「急がば回れ」はどこを回るのか
「急がば回れ」。危険な近道を行くよりも遠回りして安全な道を行った方が結果的には早く着くという意味の諺です。たとえば自動車を運転しているときに先を急ぐため本道を外れて慣れない近道を行ったら一歩通行などで却って遅くなってしまったときに思い出す諺ですね。
この「急がば回れ」の諺は室町時代後期の連歌師宗長が詠んだ「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」という歌に由来します。このことは江戸時代初期の僧侶の安楽庵策伝がまとめた談話集「醒睡笑」巻二に書き記されています。
この歌に出てくる 「矢橋の船」は草津の矢橋と対岸の大津の石場の航路を結ぶ渡し船のことです。また「瀬田の長橋」は滋賀県の琵琶湖の最南端から流れ出る河川の瀬田川にかかる「瀬田の唐橋」のことです。瀬田川は滋賀県から京都府、大阪府を経て大阪湾に通じますがその過程で宇治川、淀川と名を変えます。
「瀬田の唐橋」は滋賀県大津市瀬田と唐橋町を結ぶ日本日本三名橋の一つで近江八景「瀬田の夕照」に往時の唐橋の様子が描かれています。奈良時代の日本書紀にも登場し古代から存在していたことが知られています、現在の橋のようにしたのは安土桃山時代の織田信長です。「瀬田の唐橋」は安土城から京都に通じる重要拠点で頻繁に戦闘があり「唐橋を制するものは天下を制す」と言われました。現在の橋は昭和54年に架け替えられたものです。
さて琵琶湖の東側から京都へ向かうには「矢橋の船」を使うのが最速とされていましたが、この地は天候が悪化しやすく特に比叡山からの比叡おろしの突風で船出や船着きが遅れたり、船が危険な状態になったりすることが少なくありませんでした。そこで遠回りになっても南下して「瀬田の長橋」を渡った方が安全で早く到着することができます。これを連歌師宗長が「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」と詠んだのです。ですから「急がば回れ」とは琵琶湖を回れという意味ということになります。
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