グリニッジ天文台を経度0度に制定(1884年10月13日)
グリニッジ子午線は英国のグリニッジ天文台に設置された天体の子午線通過を観測する装置「エアリー子午環」の中心を通る経線です。もともグリニッジ天文台は1675年に基準とする子午線を決定する目的で設置されました。
グリニッジ天文台の初代台長のジョン・フラムスティードはグリニッジ天文台で恒星の厳密な観測を行い恒星図を作成しました。この恒星図はフラムスティードの死後1729年に「フラムスティード天球図譜」として出版されました。この恒星図によってグリニッジ天文台と世界各地での恒星の観測時間の差から経度差を求めることができるようになりました。
自国の天文台を基準とした恒星図を作ったのは英国だけではありません。16世紀から17世紀にかけてヨーロッパ諸国は海外進出を果たしました。大航海時代に世界各地を結ぶ多くの航路が発見され貿易が盛んに行われるようになると、船の安全な航行が求められるようになりました。そのためには正確な海図が必要で、船が洋上の位置を知るためには南北位置を表す緯度と東西位置を表す経度を求める必要がありました。緯度は地平線もしくは水平線と太陽や北極星のなす角度から比較的簡単に求めることができましたが、経度を求めるためには基準の位置と自分が存在する位置の時差を知る必要があったのです。1610年に自作の望遠鏡で木星の衛星を観測したイタリアのガリレオ・ガリレオは世界各地での衛星の食が始まる時間差から経度を決めることができると考えました。パリの天文台で台長ジョヴァンニ・ドメニコ・カッシーニのもとで木星の食の始まりを観測し初めて光速が有限であることを証明したフランスのオーレー・レーマーも経度を決めることが目的で天体観測を行っていたました。
1700年代後半、英国は世界の海を制する海軍を有する海洋大国になっていました。これによってグリニッジ天文台を基準とした「フラムスティード天球図譜」が事実上の標準の星図となりヨーロッパ諸国の船が利用しました。1851年、グリニッジ天文台の台長ジョージ・ビドル・エアリーが天文台本館(現在の旧館)に子午環を設置しました。いわゆる「エアリー子午環」の中心がグリニッジ子午線の基準となりました。1884年10月にワシントンDCで開催された国際子午線会議でグリニッジ子午線が世界共通の公式な本初子午線とすることが定められました。このとき、フランスは採択を棄権しています。フランスはパリを標準とする子午線を1911年まで使用しました。
現在、国際的に採用されている本初子午線は「エアリー子午環」の東側102.478メートルを通るIERS基準子午線です。1969年に米国が宇宙から座標を計測したところわずかにずれていることがわかったのです。これによってグリニッジ子午線の経度は西経0度0分5.3101秒(1989年時点)となりました。このことからグリニッジ子午線は本初子午線ではなくなったのですが、ずれはわずかなためグリニッジ子午線と本初子午線が区別されていない場合があります。日本の標準時子午線はグリニッジ子午線を元に定められたものです。
グリニッジ・タイム―世界の時間の始点をめぐる物語 単行本 – 2007/10/1
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