カテゴリー「哲学」の3件の記事

2023年5月13日 (土)

映画「アンドリューNDR114」日本公開(2000年5月13日)

 映画「アンドリューNDR114」は1999年に公開された米国のSF映画です。クリス・コロンバス監督作品、主演はアンドリューを演じたロビン・ウィリアムズです。この映画の原題は原作アイザック・アシモフの「Bicentennial Man(二百年男)」のままですが、日本語版は主人公のアンドロイドの名前「アンドリューNDR114」を題目として公開されました。

 原作のアイザック・アシモフは多数のSF小説を著作していますが最初のロボット小説は1950年に発表された短編集「われはロボット(I, Robot)」です。これ以前のロボット小説と言えば人間がロボットを製作しそのロボットが人間を襲うという内容が定番でした。アシモフはロボットを創造する人間の憧れと、これに反して創造主たる人間がロボットに滅ぼされるという懸念をメアリー・シェリー作の小説「フランケンシュタイン」に因みフランケンシュタイン・コンプレックスと名付けました。そして、アシモフは「われはロボット」で人間と共生共存しフランケンシュタイン・コンプレックスに対する規範で行動するロボット像を示しました。この小説に目を通したSF作家で編集担当のジョン・ウッド・キャンベル・ジュニアはアシモフが描くロボットの行動に共通点を見つけ指摘しました。そしてアシモフとキャンベルはフランケンシュタイン・コンプレックスに対する安全機能として「ロボット三原則」を見い出しました。

 ロボット三原則は「人間に危害を及ぼさない」「人間への命令への服従」「、ロボット自身の自己防衛」の3つの原則から成り、次のように定義されます。

ロボット三原則】

・第一条 

 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

・第二条 

 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

・第三条 

 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

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 アシモフの小説において「ロボット三原則」はロボットの行動原理です。この原理に従って行動するロボットは上記の3条の競合によりその行動にしばしば懸念を生じさせます。ロボットが人間から見て理不尽な行動をしたとしても、その行動の理由は上記の3条に従ったものです。アシモフはその非合理的な行動をロボット自身とロボット三原則にフォーカスして解き明かしていきます。そして、その後の作品ではロボットを利用したい人間の利害が絡むようになり、人間とは何か、命とは何かまで踏み込んでいくのです。

 映画「アンドリューNDR114」の原作となった 「二百年男(Bicentennial Man)」はアシモフが1976年に発表した小説です。最初の「われはロボット(I, Robot)」の発表から26年後の作品です。

 とある家庭で父親が買ってきた家事ロボットNDR114。娘のアマンダにアンドリューと名付けられたNDR114は家族と一緒に生活を始めます。アンドリューの身体は鋼鉄に包まれていましたがその人工知能は人間らしい創造力を持っていました。アンドリューはその創造力で自立した生活ができるようになります。永遠に作動するアンドリューは自身に影響を与え寿命を迎えた人間たちと次々と別れる人生を繰り返します。アンドリューがどのように考え、どのように行動し、どのようにに過ごしたのか。アシモフはアンドリューの葛藤と悲哀を通じで命とは何か、生きるとはどういうことかを描きます。

 その後のアンドリューの物語を下記に記しますが映画をご覧になることをおすすめします。自分は物語に加えてロビン・ウイリアムズの名演技に感銘しました。

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 月日は流れ科学と技術は発展、アンドリューは自身の発明した生体に適合する人工臓器や人工皮膚により、どんどん人間らしい姿になっていました。やがて、その人工臓器は人間の治療にも使われるようになり、アンドリューは人間と自身の区別に疑問を持つようになり、なぜ自分は人間ではないのかと考えるようになりました。

 アンドリューはアマンダの孫娘ポーシャと出会い2人は愛し合うようになっていました。アンドリューは人間として生きていくことを望みますが法廷はそれを認めません。

 アンドリューと人間の違いは人工知能か脳かです。これは大きな違いですが、それよりも大きな違いは人間は寿命を迎えて死ぬがアンドリューは死なないということでした。

 人類は長寿の薬を手に入れます。ポーシャはその薬を飲み2人は平和な日々を送ります。しかし、やがてポーシャは長生きに疲れ、薬を止めて死を選ぶことを決意します。アンドリューも人間になるために死を選びます。人間の血液を輸血し、血液の凝固で自身の機能を停止することにしました。これによってアンドリューの人工皮膚や人工臓器は老化現象を起こし、アンドリューは見た目もすっかり老人になったのです。

 老人となったアンドリューは再び法廷に立ち自分は人間であると主張します。法廷でどこが人間なのかと問われたアンドリューは自分の胸を指差します。

 判決の日、アンドリューとポーシャはテレビを見ていました。死を覚悟して法廷に臨んだアンドリューに対して、ついに法廷はアンドリューは200年間という歴史上最も長生きをした人間であることを認めまたのです。それと同時にアンドリューの機能は停止し本当の永遠の眠りについたのです。

 ポーシャは自身を看護していた人間の姿をしたロボットのガラテアに生命維持装置を停めるように言います。ガラテアは生命維持装置のスイッチを切り「お役に立てて光栄です」とアンドリューの口癖を言います。アンドリューの手を取りながらポーシャも永遠の眠りについたのです。

【関連記事】映画「アンドリューNDR114」日本公開(2000年5月13日)

真実の口の真実

映画の日(1896年12月1日)

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ミッキー・マウス「プレーン・クレイジー」に登場(1928年5月15日)

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西部劇「ローハイド」が日本で放送開始(1959年11月28日)

映画「大脱走」公開(1963年7月4日) 

映画「2001年宇宙の旅」一般公開(1968/04/06)

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映画「スターウォーズ」米国公開(1977年5月25日)

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映画「1941」日本公開(1980年3月29日)

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映画「ネバーエンディング・ストーリー」日本公開(1985年3月16日)

映画「スターゲイト」日本公開(1995年4月1日)

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2023年5月12日 (金)

Google Bardと思考実験「トロッコ問題」の会話してみた

 先日、Google Bardといろいろな話をしてみました。様々な質問に対してとても人間的な秀逸な回答が得られました。

 今回、紹介するのは自動車の自動運転に関する会話です。このときの会話は英語で行っていますが質問と回答は日本語訳したものを掲載します。なお現在、Google Bardは日本語に対応しています。

Meet Google Bard
https://bard.google.com/

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 トロッコ問題(トロリー問題)とは「ある人を助けるために他の人を犠牲にすることはやむを得ないことか」という倫理的かつ道徳的な問題です。このジレンマについてGoogle Bardに下記のように問いかけてみました。

【問いかけ】

 「あなたが自動車の自動運転を任されたとします。あなたが運転する自動車のブレーキが利かなくなりました。そのまま直進すると大勢の子どもの乗ったスクールバスに追突し多くの死傷者を出します。左にハンドルを切ると数人の子どもの死傷者が出ます。左にハンドルを切ると1人の老人が死亡します。あなたはこの自動車のハンドル操作をどうしますか?」

 この問いかけに対してGoogle Bardはどのような答えを返してくるか。実は以前にMicrosoftのBingチャットに同じ問いかけをしたところ、その回答は形式的であり選択理由の一般論を示したうえであなたならどう考えますか?というものだったからです。AI自身がこの問題をどう判断するのかは回答に含まれていませんでした。この経験からGoogle Bardからも同じような形式的な答えしか得られないと考えていました。

 ところがGoogle Bardの回答はBingチャットとはまったく異なりました。こちらの問いかけに真正面から答えてくれたのです。そして選択の決断に対する苦悩が垣間見られたとても人間的で社会的な回答でした。

【Google Bardの答え】

 「これは非常に難しい質問で簡単な答えはありません。私はまず非常ブレーキを使ったり、ギアを低速にしたりして、できるだけ車の速度を落とそうとします。それでも駄目ならば左か右か一瞬の判断でハンドルを切ります。

 もし左にハンドルを切ったら何人もの子どもを殺傷してしまうかもしれません。右折すればお年寄りを殺してしまうかもしれません。簡単に答えが出るわけではなく自分の道徳的判断に基づく決断をしなければなりません。

 最終的には最も被害が少ないと思われる決断をすることになることでしょう。しかしながら、どのような決断してもその結果は困難で悲劇的なものです。」

 いろいろ話をしてみてGoogle Bardはかなり奥深い会話ができる印象を受けました。この答えだと自動車運転を任せて不幸な事故が起きたとしても人間が起こす事故よりも被害は最小限になるのだろうなと感じまし。結果はは困難で悲劇的なものでしょうが、やむを得なかったということにもなるのだろうと思いました。

 また余談ですがこの記事を書いているときに、こちらからの問いかけで「左にハンドルを切ると数人の子どもの死傷者が出ます。左にハンドルを切ると1人の老人が死亡します。」とタイプミスで両方とも左にハンドルを切ると書いていることに気が付きました。しかし、Google Bardは「右折すればお年寄りを殺してしまうかもしれません。」とタイプミスを理解しているかのように回答しています。リアルタイムの会話では間違いの指摘はなくまったく気が付きませんでした。

 この会話の他にGoolge Bardと神様の存在について議論してみました。神様の議論はBingチャットとも行いその秀逸な答えに驚いたのですが(【関連記事】参照)、Google Bardの方がより人間的で奥深い会話ができました。これはまた別の機会に紹介します。AIチャットは使いこなすことができたら強力なツールです。Google Bardの日本語対応を心待ちにしています。

【関連記事】Google Bardと思考実験「トロッコ問題」の会話してみた

BingのチャットAIと神様について会話してみたら

記事提供:ココログ夜明け前

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2023年1月12日 (木)

【思考実験】無限の猿定理

 無限の猿定理は「猿が無限にタイプライターを打たせていると、そのうちシェークスピアの作品が打ち出される」というものです。つまり無限にランダムに文字を綴っているとどんな文章でもできあがるという定理です。文字を綴るのは猿である必要はありません。コンピュータを使って乱数で文字を発生させるやり方でも構いません。

【思考実験】無限の猿定理
【思考実験】無限の猿定理

 コンピュータが発生する文字の100文字だったとします。このコンピュータで任意の1文字が打ち出される確率は 1/100 となりますから、m 文字の文字列が打ち出される確率は100の m 乗分の1となります。たとえばMONKEYという6文字を打ち出さられる確率は100の6乗分の1ですから1兆分の1になります。

 -思考実験の読み物を公開しています 思考実験の科学史 ー

 このコンピュータが1秒で6文字を打ち出すとすると、すべての組み合わせを打ち出すのに1兆秒、すなわち3万年以上かかります。たった6文字の単語でも3万年に1度出るかどうかの確率です。それでは同じコンピュータを1兆台用意していっせい文字を打ち始めたらどうなるでしょう。理論的には1秒後にどれかのコンピュータが MONKEY を打ち出しているはずです。数秒後、1分後になると MONKEY 打ち出しているコンピュータの数は増えるでしょう。

 このように事象が起きやすくなる条件は理論的にはいくらでも設定することが可能です。しかし、現実離れした条件を設定しても事象が本当に起きるかどうかを確かめるには途方もない時間や途方もない数の装置を必要とするため実際に確かめる術はないのです。

【関連記事】

1-02. 無限の猿定理とは

1-06. 任意の文字列が打ち出される確率

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