黒澤明監督「椿三十郎」公開(1962年1月1日)
映画「椿三十郎」は昭和37年(1962年)1月1日に公開された黒澤明監督、三船敏郎主演の日本の時代劇映画です。
この映画の脚本は山本周五郎原作の落ちぶれた浪人が藩の騒動を手際よく片づけていく様子を描いた小説「日日平安」をもとに黒澤監督が書いたものです。黒澤監督はこの脚本を堀川弘通助監督の監督作品「日日平安」として原作に忠実に書いたもで自身が映画化するつもりはありませんでした。殺陣、いわゆるチャンバラのシーンがなかったため東宝が制作に難色を示しお蔵入りとなりました。
昭和36年(1961年)に映画「用心棒」が大ヒットすると東宝は黒澤監督に続編の制作を以来しました。黒澤監督は「日日平安」の主人公の落ちぶれた浪人を「用心棒」の主人公の桑畑三十郎のような腕のたつ浪人に変更し脚本を大幅に書き換え「椿三十郎」としてまとめあげました。
藩内の汚職を解決しようとする9人の若者。若者たちは経験も乏しく知恵もありません。彼らだけで汚職の役人たちと戦っても闇に葬られるのがせいぜいです。そこに突如現れた浪人の椿三十郎が若者たちの助っ人となり、若者たちに知恵と力を貸し、汚職を暴き、問題を解決していきます。そして浪人はすべてを解決した後、藩にとどまるようなことはせずに「あばよ」と若者たちのもとを去っていきます。まるで風が吹いたかのように。
社会や組織が閉塞すると様々な問題が起こるのは世の常です。政治の汚職、民間企業の偽造など、たくさんの偽りが吹き出します。このような状況から脱するためには、たくさんの問題を片付けなくてはいけません。つまり、雨雲を吹き飛ばし、晴天を広げる風が必要です。しかし、そんな風など吹いてくれるのか。吹くとするならば、その風はどこからやってきて、どのように吹くのか。そんなこともわからない先行き不透明な状況です。 このような時によく出てくる言葉は「時代はリーダーを求めている」です。でも、今の社会を考えると時代が求めているのはリーダーではないのかもしれません。
たとえば政治や官の問題を解決するためには政治力と信念をもった政治家の存在が必要です。ところが、今の政治家たちは周りで見ているときは強気の発言をしていますが、いざ当事者になると、いきなりトーンダウンしてしまいます。それでは風にはなり得ません。これは民間企業でも同じでしょう。組織が閉塞し上層部に「これは駄目です」と言えない雰囲気が広がると多くの問題が放置されます。俺に問題を報告するな、判断させるなと平気で部下に言うサラリーマン役員や部長が増えています。現場が気がついたのに抱えている問題は放置され慢性化しいつの間にか後戻りできなくなります。やがて現場で不満が募り内部告発などで事態が明るみに出て、取り返しのつかない状態になってしまいます。そうなったらもう遅いのです。
いかに優秀なリーダーといえども、組織に属している以上は一定の枠組みの中でしか動くことができません。ですから、しがらみのない椿三十郎のようなヒーローを閉塞した組織の中で探しても実際にはほとんど見つからないということになります。たとえ実際にいてもそのような人物に問題の解決を任せるというようなリーダーがいる組織は希です。能力不足なのに立場だけのプライドの高いリーダーの組織は優秀な人材を見逃しすため時間の経過とともに組織崩壊していきます。
組織が本当に閉塞し存続のピンチを迎えると平和な世界でしか仕事をしたことがない連中は上層部は次世代や若者の未来など顧みずあっさりと逃げていくのです。そんな時に出てくるのが時代が求めるヒーローです。しかし、苦労して問題解決しても平和になるとまた逃げたりおとなしくしていた者たちか台頭してくるわけです。様々な歴史を顧みるとピンチを救ったヒーローの多くが潰されるか、命を落としています。椿三十郎のように「あばよ」と去ることはなかなかできないのです。
しかし、どんな人間の心の中でもヒーローはいます。一人一人の持っていもっているヒーローが結集し大きな風にならないだろうか。その風が本当に優秀なリーダーを押し上げ雨雲を吹き飛ばすのだと思います。優秀なリーダーを求めるには優秀なフォロワーが必要でその中からまた新しリーダーが出てくるのでしょう。そのためには既存の組織リーダーの能力を見極めることができる評価の仕組みが必要です。
【映画】
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