ロボット工学三原則はアイザック・アシモフの短編SF小説『われはロボット(I Robot)』で示されたものです。ロボットはこの三原則の元に設計されなければならないということですから自律型ロボットについてはロボット自身の行動規範になるのだろうと思います。
ロボット工学三原則
・第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
・第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
・第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ロボットがこの三原則に従って作られているかどうかは人工知能の設計者に委ねられるでしょう。
〇ハカイダー
ハカイダーはキカイダーを破壊することを目的としてつくられたロボットです。人間体の名前はサブローです。
ハカイダーの頭部には光明寺博士の脳が収められています。漫画版では光明寺博士の脳の影響を受けますが、テレビドラマ版では影響を受けません。しかし、定期的に脳の血液を交換しなければならないという弱点が加えられました。本記事ではテレビドラマ版のサブロー/ハカイダーについて考えます。
サブロー/ハカイダーはキカイダーを破壊する目的を最優先とし、自らの意志を持って行動します。卑怯な戦い方を嫌うため、ギルの命令に従わないことやダークロボットと敵対することが多々ありました。一貫した目的はあくまで実力でキカイダーを倒すです。
サブロー/ハカイダーには良心回路と正反対の悪魔回路が搭載されています。つまりサブロー/ハカイダーの特徴的な行動は悪魔回路によるものと考えて良いでしょう。悪魔回路は良心回路と正反対と言っても「悪心回路」というわけではありません。悪事を働くことが目的ではなく、キカイダーを倒すことが目的なのです。その目的を実現するために搭載されたのが悪魔回路なのです。
第38話でヒトデムラサキがミツコとマサルを襲おうとしたとき、口笛とともにサブローが現れヒトデムラサキにナイフを投げつけます。仲間を裏切るのかというヒトデムラサキに対し、サブローは人質作戦などという汚い手が嫌いなだけだと答えます。そして、余計な手出しをするなとギルに伝えろとまで言います。キカイダーを倒すのは自分なのだから邪魔をするなということでしょう。
第40話でキリギリスグレイがマサルに遅いかかろうとしたとき、サブローはマサルに手を出すことは許さないと言い、俺はお前達のように命令通りに動く低能ロボットではないと一蹴します。あくまでも自らの意志で行動してキカイダーを倒すということです。
組織としてキカイダーを倒そうとするギルに対し、自らの手でキカイダーを倒すことを目的にしているサブロー/ハカイダー。両者の関係がどんどん悪化していくのも当たり前です。しかし、サブロー/ハカイダーを作ったのはギルなのです。
ギルはキリギリスグレイの報告を受けてサブロー/ハカイダーを咎めるためダーク基地に呼び出します。ハカイダーは基地のドアをぶち壊して乱入し、ギルの話に耳を傾けることもせず天井をぶち壊して出て行ってしまいます。こうした行動の核心も「キカイダーは俺が倒す。邪魔は許さない」ということでしょう。
第41話ではアカ地雷ガマがミツコとマサルを捉えダーク基地の牢獄に閉じ込めます。そこには頭に包帯を巻いた意識不明の光明寺博士も閉じ込められていました。ジロー/キカイダーはミツコとマサルを探していましたがアカ地雷ガマの攻撃を受けバラバラに破壊されてしまいます。ハンペンが破壊されたキカイダーの残骸を担いで逃亡しますがやがてアカ地雷ガマたちに見つかってしまいます。
そこに、どこからともなくサブローの口笛が響きます。サブローはアカ地雷ガマにナイフを投げつけます。アカ地雷ガマの胸部にナイフが突き刺さります。このときサブローはキカイダーとの戦いが自分の生き甲斐であったと言い、自分はキカイダーを倒したアカ地雷ガマを倒さなければならないと言います。キカイダーを倒したアカ地雷ガマは余裕を見せていましたがサブローが投げつけたナイフがアカ地雷ガマの地雷の機能を停止させていました。
ギルはアカ地雷ガマにハカイダーを破壊することを許可していました。アカ地雷ガマが手下のアンドロイドたちにハカイダーを抹殺するよう命令します。しかし、手下のアンドロイドたちがハカイダーを倒せるはずもなくアカ地雷ガマも倒されてしまいます。
この戦いの間にハンペンはミツコとマサルが閉じ込められている牢獄に向かい、牢獄の上部からバラバラになったキカイダーをロープで降ろしてミツコに預けます。ミツコはバラバラになったキカイダーを見て愕然とし自分には直せないと言います。
そこにハカイダーがハンペンの前に現れます。ハカイダーは自分の目的が失われたとゲシュタルト崩壊を起こしていました。そしてギルを憎み敵視するようになります。ハンペンは自分に襲いかかるハカイダーに自分はギルではないと言います。ハカイダーはダーク基地に向かい自分を生み出した相手が憎いと言いギルに襲いかかります。
ギルは狼狽して逃げまわりますがサブロー/ハカイダーを生み出したのは光明寺博士であるといいます。錯乱しているハカイダーは光明寺博士のいる牢獄に向かいます。ハカイダーは牢獄の扉を叩いてドアを開けるように言います。この間にミツコはキカイダーの頭部と胸部の配線を繋いでいました。キカイダーの目が光り会話ができるようになりました。ミツコはキカイダーの指示でキカイダーの回線を直していきます。
ついにハカイダーが扉を壊して牢獄に入ってきました。自分を生み出した憎い光明寺博士を殺そうとします。ミツコは父が死ねばサブロー/ハカイダーも死ぬことを伝えます。父がサブロー/ハカイダーを素晴らしい人造人間に作り替えることも可能と言って父を殺さないように頼みます。ハカイダーは考えを改めず光明寺博士に襲いかかります。
このときハカイダーの足を何かが掴みます。何とか上半身だけ動けるようになったキカイダーでした。キカイダーはハカイダーに自分が闘うことを告げます。ハカイダーはバラバラになったキカイダーを見て勝負にならないと言いますが、キカイダーと勝負することを決め光明寺博士には手を出さないことを約束します。ハカイダーは戦いを挑んでくるキカイダーに「あわてるな」と声をかけ、不完全な奴は相手にしないと言い「まず足をつけてもらえ」と言います。修理したキカイダーと正々堂々と闘いキカイダーを破壊することがサブロー/ハカイダーの目的なのです。
修理が終わったキカイダーに対してハカイダーは全力を出せない状態の相手では面白くないとサブローの姿に戻った。キカイダーもジローの姿に戻り、両者の激しい戦いが始まりました。ミツコとマサルは戦いをやめるように言いますが両者は言うことを聴きません。その隙にハンペンは光明寺博士を手術室に連れて行きます。
人間体同士の戦いでは決着がつかずサブローはキカイダーに変身します。ジローもすかさずチェインジと叫びますがキカイダーには変身することができませんでした。正々堂々という言葉も忘れたのかそのまま戦いを続けるハカイダー。そこにギルの命令で多数のアンドロイドマンが乱入。ジローとハカイダーはアンドロイドマンたちと戦い、そのうちに離ればなれになります。そこにハカイダーに襲いかかる白骨ムササビ、ハカイダーは白骨ムササビにあっさりと倒されてしまいます。そこに駆けつけるジロー。ハカイダーは無念そうに「どうせ殺られるなら俺はお前にお前に殺られたかったぜキカイダー」と言い残して機能を停止します。
光明寺博士の脳は無事に博士に戻されます。ジローは不完全な良心回路のままが良いと判断し良心回路の完成を断ります。キカイダーを倒すことを宿命としたハカイダー。そして数々のアンドロイドとの戦いでジローは何を感じたのか。次回はジロー/キカイダーの良心回路について考えてみます。
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