世阿弥「初心忘るべからず」の真意
いよいよ今年も本日で終わりです。本ブログ「夜明け前」をご覧頂きありがとうございます。年の最後の日の記事は世阿弥が唱えた芸の奥義「初心忘るべからず」の話で締め括りたいと思います。
「初心忘るべからず」は室町時代初期の大和猿楽結崎座の猿楽師の世阿弥が唱えた言葉です。父の観阿弥と猿楽を成就し、観世流の能として受け継がれています。世阿弥は多くの書を残していますが「初心忘るべからず」は世阿弥が芸術論を集大成した能芸論書「花鏡」の奥段に芸の奥義として記した言葉です。
「初心忘るべからず」は最初の気持ちを忘れないと理解している人が多いかもしれませんが、本来の意味とは異なります。世阿弥が「花鏡」に残したのは「是非初心不可忘。時々初心不可忘。老後初心不可忘」で、これを現代語に訳すと「是非の初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず」となります。
初心者の初心を忘れるなという意味ですが、これは何かを始めたときの初心を忘れるなという意味だけではありません。未熟だった頃に芸を学んだ初心を忘れることなく、そして年齢を重ねながら芸に挑み続けるということはその時々においてはそれなりの未熟さや拙さがあるはずだからその時点の初心がある、また老齢になったからと言って完成するものではなくその時々において常に未熟であり初心があるということです。その初心を忘るべからずというのが世阿弥の言う芸の奥義です。
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