南極観測艦「ふじ」が初出港(1965年11月20日)
「ふじ」は初代南極観測船「宗谷」を引き継いだ二代目段曲観測船です。耐氷構造貨物船として建造され後に南極観測船に流用された「宗谷」に対して、「ふじ」は最初から極地探検を目的とする砕氷艦として建造されました。南極探検は文部科学省の事業ですが「宗谷」の運用は海上保安庁が担当し、「ふじ」は海上自衛隊が担当しました。
日本の南極観測隊は昭和36年(1961年)に出発した第6次観測隊が昭和37年(1962年)に越冬せずに昭和基地を閉鎖し帰還しました。南極観測隊の派遣を中断したのは「宗谷」が老朽化したことによるものです。昭和38年(1963年)に閣議決定で南極観測を再開することになり、南極観測隊の輸送は防衛庁(当時)が担当することになりました。南極観測を行うためには「宗谷」にかわる新しい南極観測船が必要です。
新しい南極観測船は昭和39年(1964年)8月に結ばれた文部省(当時)と日本鋼管の間の契約書に基づき建造されることになり、同年8月28日に起工式が行われました。日本鋼管鶴見造船所で短時間のうちに建造され昭和40年(1965年)3月18日に進水、同年7月15日に竣工しました。新しい南極観測船の名称は一般公募で決めることになり、約44万の応募船名から「ふじ」が選ばれました。進水式において皇太子・同妃臨席のもと「ふじ」と命名されました。
「ふじ」は防衛庁管轄のため海上自衛隊艦番号AGB-5001の南極観測艦となりました。「ふじ」には「宗谷」の経験からヘリコプターが搭載され、「ふじ」は初のヘリコプターを搭載する自衛艦となりました。「ふじ」のエンジンはディーゼル機関ですが発電によりスクリューを動かす電気推進方式が採用されました。同年6月28日から7回に渡る海上での試運転が行われ7月15日に引き渡されました。
「ふじ」が第7次観測隊を乗せて東京晴海埠頭を出発したのは昭和40年11月20日です。同年12月17日に南緯55度を通過し、27日に昭和基地に向かう流氷域に入りました。30日に昭和基地の沖の定着氷に停泊し、昭和41年(1966年)1月3日からヘリコプターで物資の輸送を開始、同年1月20日に昭和基地を再開しました。27日には昭和基地に接岸し陸上輸送も開始しました。2月1日に越冬隊の準備が整ったことを見届けた「ふじ」は昭和基地を離岸、4月8日に東京晴海ふ頭に帰港しました。
「ふじ」は昭和58年(1983年)4月まで海上自衛隊により運用され、昭和59年(1984年)4月11日に退役しました。現在は名古屋港ガーデンふ頭に係留され1985年(昭和60年)8月から南極観測に関する博物館として一般公開されています。Google Mapのストリートビューで見てみると上記の写真と同じ姿がそこにありました。
なお南極観測艦「ふじ」の役割は初代「しらせ」が引き継ぎました。2009年からは2代目「しらせ」が運用されています。
【関連記事】
・南極観測船「宗谷」が南極に向けて初出航(1956年11月8日)
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