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豊臣秀吉の死後に豊臣政権内部政争が発端となって慶長5年(1600年)9月15日に「関ヶ原の戦い」が起こりました。徳川家康率いる東軍が石田三成率いる西軍に勝利すると、慶長8年(1603年)2月12日、家康は征夷大将軍に就任すると江戸幕府を開き徳川家による政権作りを開始しました。
関ヶ原合戦図屏風(六曲一隻)(関ケ原町歴史民俗資料館)
家康は徳川政権を長期的に安定したものとするため慶長10年(1605年)には将軍職を辞職し嫡男の徳川秀忠に家督を譲りました。征夷大将軍と執政は徳川家が世襲することを示したのです。このような状況の中で家康は別格的存在だった豊臣家が徳川政権の障壁になると考えました。やがて豊臣家を徳川家に服属させることを考えるようになったと伝えられています。
徳川家康と豊臣秀頼
同年5月に家康は高台院を通じて秀頼生母の淀殿に秀頼が徳川家に臣下の礼を取るように要請しました。これに対して淀殿は会見を拒否しましたが家康は平和裏に対応しました。慶長16年(1611年)3月、家康は後水尾天皇即位で上洛すると秀頼と二条城での会見を実現しました。
その後、豊臣家の親戚筋や豊臣家恩顧の大名が亡くなると徳川家を疎遠にしていた豊臣家は孤立するようになりました。豊臣家は徳川家の幕藩体制の外にあり幕府に縛られる必要はないと考えた淀殿をはじめとする豊臣方は幕府に無断で朝廷から官位を賜る要請をしたり、大阪城に兵糧を運び込んだり、浪人を雇ったりしました。このような豊臣家の動きに対して家康は穏便な対応を続けましたが同時に戦の準備を進め大阪城を攻撃するための大筒や武器を確保し始めました。豊臣家が徳川家に服属しない限り両家の関係の解決の見通しは立ちませんでした。
慶長15年(1610年)8月22日より秀吉の方広寺大仏の再建が始まりました。この再建工事は徳川家が主導し豊臣家が費用を負担することになっていました。大仏殿が完成したのは慶長17年(1612年)と伝えられています。
方広寺大仏殿(東山名所図会 京都府立京都学歴彩館 デジタルアーカイブ)
方広寺は豊臣家の建物で朝儀により創立された寺院ではないため正式な寺院とするための手続きが進められました。家康は方広寺再建落慶供養に出席するため上洛するつもりでした。秀頼の出席も許されていましたから両名が揃う可能性がありました。
慶長19年(1614年)に梵鐘が完成すると片桐且元は南禅寺の文英清韓に鐘銘文を書かせました。その鐘銘文の中にあった言葉が「国家安康」「君臣豊楽」の言葉でした。この鐘銘文に異議を唱えたのが家康の側近の南光坊天海でした。さらに徳川家が派遣した大工頭の中井正清の名が棟札に記されていないことに家康は不満を持ちました。同年7月26日、家康は鐘銘文が不快という理由から大仏殿供養の延期を決めました。
方広寺鐘銘 「国家安康」「君臣豊楽」
同年8月、家康は林羅山などに梵鐘の銘文を解読させました。羅山は「国家安康」が家康の名を「家」と「康」に分断し家康を呪詛しており、一方の「君臣豊楽」には豊臣家を君主として楽しむという意味が隠されていると指摘しました。作者の清韓は家康に対する祝意と諱をかくし題として織り込んだものであり家康を呪詛する意図はないと弁明しました。いずれにしろ大仏殿供養は延期され方広寺鐘銘事件に発展しました。
豊臣家は鐘銘文を弁明をさせるため片桐且元を駿府に派遣しましたが家康との会見は実現しませんでした。その後、豊臣家は大野治長の母の大蔵卿局を駿府へ派遣し家康と面会しています。同年9月6日、家康は以心崇伝と本多正純を通じて大蔵卿局と且元に対し豊臣方の徳川家に対しての不信に問題があり両家の融和を示す方策を講じ江戸に弁明に赴くよう要求しました。
大坂へ戻った且元は次の3案のうちひとつを行うよう進言しました。
・秀頼を江戸に参勤
・淀殿を人質として江戸に置く
・秀頼が国替えに応じ大坂城退去
この3案はどれも豊臣家にとって受け入れがたいものでした。且元は豊臣家と徳川家の両家から知行を得ていることもあり豊臣家重臣から家康との内通を疑われるようになりました。同年9月23日、織田信雄から且元暗殺計画を聞いた且元は屋敷で防備を固めました。秀頼は問題解決のため且元に武装解除を命じましたが且元は応じませんでした。その結果、同年9月27日に秀頼は且元に寺で隠居するよう命じました。
同年10月1日、且元は高野山に入るとして300程の雑兵を率いて大阪城を出ましたが、且元が向かったのは高野山ではなく茨木城でした。同日、家康のもとに且元暗殺計画の報が届き家康はこれに激怒し大阪に出兵を命じました。豊臣家は且元の罷免は家康に敵対するものではないと弁明しましたが家康は受け入れませんでした。こうして徳川家と豊臣家の戦は避けることができなくなり「大坂の陣」が開戦することになったのです。
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