光化学スモッグの日(1970年7月18日)
1970年7月18日、東京の空は白っぽく霞がかっていました。杉並区の東京立正中学校・高等学校のグランドで体育の授業を受けていた生徒43名が突然眼の痛みや喉の痛みなどの健康被害を訴えました。東京都公害研究所(現:東京都環境科学研究所)が調査したところ原因は大気中の化学物質によるものであることがわかり、太陽光に含まれる紫外線で窒素酸化物(NOx)が有毒な光化学オキシダントに変化して光化学スモッグが生じていたことがわかりました。光化学スモッグはこれ以前にも発生していましたがこの事件によって広く知られるようになったことから1970年7月18日は「光化学スモッグの日」とされています。
光化学スモッグは5月から9月の午前10時から午後5時ぐらいにかけて日射が強い・気温が高い・風が弱いなどの気象条件が重なったときに生じます。スモッグは煙(スモーク、smoke)と霧(フォッグ、fog)を合わせた言葉で、工場や自動車の排煙の粒子が核となって霧が発生じている状態です。スモッグには排出された石炭の微粒子や二酸化硫黄など有害な化学物質を含むロンドン型スモッグと、排出された物質が紫外線で光化学反応を起こしてさらに有害物質を生成するロサンゼルス型スモッグがあります。ロンドン型スモッグでは大気中に黒いスモッグが発生し、ロサンゼルス型スモッグは白いスモッグが発生します。光化学スモッグはロサンゼルス型スモッグのことです。
ロンドン型スモッグはイギリスの産業革命以降に発生するようになったスモッグですがロサンゼルス型スモッグは1940年代に米国のロサンゼルスで発生したものです。ロサンゼルスの地形は盆地であり大気が滞留しやすい土地柄です。人口増加に伴って産業が発展し自動車が増加したことで大気汚染が発生するようになりました。ロンドン型スモッグは排煙などの規制により改善されましたが、1943年9月8日に高濃度のスモッグが発生し多数の人々が眼や喉の刺激を受けるなどの健康被害に遭いました。調査の結果、工場や自動車から排出される窒素酸化物および光化学反応性の高い炭化水素が紫外線のエネルギーを受けて光化学反応を起こしその結果生じた有害な大気汚染物質が原因で発生すした光化学スモッグであることがわかりました。この大気汚染物質を光化学オキシダントといいます。オキシダントは大気中に存在する酸化力の強い物質の総称でオゾン、硝酸ペルオキシアセチル、二酸化窒素、過酸化物などがあります。光化学オキシダントはオキシダントから二酸化窒素を除いたものと規定されています。
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