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2023年7月 1日 (土)

2008年北京オリンピックでウサイン・ボルト選手は9.6秒を切る可能性があったか?

 2009年ドイツで開催された世界陸上選手権でウサイン・ボルト選手は9.58秒の世界新記録をマークしています。この記録は現在においても破られていません。

  ウサイン・ボルト選手の最高速度は時速44.72 kmか44.44 kmか|ラップタイムと瞬間速度

 ボルト選手は前年の2008年北京オリンピックでは同年8月16日に行われた陸上男子100メートル決勝で当時の自身の世界記録を0.3秒上回る9.69秒(+0.0 m/s)の世界新記録(当時)で優勝しています。このとき2着とは0.2秒の大差を付けた圧勝でした。

 ボルト選手はレース終盤で横を見て勝利を確信すると両手を広げながら走りゴールしました。またゴールの瞬間はやったとばかりに自信ありげに胸を手で叩いています。このボルト選手のゴール直前の動作は自信の速度を低下させたことは明白であり、もしボルト選手が全力で走っていれば9.6秒を切る世界新記録をマークできていたのではないかと言われています。当時のボルト選手のコーチだったグレン・ミルズ氏は9.52秒で走ることが可能だったと表明しています。

【公式】北京2008オリンピック 男子陸上100m ウサイン・ボルト選手【オリンピック感動名場面】

 2008年北京オリンピックのボルト選手の10メートルごとのラップタイムを下記サイトで見つけました。

  World's Fastest Man

   http://datagenetics.com/blog/july32013/index.html

 2009年世界陸上競技選手権のボルト選手の10メートルごとのラップタイムは前出のサイトにまとめてあります。

   ウサイン・ボルト選手の最高速度|時速44.72 kmか44.44 kmか

 次の表は2008年北京オリンピックと2009年世界陸上のボルト選手のリアクションタイム(RT)とラップタイムを比較したものです。

区間 北京 世界陸上
RT 0.186(s) 0.146(s)
000-010 (m) 1.85 (s) 1.89 (s)
010-020 (m) 1.02 (s) 0.99 (s)
020-030 (m) 0.91 (s) 0.90 (s)
030-040 (m) 0.87 (s) 0.86 (s)
040-050 (m) 0.85 (s) 0.83 (s)
050-060 (m) 0.82 (s) 0.82 (s)
060-070 (m) 0.82 (s) 0.81 (s)
070-080 (m) 0.82 (s) 0.82 (s)
080-090 (m) 0.83 (s) 0.83 (s)
090-100 (m) 0.90 (s) 0.83 (s)
合計 9.69 (s) 9.58 (s)

 この表を見るとやはり北京オリンピックでの90-100(m)の区間タイムが0.90秒かかっており0.07秒ロスしています。ボルト選手がこの区間を0.83秒で走ったとすると記録は、9.69 - 0.07 = 9.62秒 だったことになります。どう考えても9.52秒の記録にはなりません。

 もし、北京オリンピックのリアクションタイム0.186秒が世界陸上のリアクションタイム0.146と同じだったとしましょう。記録は 0.186 - 0.146 = 0.04秒 短縮されることになります。さきほど計算した9.62秒から引き算すると、9.62 - 0.04 = 9.58秒となり、2009年世界陸上選手権でマークした世界記録と同じタイムになります。

 また2008年北京オリンピックは無風、2009年世界陸上競技選手権では+0.9 mでした。下記のサイトに『180㎝・75㎏の選手が、平地、無風、気温26度、湿度50%、気圧1013hPaの条件下に「10秒00」で走った場合を基準として計算』した追い風の影響がまとめられています。

  記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話” 第6回「「9秒台」の時の「風速」」

  https://www.jaaf.or.jp/news/article/11366/

 ボルト選手と体格もタイムも違いますのであくまで参考ですが、表12のAによると+0.9 mの追い風は0.048秒タイムを速める効果があります。ボルト選手の9.58秒を無風に換算すると、9.58 + 0.048 = 9.628秒になります。一方、2008北京オリンピックが+0.9mの追い風だったとすると、記録は 9.69-0.048 = 9.642秒になります。最後の10メートルとリアクションタイムを考慮すると、9.58 - 0.048 = 9.532秒となります。

 結論としては、ボルト選手は2008年オリンピック大会で最後の10メートルを全力で走ってもリアクションタイムが悪かったので9.6秒を切ることはなかった。リアクションタイムが2009年世界陸上競技選手権と同じならば9.6秒を切っていたと言えそうです。

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