長崎原爆忌(1945年8月9日)
1945年8月6日、B-29エノラ・ゲイが広島へ原子爆弾リトル・ボーイを投下した際、被害状況を調査するために広島上空を飛んでいたのが科学観測機B-29グレート・アーティストです。このときグレート・アーティストは落下傘付きの観測機器を投下しています。この観測機器を原子爆弾と誤認した人が多かったため原子爆弾は落下傘で投下されたという噂が広がりました。
広島への原爆投下後、米国は九州へ原子爆弾ファットマンを投下する計画を進めました。ファットマンを投下する任務を受けたのがグレート・アーティストの搭乗員でした。しかし、グレート・アーティストは科学観測機の機材を搭載していたため原爆を投下することができない状態でした。そこで別の機体のB-29ボックスカーが原爆投下機として選ばれ、ボックスカーとグレート・アーティストの搭乗員が入れ替わることになりました。
ファットマン投下の第一目標は福岡県小倉市(現:北九州市)に設定されていました。1945年8月9日日本時間午前2時47分、ボックスカーは小倉を目指してテニアン島を離陸しました。ボックスカーより1時間前に出発し気象観測を行ったのが広島にリトルボーイを投下したエノラ・ゲイです。エノラ・ゲイは天候が良好であることを伝え、ボックスカーは予定通り小倉を攻撃目標としました。
ボックスカーが原爆投下目標の小倉陸軍兵器工場に到着したのは午前9時44分。しかし、目視による目標確認に失敗、その後やり直したものの都合三度失敗した。この間に日本軍の迎撃機も現れたため小倉上空から離脱せざるを得なくなりました。このときボックスカーの原爆投下を妨げたのは雲ではなく八幡製鉄所が出していた黒煙でした。事前に空襲の可能性の情報を得ていた八幡製鉄所が爆撃を避けるためコールタールを焼却し煙幕を張っていたのです。八幡製鉄所の機転で小倉は原発投下を避けることができましたが、八幡製鉄所の所員は戦後も長きに渡って複雑な心境だったようです。
この煙幕によってボックスカーは午前10時30分に小倉上空から離脱、原爆投下を第二目標の長崎市に変更しました。長崎に向かう途中、ボックスカーはグレート・アーティストとニアミスをしています。2機は空中衝突していた可能性があったのです。当初、長崎上空の天候は良好でしたがボックスカーが到着する頃には天候が悪化し視界不良となりつつありました。ボックスカーには、小倉での3度の投下失敗に加え、燃料の予備タンクのポンプが故障していたため十分な燃料が残っていませんでした。
ボックスカーが長崎上空に到着したのは午前10時50分頃です。長崎上空には積雲が立ちこめていました。このとき燃料不足のため原爆投下目標への進路を取り直す余裕がありませんでした。目視による原爆投下が不可能だった場合は太平洋上に投棄する命令が出ていましたが、ボックスカーに搭乗していた上官の命令で目視が不可能でもレーダー爆撃を行うことになりました。命令違反のレーダー爆撃を行うことになりましたが、保内の目標から北西の地点で雲の切れ目から眼下に街が見えました。午前10時58分、ボックスカーはその地点でファットマンを投下しました。ファットマンは4分後の午前11時2分、上空503メートルで爆発しました。このときボックスカーの乗組員が搭乗したグレート・アーティストがファットマンによる被害状況を調査する観測を行い、落下傘で観測装置を投下しました。
長崎にファットマンを投下したボックスカーの燃料はわずかになっていました。テニアン島まで帰投することはできず、午後2時頃に沖縄県読谷飛行場に緊急着陸しました。このときファットマンにはわずか26リットルの燃料しか残っていませんでした。
8月9日の原爆投下、小倉への投下は阻止され何かひとつ歯車が狂っていたら長崎への投下も失敗していた可能性も十分にありました。しかしながら、結果として長崎に原爆が投下され多くの方々が犠牲となりました。
1945年8月初めのたった数日の間に2度も繰り返された核攻撃、いかなる地域でも3度目は絶対にあってはなりません。
【関連記事】長崎原爆忌(1945年8月9日)
| 固定リンク | 0
「今日は何の日」カテゴリの記事
- 相撲の土俵が釣屋根に(1952年9月21日)(2023.09.21)
- 競馬の日(1954年9月16日)(2023.09.16)
- 国鉄がシルバーシート導入(1973年9月15日)(2023.09.15)
「飛行機」カテゴリの記事
- ハインケルHe178が世界初のジェット飛行成功(1939年8月27日)(2023.08.27)
- スペースシャトル実験機「エンデバー」単独初飛行(1977年8月12日)(2023.08.12)
- 日本初の国産ジェット機「橘花」初飛行(1944年8月7日)(2023.08.07)
- 日本航空の設立(1951年8月1日)(2023.08.01)
「歴史」カテゴリの記事
- サンマリノが建国(301年9月3日)(2023.09.03)
- 函館山から望む北海道駒ヶ岳(2023.08.28)
- 浜名湖が海とつながった理由|明応地震(1498年9月20日)(2023.09.20)
- 南極はどこの国?|南極条約が発効(1961年6月23日)(2023.06.23)
- 日本版サマータイム 夏時刻法が施行(1948年4月28日)(2023.04.28)
コメント