしまいます。

人気ブログランキングへ

 

 

| | | コメント (0)

2020年5月 4日 (月)

ウイルスの存在理由①ーウイルスの起源

 ウィルスは動植物や細菌類などの生きた細胞に寄生して増殖する病原体です。ウィルスは自分自身では増殖することができません。また、細胞構造を持たず、細胞外では結晶化するものもあり、生物学的には非生物と定義されています。しかし、ウィルスは遺伝子を有しており、生物の細胞を利用しなければならないという条件つきではあるものの、自分自身と同じもの複製して増殖することができるという意味においては、生物の特徴をもっています。このことから、ウィルスは、非生物ではあるけれども、生物とまったく無関係なものとは言い切れないという側面があります。

 ウィルスが発見された当時、ウィルスは細菌よりも下等な生物ではないかと考えらていました。その後、ウィルスの解明が進むに従って、ウィルスは地球上で生物が誕生する過程で生じたものであるという説や、細菌が進化したものであるという説がありました。

 現在においてはウィルスはトランスポゾンと呼ばれる細胞内で移動できる遺伝子、いわゆる「動く遺伝子」が変化して、細胞の中から飛び出し、他の生物の細胞に移動できるようになったものと考えられています。

 そもそも、自然にあるものの存在理由や存在意義というのは、私たち人間が勝手に「ある」とか「ない」とか決めつけているものです。もちろん、勝手に決めるといっても、でたらめではなく、人間から見たある一定の基準はあるでしょう。おそらく多くの場合において、私たちは人間にとって有害なものや無益なものは存在理由がないと考えがちでしょう。

 しかし、自然に存在するものに存在理由や存在意義を求めるのは筋違いのような気がします。ですから、自然界におけるウィルスの存在理由について、人間との利害関係を抜きにした根源的な答えを出すことはできません。そこで、ここではあえて人間とウィルスとの関わり合いを考えたうえで、ウィルスの存在理由について考えるみることにします(続きは後日アップします)。

人気ブログランキングへ

 

 

| | | コメント (0)