「本わさび」と「生わさび」の違い
ワサビ(山葵)は日本原産のアブラナ科ワサビ属の植物です。ワサビは清水が流れる渓流や湿地に生息します。春になると白い小さな花を咲かせます。根茎や葉は独特の強い刺激性の香味を持ち薬味や調味料として使われます。
ワサビは古くから利用され飛鳥時代の遺跡から発掘された木簡に「委佐俾三升(わさびさんしょう)」というワサビを示す言葉がシルされています。ワサビが本格的に栽培されるようになったのは江戸時代です。今から400年以上前に安倍郡大河内村有東木(現:静岡市葵区有東木)のワサビが征夷大将軍を退いて駿府城で大御所となった徳川家康に献上されました。家康はその独特の風味を絶賛し、また山葵が徳川家家紋の「葵」に通じることからワサビを保護しました。これによって静岡県でワサビの栽培が発展し江戸にも送られるようになり、寿司や蕎麦の普及に相まって一般にも広がりました。
さて現在ワサビと言えば缶入りの粉わさびやチューブ入りの練りわさびがよく使われています。
粉ワサビを発明したのは静岡の茶仲買人の小長谷与七です。大正3年に製茶の技術を参考にワサビを粉末にすることに成功しました。しかしながら希少価値の高いワサビを使った粉ワサビは価格も高く量産もできないことから、ワサビの粉にカラシの粉を混ぜて製造するようになりました。昭和13年(1938年)には北海道に自生する岡わさび(セイヨウワサビ、ホースラディッシュ )が粉ワサビの原料として使われるようになりました。現在、粉わさびと言えば「西洋わさびを乾燥し、粉末化したものを主体とし加工したもの」と定義されています。
練りわさびは昭和46年(1971年)に袋入りのものが発売され、翌昭和47年(1972年)にチューブ入りのものが発売されました。練りわさびは粉わさびに油脂や食塩や砂糖などを加えて水で練り込んたものです。ですから練りわさびの主原料もセイヨウワサビでした。
ところが近年になって練りわさびの需要が増え市場競争が激しくなると、他社との差別化のため「生わさび」と表記されたものが販売されるようになりました。「生わさび」とは種類を問わず生のワサビをすりおろしたもののことです。ですから「生わさび」と記された練りわさびの原料は粉わさびではなく生のワサビをすりおろしたものです。単に「生わさび」と記されているものはセイイウワサビが主原料です。
「生わさび」には「本わさび入り」と表記されたものもあります。また最近では「本わさび」と表記されたものもあります。「本わさび入り」は日本原産のワサビを50%未満使用しているもの、50%以上使用しているものは「本わさび使用」と表記されいます。セイヨウワサビを使用せず日本原産のワサビを100%利用したものもあります。この場合、「生本わさび」のような表記になっています。
美味しい刺身、寿司、蕎麦、ステーキなどを食べる場合は本物の生のワサビをすったものが一番ですが、練りわさびを使う場合には商品の成分表示を見て日本原産のワサビを100%のものを選ぶと良いでしょう。価格も高いのですが上手に使い分けると良いでしょう。
なお練りわさびの「本わさび」に使われている日本原産のワサビは日本産ではないものがほとんどです。外国産でも「本わさび」であれば同じ種類のワサビです。
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