100メートルを最短時間8.70秒で駆け抜けた陸上選手は?
陸上競技男子100メートルの世界記録は2009年の世界陸上競技選手権でジャマイカのウサイン・ボルト選手がマークした9.58秒です。この世界記録はしばらくの間は破られることはないだろうと考えられています。
さて単に100メートルを駆け抜けるという意味では9.20秒で走った選手がいます。1996年のアトランタオリンピックの男子100メートル競走でカナダのドノバン・ベイリー選手が当時の世界新記録9.84秒をマークしました。
Donovan Bailey Wins Gold in Men's 100 Metres at Atlanta 1996
同大会の男子200メートル競争で米国のマイケル・ジョンソン選手が自身の持つ世界記録19秒66を大幅に更新する世界新記録19.32秒をマークしました。
Michael Johnson 200m Final, 19.32 - 1996 Atlanta Olympics
この2人の世界新記録からベイリー選手とジョンソン選手が100メートル競走をしたらどちらが勝つのか話題になりました。その理由はジョンソン選手の200メートルの記録19.32秒を半分にすると9.66秒で、ベイリー選手の100メートルの世界記録9.84秒を上回っていたからでした。
ジョンソン選手のラップタイムから計算すると、ジョンソン選手の前半100メートルを10.12秒、後半100メートルを9.20秒で駆け抜けています。後半100メートルは20メートルの曲線と80メートルの直線ですがスタート動作を含まないため100メートル競走より速い記録が出ます。
ジョンソン選手とベイリー選手のどちらが世界最速なのか決着をつける競争が行われることになりました。この競争は1997年5月31日に陸上競技の「世界最速決定戦」としてカナダのトロントのスカイドームで開催されました。しかし、100メートルが不得意なジョンソン選手と100メートルが得意なベイリー選手に配慮し、この競争は150メートルで決着をつけることになりました。レースは好スタートを切ったベイリー選手が先行しましたが後半のジョンソン選手の追い上げに期待が集まりました。しかし、カーブを過ぎたところでジョンソン選手が左足の故障で棄権したため決着はつきませんでした。
現在、200メートル競争の世界記録はウサイン・ボルト選手がマークした19.19秒です。このときのボルト選手のラップタイムは前半100メートルも後半の100メートルも9秒台ですが、後半は9.27秒でマイケル・ジョンソンの9.20秒には及んでいません。このことから200メートル競走の中の100メートルを最短時間で走ったのはマイケル・ジョンソン選手ということになります。
1997 - Donovan Bailey vs Michael Johnson 150 m
ボルト選手の2009年の世界陸上競技選手権の100メートルの記録とも比べてみましょう。記録の詳細データは下記の記事に記載してあります。
ウサイン・ボルト選手の最高速度は時速44.72 kmか44.44 kmか|ラップタイムと瞬間速度
まずは世界最速の映像を見てみましょう。
【世界最速】人類がまた進化した!ウサインボルト9秒58【世界陸上ベルリン2009】
このページからボルト選手の10メートルごとのラップタイムを見てみましょう。
区間 | 時間 | 秒速 |
---|---|---|
000-010 (m) | 1.89 (s) | 05.29 (m/s) |
010-020 (m) | 0.99 (s) | 10.10 (m/s) |
020-030 (m) | 0.90 (s) | 11.11 (m/s) |
030-040 (m) | 0.86 (s) | 11.63 (m/s) |
040-050 (m) | 0.83 (s) | 12.05 (m/s) |
050-060 (m) | 0.82 (s) | 12.20 (m/s) |
060-070 (m) | 0.81 (s) | 12.35 (m/s) |
070-080 (m) | 0.82 (s) | 12.20 (m/s) |
080-090 (m) | 0.83 (s) | 12.05 (m/s) |
090-100 (m) | 0.83 (s) | 12.05 (m/s) |
スタートの動作を含む000-010(m)の区間の時間2.89秒は他の区間より1秒以上遅い時間になっています。010-020 (m)、020-030 (m)、030-040 (m)は加速途中のためそれ以降の区間よりやや時間が遅くなっています。そこでボルト選手が000-040(m)をそれぞれ0.83秒で走ったと仮定し他の区間のタイムを合計してみます。
0.83 × 4 + 0.83 + 0.82 + 0.81 + 0.82 + 0.83 + 0.83 = 8.26秒
となりました。これにスタート時のリアクションタイム0.146秒を減ずると8.114秒です。これはあくまで仮定の参考データです。
ボルト選手は150メートル競走(直線)の世界記録14.35秒を所有しています。この時の050-100(m)の時間がラップタイムが8.70秒とワールドアスレティックス(旧IAAF)のサイトに掲載されていました。200メートルの後半9.27秒より0.57秒も短縮されています。
Bolt runs 14.35 sec for 150m; covers 50m-150m in 8.70 sec!
https://worldathletics.org/news/news/bolt-runs-1435-sec-for-150m-covers-50m-150m-i
この結果から判断すると100メートルの距離を最短時間で走ったのはウサイン・ボルト選手と言えそうです。
世界記録ともなると100 m、150m、200 mの走りで大きな差が出ると思いますが、基本的にヒトがどれぐらい速く走れるかは身長や足の長さ、そして走るときの歩幅や足の回転数に関係するでしょう。
ボルト選手の身長は195 cm、ジョンソン選手の身長は185 cmです。10cmの身長差があります。ボルト選手の足の長さは上述のサイトで紹介されている資料によれば105 cmです。一般い身長が大きいとスタートは不利と言われますがボルト選手は歩幅が大きく後半に加速できるのが特徴的です。ジョンソン選手は足が長くありませんでしたが回転数の高い力強い走りが特徴的でした。
前述の通り200メートル後半100メートルではジョンソン選手の方が速く走っています。ところがマイケル・ジョンソン選手は100メートルの自己ベストは10.09秒ですし、ボルト選手の150 mの最後の100 mは8.70秒です。体格や歩幅が大きな要因になっていることは間違いなさそうですが、その時の調子もありますし足の回転素や地面を蹴る力など様々な要因も関係しており決して体格だけではなさそうです。
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