昭和まで生き抜いたラスト大名「林忠崇」の命日（1941年1月22日）

ココログ「夜明け前」公式サイト

　林忠崇は嘉永元年7月28日（1848年8月26日）に上総国請西藩主の林忠旭の五男として生まれした。林家は松平親氏の代から松平氏（徳川氏）に仕えた三河譜代の家臣の家柄でした。忠旭が隠居したときには忠崇は幼少だったため家督は叔父の林忠交が継ぎ、慶応3年（1867年）に忠交が死去すると忠崇が家督を継ぎました。文武両道の忠崇は徳川家への忠義に厚く将来は幕府の老中になる人材と目されていました。

林昌之助忠崇（1868年）

　慶応4年（1868年）に戊辰戦争が起こると請西藩では新政府軍と旧幕府軍を支持する勢力で2分しますが、小さな藩ゆえに戦局に影響を及ぼすことはありませんでした。同年4月になると旧幕府軍の遊撃隊と撤兵隊が敗走し助力を求めて忠崇のもとにやってきました。忠崇は藩と領民に悪影響が及ばぬように脱藩し行動をともにすると申し出た藩士らと遊撃隊に参加しました。新政府軍は藩主自らが反逆したことを重く見て林家を改易処分にしました。忠崇は改易処分となった唯一の大名となりました。

　忠崇らの部隊は旧幕府軍海軍の船で相模湾を渡り箱根や伊豆で新政府軍と戦いました。その後は遊撃隊と北に向かい転戦しましたが奥羽越列藩同盟軍が敗北、仙台藩が新政府軍に降伏すると、忠崇は榎本武揚と合流し箱館に向かうことにしましたが、徳川家の存続が許されたことを知ると自身の徳川家への忠誠と戦の大義名分は立ったと考え新政府軍に降伏しました。忠崇は林家の家督を継いだ甥の林忠弘預かりとなりました。

　忠弘は明治2年（1869年）に300石の士族となりましたが、秩禄処分によって収入がなくなり困窮しました。忠崇は明治5年（1872年）1月に赦免されますがた旧領で農民として働きました。明治6年（1873年）12月に下級役人として東京府で働きますが、明治8年（1875年）に東京府権知事と強引な仕事の進め方に反発して辞職しました。その後は函館に渡り北海道産物の販売会社で番頭を務めました。この会社は数年後に倒産したため、神奈川県座間の寺院水上山龍源寺に寓居しました。忠崇が元大名であったことは住職以外は知らず寺男として働きました。明治13年（1880年）には大阪府で書記として働きました。

　林家は改易のため華族になることもできずにいましたが、明治26年（1893年）に西郷隆盛が朝敵を解除されると旧藩士の働きによって忠弘が男爵となりました。このとき忠崇も無爵華族となり従五位に叙されました。明治29年（1896年）まで宮内省東宮職庶務課に勤め、明治32年（1899年）から日光東照宮の神職となりましたが、明治35年（1902年）に辞職して帰郷しました。

　昭和12年（1937年）に旧広島藩主の浅野長勲が死去すると、忠崇は最後の大名となりました。晩年は「最後の大名」として注目され生活に困ることはなくなりました。太平洋戦争目前の昭和16年（1941年）1月22日に享年94（満92歳）で他界しました。亡くなる前に辞世の句を求められましたが、明治元年に死ぬつもりで辞世を残したと拒否しました。そのときの辞世の句は「真心の　あるかなきかはほふり出す　腹の血しおの色にこそ知れ」でした。再び辞世を求められると「琴となり 下駄となるのも 桐の運」と詠みました。

ココログ夜明け前｜Googleニュース

にほんブログ村

人気ブログランキングへ

Amazonアソシエイトとしてブログ「夜明け前」は適格販売により収入を得ています。

プライバシーポリシー