単位メートルが光速度基準になる(1983年10月20日)
国際単位系(SI)およびMKS単位系で定義されているメートル(記号: m)は長さの計量単位です。メートルは秒(s)、質量(kg)、アンペア(A)、ケルビン(K)、モル(mol)、カンデラ(cd)に並んで他の量とは関係しない独立した7つのSI基本単位の1つでものです。
長さの普遍的測定単位(universal measure)は1668年にイギリスの建築家で天文学者クリストファー・レンが提案した39.25イギリス・インチ(997 mm)が採用されました。当時はまだメートルという単位はなく、この値はオランダの科学者クリスティアーン・ホイヘンスが求めた2秒を刻む振り子の長さ38ラインランド・インチに相当しています。
1675年にイタリアのイタリアの科学者ティト・リビオ・ブラッティーニがギリシア語でuniversal measure を意味するμέτρον καθολικόν(メトロン・カトリコン)から普遍的測定単位を「metro cattolico」と記したことがきっかけとなり長さの単位がメートルになりました。
もともと長さの単位は世界中でバラバラでした。たとえば長さの単位にフィートがあります。フィートは足の大きさに由来する長さですが、古代においては権力者などの足の大きさを元に定められていました。フィート以外にも様々な長さの単位が存在することからわかるように各地で独自の単位が使われてきたのです。それぞれの単位の標準化が進んでも国際的に共通化されたものではありませんでした。
15世紀半ばからの大航海時代になると正確な地図が必要となりました。それぞれの国が使っていた単位をもとにしていては安全な航海ができなくなり貿易にも支障を来すようになりました。長さの標準化を精力的に進めたのはフランスでした。1971年にフランスの科学アカデミーはいくつかの案の中から地球の子午線を基準にすることを決めました。単位を定義するにあたって当時求められていた子午線長より正確な測量が必要でした。フランスは単独で1798年までに測量を行いました。1799年、測量の結果から北極点から地球の赤道までの子午線長の1千万分の1の値を1メートルと定義しました。そして、白金で1メートルの長さのメートル原器(アルシーヴ原器)を製作しました。
しかしながら実際の地球の形状から考えると子午線を長さの基準に用いることは適切ではありませんでした。技術の進歩によってより正確に子午線長を求めることができるようになりましたが、子午線が長さの基準として不適切であることには変わらないため1869年にアルシーヴ原器そのものをメートルの基準とすることになりました。1872年にはアルシーヴ原器を元に30本のメートル原器が製作され、1889年にパリで開催された第1回国際度量衡総会において最も正確とされた6番目のメートル原器を国際メートル原器としました。 メートル原器のその正確さには限界があることは当初から指摘されていましたが、製作時の誤差があることが判明しました。
1873年、イギリスの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルは光の波長を長さの基準にするべきという提案をしました。この提案に基づきアメリカの物理学者るアルバート・マイケルソンがメートル原器を光で測定しました。その後も光による測定が試みられ、1960年にメートルはクリプトン-86が真空中で発する橙色の波長の1650763.73倍と定義されました。これによってメートル原器はその役割を終えました。
クリプトン-86による測定実験は再現性があまりよくないという問題を抱えていました。1950年代半ばに開発されたセシウム原子時計が1967年に1秒の定義に使われるようになると長さの単位を光速と時間で表すことになりました。1983年に開催された第17回国際度量衡総会において同年10月20日に1メートルは「1秒の 299792458 分の1の時間に光が真空中を伝わる長さ」として定義されました。
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・グリニッジ天文台を経度0度に制定(1884年10月13日)
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