ソ連が世界初の大陸間弾道ミサイル (ICBM)の実験成功を発表(1957年8月26日)
R-7セミョールカ(ロシア語: Р-7 Семёрка、GRAUインデックス8K71)は冷戦中の1957年にソビエト連邦が秘密裏に開発した世界初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)です。開発はセルゲイ・コロリョフが率いるOKB-1が担当しました。
R-7の大元になったミサイルはドイツが開発したV2ロケットをソ連が1948年に複製したR-1です。このロケットはOKB-1によってR-2、R-3と改良されました。ソ連は同時期にドイツ人の技術者チームに射程距離3,000キロメートル、搭載弾頭3,000キログラムのG-4の開発に着手させました。G-4はR-3より優れていましたが、ソ連はR-3を採用しました。これによってOKB-1がミサイルの開発を進めることになりました。
OKB-1がR-7の開発に着手したのは1953年です。R-7の当初の要求仕様は重量3,000キログラムの分離式弾頭を備えた射程距離8,000キロメートルの170トンの二段式ミサイルでしたが、セミパラチンスク核実験場での実験の結果から弾頭重量が5,500キログラムに変更されました。この仕様変更は設計を大きく見直す必要がありました。テストを重ねながら設計が完了したのは1954年でした。
この背景でソ連はドイツ人チームに同じ要求仕様を提示しG-5の開発に当たらせていました。ドイツ人チームにはOKB-1でのロケット開発の情報は伝えられることはありませんでしたが、ドイツ人チームの成果はOKB-1に伝えられていました。ドイツ人チームはクラスター式ロケットを考案し、これがR-7にも採用されることになりました。クラスター式ロケットは現在のソユーズにも用いられています。
R-7は1956年から製作され1957年3月にR-7 M1-5が完成しました。このロケットの試験はバイコヌール宇宙基地で行われ、同年5月15日19時01分(モスクワ時間)に初めて発射されました。これが世界初の大陸間弾道ミサイル (ICBM)の発射実験となりましたが、打ち上げ後400キロメートル先で燃料漏れを起こしたため破壊されました。2回目の発射テストは同年6月11日に行われましたが事前の試験でトラブルが発生し実験が中止となりました。3回目のテストは発射直前のトラブルで打ち上げが延期となりました。同年7月12日、再び3回目の発射テストが行われましたが発射後33秒でトラブルが発生しました。R-7の発射テストが成功したのは同年8月21日です。4回目の発射テストで6,000キロメートルの長距離飛行に成功したのです。この成功は1957年8月26日付けでソ連のタス通信によって「ソ連が多段大陸間弾道ミサイルの実験に成功」と配信されました。西側諸国は打ち上げまで把握していませんでした。
R-7自身は1961年までに28回打ち上げられましたが配備されることはありませんでしたが、改良形のR-7Aは1959年から1968年まで配備されました。またR-7は宇宙開発用ロケットにも転用され世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げや世界初の有人宇宙船ボストークの打ち上げに用いられました。ソユーズもR-7から派生したロケットです。R-7はソ連の宇宙開発の原動力となりました。
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