星の王子さまの日(1900年6月29日 )
6月29日は「星の王子さまの日」です。「星の王子さま」はフランスの飛行士で小説家のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説で、「星の王子さまの日」はサン=テグジュペリの誕生日1900年6月29日に因みます。
サン=テグジュペリは学生時代は文学を学びましたが、志願兵として陸軍飛行連隊に入隊しパイロットとなりました。退役後は民間航空会社で働きました。仕事の傍ら小説の執筆を手がけ1926年に作家となりました。1929年に自身のパイロットの経験をもとにしたデビュー作「南方郵便機」を発表、1931年の「夜間飛行」や1939年の「人間の土地」がベストセラーとなり人気作家となりました。「人間の土地」ではアカデミー・フランセーズ賞を受賞しています。サン=テグジュペリは作家となった後も国際郵便などのパイロットとして活躍しました。
1935年にフランスとベトナム間の最短時間飛行記録に挑戦しています。同年12月30日、機体トラブルにより周りに何もないサハラ砂漠に不時着して行方不明になりました。サン=テグジュペリと整備士兼航海士のアンドレ・プレヴォの生存が絶望視されましたが徒歩で3日をかけてカイロに到着、生還を果たしました。この経験は1939 年の「人間の土地」で回想されています。なお「人間の土地」は米国と日本では「風と砂と星と」という題名で出版されました。
第2次世界大戦が始まると陸軍予備役少尉であったサン=テグジュペリは1939年9月4日に召集され飛行学校の教官を務めました。サン=テグジュペリは教官では満足せず前線でパイロットとして活躍したいと考えました。周囲の人々は著名な作家を前線に送ることはできないと猛反対しましたが、サン=テグジュペリの意思は固く同年11月に偵察機のパイロットとして前線の偵察部隊に転属しました。1940年5月のドイツ軍のフランス侵攻でフランスのヴィシー政権がドイツと講和を結ぶと、サン=テグジュペリは同年12月に米国へ亡命しました。
サン=テグジュペリは亡命後も祖国を思い、自由フランス空軍に入隊し1943年6月に偵察部隊に着任します。ところが着陸事故を起こしてしまい同年8月に飛行禁止処分を受け操縦桿を握ることができなくなりました。その後、努力の末に爆撃機の副操縦士として復帰しますが、サン=テグジュペリは偵察機に拘り軍の命令を無視して1944年5月に偵察部隊に戻りました。1944年7月31日、サン=テグジュペリはフランス内陸部の偵察のためロッキードP-38ライトニング偵察機型の単座のロッキードF-5Bで単機で出撃しました。ロッキードF-5Bは帰還せず、サン=テグジュペリは消息不明となりました。
サン=テグジュペリは長らく行方不明とされていましたが、1998年に地中海のマルセイユ沖でトロール船が遺品を発見し2000年にン=テグジュペリのロッキードF-5Bが発見され2003年に引き上げられました。これによってサン=テグジュペリの戦死が公式に確定しましたが、サン=テグジュペリの遺骨は発見されませんでした。
2008年にドイツの元空軍パイロットでジャーナリストのホルスト・リパートが戦時中にメッサーシュミットBf109で1944年7月31日に地中海上空でP-38を撃墜していたことを証言しました。このP-38を操縦していたパイロットがサン=テグジュペリと考えられますが、リパートは撃墜時にパイロットの脱出は確認していないと述べています。当時、敵軍も含めて多くのパイロットがパイロットであり作家のサン=テグジュペリのことを尊敬していました。多くの敵軍パイロットはサン=テグジュペリの部隊とは闘いたくないと考えていました。リパートもその1人だったようで、「もし(P-38のパイロットが)サン=テグジュペリと知っていたら絶対に撃たなかった。サン=テグジュペリは好きな作家の一人だった」と真情を吐露述しています。
最後になりますがサン=テグジュペリの名作「星の王子さま」はサハラ砂漠に不時着した主人公のぼく(=パイロット)がある小惑星からやってきた王子と出会い王子と別れるまでの物語です。サン=テグジュペリは自身のサハラ砂漠に不時着したときの経験をもとに「星の王子さま」を執筆しました。サン=テグジュペリはこの物語を通じて「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)」「大切なものは、目に見えない」など人が普段のあくせくした生活の中で忘れてしまったことを思い起こすことの重要性を説いています。また物語の中には第二次世界大戦の悲劇に通じる表現もあり、サン=テグジュペリが戦時下の人々を勇気づける内容になっているという解釈もあります。
【関連記事】星の王子さまの日(1900年6月29日 )
・小説「ドン・キホーテ」の前巻が出版(1605年1月16日)
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