野球用語が適性語として日本語化(1943年3月2日)
太平洋戦争が始まったのは昭和16年(1941年)12月8日です。日本はマレー作戦と真珠湾攻撃によって英国や米国をはじめとする連合国との全面戦争に突入しました。米英との対立が深まる中で日本は英語を敵性語とし日常使われている英語の排斥(はいせき)を進めるようになりました。
敵性語の排斥の度合いは分野によって異なり徹底されたものではなく多くの外来語が使われ続けましたが政府が指導したものも多々ありました。その中のひとつが野球用語でした。日本でプロ野球が盛んになったきっかけは昭和6年(1931年)に行われたアメリカ大リーグ選抜チームと全日本チームの日米野球大会です。野球は敵国のベースボールが原点になっていることからプロ野球そのものの禁止もありえました。実際に東京六大学野球、都市対抗野球、甲子園の中等学校野球大会が中止されていました。
昭和18年(1943年)、陸軍情報部から日本野球連盟に呼び出しがあり鈴木龍二理事長が赴くと野球用語を日本語にする要請がありました。この要請は強制的なものではありませんでしたが日本野球連盟は軍からの要請でありプロ野球そのものが禁止になることを避けるために野球用語の徹底した日本語化を進めることになったのです。もともと野球用語には正岡子規によって翻訳された「打者」「走者」「四球」「直球」などの日本語化された用語が存在していたことからその他の用語の日本語化が進められました。
昭和18年(1943年)3月2日に理事会で日本語化された用語が定められました。たとえば、ストライクは「正球」、ボールは「悪球」、ヒットは「正打」、ファールは「圏外」、セーフは「安全」、アウトは「無為」となりました。試合中に審判が発する言葉も日本語化されました。ストライクは「よし」、ワンストライク、ツーストライク、スリーストライクは「よし一本」「よし二本」「よし三本」。三振でアウトのときには「それまで」、ヒットは「よし」、ファールは「だめ」などと定められました。
敵性語の禁止以外にも野球選手は戦闘帽をかぶり、挙手の礼を行うことが定められました。ユニフォームも国防色にするよう要請され、また「隠し球」は卑怯だとして禁止されました。
戦争が激化した昭和19年(1944年)にプロ野球は休止状態となりました。1945年1月に非公式な正月大会が開催されましたが、プロ野球が再開したのは戦後の昭和20年(1945年)11月のことでした。
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