映画「大脱走」(The Great Escape)は第二次世界大戦中のドイツの捕虜収容所から連合軍将校達の集団脱走を描いた1963年公開のアメリカ映画です。ジョン・スタージェス監督、主演スティーヴ・マックィーンをはじめジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソン 、ジェームズ・コバーン 、リチャード・アッテンボロー 、デヴィッド・マッカラムなど、そううそうたる顔ぶれが揃った巨編の映画です。ジョン・スタージェス監督は1960年に黒澤明監督の「七人の侍」を原作として「荒野の七人」(The Magnificent Seven)を制作していますが「荒野の七人」の出演者の多くが「大脱走」に出演しています。

映画「大脱走」(1963年)のポスター(英語版)
大脱走の原作者はオーストラリア人のポール・ブリックヒルです。ブリックヒルは第二次世界大戦中の1940年にオーストラリア空軍の戦闘機パイロットとして北アフリカ戦線に従軍していました。1943年にチュニジアで撃墜されドイツ軍の捕虜となりました。その後、ベルリンのドイツ空軍の捕虜収容所スタラグ・ルフト IIIに収容されました。
この収容所は徹底的な脱走対策が施されており脱走は不可能と言われていました。特にトンネル掘削による脱走へ頑強な対策が施されていました。たとえば小屋は地面から若干浮くように建てられおり、歩哨が床下を確認しやすくなっていました。また収容所の地面は明るい黄色い砂で覆われており、穴を掘ったり砂を捨てたりするとすぐにわかるようになっていました。そして掘削を発見するための地震を計測するためのマイクロフォンが設置されていたのです。このような対策が施されていたにも関わらずトンネル掘削による脱走事件が発生したのです。
この収容所は脱走など企てない限りスポーツなどのリクリエーションが許されていました。捕虜達は赤十字からの支援物資の箱の合板を利用して運動用の跳び箱を作り、毎日同じ場所で跳び箱の練習をしました。この跳び箱の中には工具と袋を持った捕虜が潜んでおり、他の捕虜たちが跳び箱を跳んでいる間にトンネルを掘削していたのです。多くの捕虜達が次々と跳び箱を跳ぶためトンネルを掘削する音と振動はかき消されマイクロフォンによる探知を妨げました。掘削した土は袋に詰めてあたりにまき散らさないようにしました。運動の時間が終わるとトンネルの開口部は板で覆われその上に土が被されました。金属製の棒で地表に空気穴を開けながら30メートル以上掘り進め、3ヶ月をかけて脱走用のトンネルが完成しました。
1943年10月29日夜、英国のエリック・ウィリアムズ大尉、オリバー・フィルポット大尉、ミッシェル・コドナー中尉の3名がこのトンネルから脱走計画を実行しました。ウィリアムズ大尉とコドナー中尉は港でデンマークの船に乗船し英国に帰還しました。フィルボット大尉は列車で乗車し、その後スウェーデンの船に乗船し英国に帰還しました。ウィリアムズとフィルボットはそれぞれの著書に脱走について記録し、それを元に映画「木馬」(1950年)が制作されました。木馬の監督はジャック・リー、 出演はレオ・ゲン 、デヴィッド・トムリンソン、アンソニー・スティールなどです。
映画「大脱走」はブリックヒルが収容所の経験から原作を書いたもので1963年7月4日に公開されました。大脱走は実話よりも大がかりな脱走で脱走者数76名、そのうち収容所に戻されたのは11名でした。脱走に成功したのはわずか3名でした。
さて自分が「大脱走」を見たのは映画ではなくフジテレビ系列で放送されたゴールデン洋画劇場でした。大脱走は2時間52分の対策でした。当時長時間の映画はカットされて放送されていましたが「大脱走」はカットされることなく2週に渡って前編・後編で放送しました。1970年初めに見たときから「大脱走」が好きになりました。初めてビデオデッキを購入しときに最初に買った映画が「大脱走」でした。DVDも買いました。もう何回見たのか数え切れないぐらい繰り返して見ています。
何度も見ていると面白いことを発見できます。内容はネタバレになりますのでここではトリビアを紹介します。
スティーヴ・マックィーン演じるヒルツがバイクでドイツ軍から逃げるシーンがあります。ヒルツを追いかけるドイツ軍の中にドイツ兵が運転しているバイクが何台か映ります。よ~く見ているとわかりますが、それらバイクのうち1台を運転しているのはなんとスティーヴ・マックィーンなのです。
収容所の所長でドイツ空軍大佐のフォン・ルーガー所長はこの事件の責任を取らされて歩兵指揮官として前線勤務となります。ルーガー所長の実在のモデルはドイツ空軍のフリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・リンダイナー=ヴィルダウでスタラグ・ルフト IIIの所長を務めました。劇中のルーガー所長と同様に紳士的な人物で捕虜の扱いも丁寧だったそうです。終戦後、大脱走事件での捕虜の殺害の罪を問われました、元捕虜の多くがヴィルダウはジュネーブ条約に従って捕虜を扱っていたと証言し、これによって終身刑や死刑を免れて釈放されています。
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