蒸気機関の特許取得(1698年7月2日)
蒸気機関の発明というとイギリスのトマス・ニューコメンやジェームズ・ワットが有名ですが商業的に実用可能な蒸気機関を世界で初めて発明したのはイギリスのトマス・セイヴァリです。
蒸気機関の原型となるものは紀元1世紀頃の古代レクサンドリアの工学者・数学者ヘロンがアイオロスの球(ヘロンの蒸気機関)を考案しています。アイオロスの球は球体や円柱の容器に軸をつけて回転するようにしたものです。球体や円柱に複数のノズルがついており、そこから蒸気を噴き出しながら回転するもので蒸気タービンの原型のようなものでした。この措置が実際に動力として使われたかどうかはわかりませんが科学的な展示物として作られたと考えられています。
1600年代末にイギリスで活躍したフランスの物理学者ドニ・パパンはゲーリケのマクデブルクの半球を参考に1690年に水の蒸気の凝縮現象を利用して真空を作り出し大気差を利用してピストンを動かす装置の模型を製作しました。蒸気圧を利用した蒸気機関とは異なりますが、圧力差でピストンを動かすアイデアはその後に発明された蒸気機関の原型と言っても良いでしょう。また、この装置はピストンを収納しているシリンダーを火で加熱し水をかけて冷却する必要があったため実用的なものではありませんでした。
世界で初めて実用的な商用蒸気機関を発明したのはイギリスのトマス・セイヴァリです。セイヴァリは1698年に「火の機関」と名付けた蒸気機関を開発しました。同年、国王ウィリアム3世を前にした実験に成功し7月2日に特許を取得しました。翌1699年6月14日には王立協会で実演を成功させています。
セイヴァリの特許「火力によって揚水する装置」には詳細な説明は記載されていませんでしたが、1702年に出版した著書「鉱夫の友;または火で揚水する機械」で装置の仕組みや使い方などについて説明しています。「火の機関」は蒸気の凝縮による負圧で配管から容器に吸い上げた水を蒸気圧で別の配管から圧し出す仕組みでした。
セイヴァリは著書の中で鉱山の排水などの用途を掲げていましたが、効率が悪かったため水を汲み上げられる高さ(揚程)が低く組み上げられる水の量も少なかっため用途は簡単な組み上げポンプに限られました。しかしながらセイヴァリの特許は極めて広い請求範囲であったためその後の蒸気機関の開発に影響しました。特許の期限も14年から21年に延長されたためトマス・ニューコメンが開発した蒸気機関もセイヴァリの特許を利用する必要がありました。
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