ハインケルHe178が世界初のジェット飛行成功(1939年8月27日)
世界で初めて開発されたプロペラを持たないジェット機はルーマニアの発明家アンリ・コアンダが1910年に製作したコアンダ=1910です。この航空機は機首のレシプロエンジンで遠心式ブロアーを回転させるサーモ・ジェット・エンジンが搭載されていました。世界初のジェット機として同年10月にパリで開催されたパリの第2回国際航空博覧会に展示されましたが、同年12月の地上テストで滑走路から逸脱し焼失しました。これによってコアンダ=1910の開発は中止となりました。
実際に世界で初めて空を飛ぶことに成功したジェット機はドイツのハインケル社が開発したハインケル He 178(Heinkel He 178)です。He 178は世界初のターボジェットエンジン航空機です。
ターボジェットエンジンはイギリス空軍のフランク・ホイットルが考案し、1929年に遠心式ターボジェットエンジンに関する特許を取得しました。この特許は機密扱いとされなかったため世界で注目され、一部の国でジェットエンジンの開発が行われました。
最初に有力なエンジンを開発したのは空軍や航空機メーカーの技術者ではなくドイツのゲッティンゲン大学工学部の大学院生ハンス・フォン・オハインでした。 オハインはラジアルタービンを用いたジェットエンジンを考案して特許出願しました。1934年に友人が経営する自動車整備工場で試作機の製造に着手しました。1936年、オハインが開発したジェットエンジンを見たエルンスト・ハインケルはオハインをハインケル社に招きジェット機の開発に着手しました。翌1937年には気体水素を用いた遠心式ジェットエンジンの初号機ハインケルHeS 1 が製造され試験が始まりました。ジェットエンジンの開発が進められ軽油を燃料とする実用的ターボジェットエンジンHeS 3 が完成しました。He 3は単発のレシプロエンジンの急降下爆撃機 He 118に吊り下げる形で飛行試験が行われました。
このHe 3 エンジンを搭載するために開発された機体がハインケルHe 178です。He 178はハインケル社のジークフリート・ギュンターによって設計され、金属製の胴体に木製の主翼を持つ小型機でした。
最初の試作機He 178 V1 が初飛行したのは1939年8月27日です。操縦はハインケル社のテストパイロットのエーリッヒ・ヴァルシッツが担当しました。 このときの飛行時間はわずか6分程度でしたが、機体の耐久力などの性能により飛行時間は10分、最高速度は時速598キロメートルに制限されていました。試作2号機 He 178 V2 は推進力不足で離陸もできなかったのです。結果としてHe 178は従来のレシプロエンジンの戦闘機に対して性能面で優位性を示すことができず軍用機として採用されませんでした。
しかしながらイギリスではホイットルによるジェット機の開発が進んでおり、ジェット機の将来性は確信されていたことからドイツ航空省はハインケル社に双発ジェット戦闘機 He 280の開発を進めるよう要請しました。このとき航空省は他社に対してもジェットエンジンの開発を打診しており、これによって後に世界で初めて実用配備されたジェット戦闘機メッサーシュミットMe 262に搭載されるジェットエンジンが開発されています。ハインケル社はHe 280を開発しましたがエンジン開発に手間取ったことなどから採用されませんでした。しかし、その機体はMe 262より先進的で時代を先取りしたものでした。
さてHe 178 は試験終了後にドイツ空軍博物館に展示されていましたが1943年のベルリン空襲で焼失してしまいました。He 178は秘密裏に開発されたため一部の国を除いて他国に戦後まで知られることはなかった。現在は初飛行を行ったロストック・ラーゲ空港と米国スミソニアン航空宇宙博物館にレプリカが展示されています。
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