江戸時代の色彩文化と色の三原色
現代において「色の三原色」はシアン(青緑)・マゼンタ(赤紫)・イエロー(黄色)の3色(CMY)のことです。「光の三原色」はレッド(赤)・グリーン(緑)・ブルー(青)の3色(RGB)のことです。
【参考】「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7)
庶民文化が花開いた江戸時代には衣服、工芸品、浮世絵、錦絵などに多彩な色が使われました。しかしながら江戸時代には化学染料や顔料が存在していませんでしたから、身近な自然由来の素材で染料や色材を作り出していました。当時は系統的な「光の三原色」や「色の三原色」を背景とした色彩学や染色技術はありませんでしたが、「色の三原色」と言える染料として広く用いられたのは藍(あい)・紅(べに)・苅安(かりやす)です。この3色の染料に加えて高貴な色として使われたのが江戸紫(えどむらさき)です。黒(くろ)は染料としては多様でしたが絵の具としては墨(すみ)が使われました。江戸時代は衣服の色は身分や奢侈禁止令(贅沢の禁止令)によって制限されていました。そのため人々は様々な中間色を生み出しました。
藍はタデ科の植物である蓼藍(たであい)の葉から作られました。藍染めは日本の代表的な染色技術で深くて渋みのある青色を生み出します。染め重ねをすることにより縹(はなだ)・紺(こん)・濃紺(のうこん)を作ることができます。奢侈禁止令で藍は許されていたこともあり、庶民の衣服に広く用いられました。
紅はキク科の植物の紅花(べにばな)から作られました。紅花から得られる赤色の色素は高値で取引されました。とりわけ濃い紅色は女性の着物や口紅に使われました。鮮やかな紅色は贅沢品とされ奢侈禁止令の対象とされましたが、薄い桃色や桜色などの中間色は広く使われました。
苅安はイネ科の植物である刈安(かりやす)から作られました。刈安は黄色を染めるための染料です。刈安は藍と組み合わせると緑色となり、紅と組み合わせると橙色となるなど中間色を作る上で重要な基本の色でした。
江戸紫は紫草(ムラサキ)の紫根から作られました。青みが強い紫色で江戸の町人文化を象徴する色でした。同じ原料で作られる京都の京紫(きょうむらさき )は赤みを帯びた紫色です。江戸紫は歌舞伎役者の衣装に多用されています。
墨は菜種油を燃やして得られる煤から作られました。水墨画、浮世絵、錦絵の線描に広く使用されました。水で薄めて濃淡を容易に操れることから影や夜景の描画にも使われました。染料としての黒は墨染めに加えて藍や刈安などに鉄分を媒染剤として加えた鉄媒染なども使われました。
上記の基本の三色に加えて茶(ちゃ)や鼠(ねずみ)も広く使われました。奢侈禁止令が厳しくなると人々は鮮やかな色を使用することができなくなりました。そこで基本の色を使って様々な中間色が生み出されました。
江戸時代の「色の三原色」は現代の定義とは異なりますが、当時の多様な色彩を支えた基本の色は「藍」「紅」「苅安」の3色でした。浮世絵や錦絵などには鉱物顔料が使われる場合もありました。浮世絵や錦絵は限られた色材を使いつつも高度な技術で豊かな色彩表現しました。
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