映画「JAWS」公開(1975年6月20日)
「JAWS」は1975年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の出世作で同監督が人気になるきっかけを作った映画です。
「JAWS」の原作はピーター・ベンチリーが1974年に出版した同題名の小説です。この小説の映画化を企画したのはスピルバーグ監督ではなくユニバーサル・ピクチャーズのプロデューサーのリチャード・D・ザナックとデイヴィッド・ブラウンです。2人はブラウンの妻が編集長を務めていた雑誌でまだ出版されていない小説「JAWS」を知り「良い映画になる」と書評に書いてあったことから興味をもちました。さっそく小説を読んだところ今までにない刺激的な内容だったため映画化することを決めました。この時点ではどのように映像化するかなどのアイデアはありませんでしたが、出版前の1973年には映画化の契約をしました。
映画化にあたって2人は「JAWS」の監督を誰に依頼するかを考えました。最初は「荒野の七人」「大脱走」「老人と海」などを手がけたジョン・スタージェス監督に依頼しようと考えましたが、写真家やCMディレクターから転身して映画監督デビューしたディック・リチャーズに依頼しました。ところがリチャードがサメとクジラを何度も言い間違えるため監督の依頼をキャンセルしました。
この小説の映画化に興味をもっていたのが1971年のテレビ映画「激突」の監督を務めたスピルバーグ監督でした。このテレビ映画「激突」続編との位置づけで1973年に劇場版の映画「続・激突!/カージャック」が公開されましたが、この映画がスピルバーグ監督の初の劇場映画監督作品となりました。「激突」はデイヴィッド・マンが運転する乗用車に追い抜かれた大型タンクローリーがデイビッドの乗用車をしつこく追い回しデイビットの命を付け狙うという内容の映画です。最終的にはタンクローリーは乗用車とともに崖から転落しデイビッドだけが助かります。タンクローリーの運転手は最後まで顔を出さず、そのことが不気味さと恐怖感を強調しています。この不気味さと恐怖感は「JAWS」に通じるものがありました。またその他、倒しても倒しても襲いかかってくる1973年の映画「ウェストワールド」のロボットガンマン、1984年の映画「ターミネーター」に通じるものがあります。
さて、この「続・激突!/カージャック」は「激突」とは内容的にはまったく関係ない映画でしたが、この映画のプロデューサーがザナックとブラウンだったのです。そして2人はスピルバーグに「JAWS」の監督を任せることにしました。
スピルバーグ監督は小説「JAWS」を読んですっかり魅了されていましたが、「激突」に続いて同じような不気味さと恐怖感のあるサメ映画を監督することに踏襲しました。恐怖映画の監督と認識されるのが嫌だったからだそうです。しかしながら、ザナックとブラウンはスピルバーグを説得し続け、スピルバーグ監督も了承しました。
スピルバーグ監督は小説を映画化するに当たってサメ狩りのシーンだけを原作に忠実に再現しその他は原作とは異なる脚本とすることにしました。脚本はクレジットでは原作者のピーター・ベンチリーになっていますが、スピルバーグ監督は別の脚本家に登場人物の設定変更などでリライトを依頼しています。その他、映画を面白くするために様々な趣向を加えました。たとえばロイ・シャイダー演じる主人公のアミティ警察署長のマーティン・ブロディが沿岸の警察署長にもかかわらず水嫌いで泳げないこと、サメが絶命する原因を外傷から酸素ボンベによる爆発に変更しています。この終わりのシーンは「激闘」に通じるものがあり、実際にスピルバーグ監督もかなり意識していたようで「激突」のタンクローリーの爆発音を利用しています。
「JAWS」の撮影は1974年5月から始まりました。最初は調教したホオジロザメを撮影に使うことを考えたようですが不可能であることから3体のサメロボットが作られました。1体は巨大なサメが海を泳ぐ様子を撮影するためのもので、2体は巨大サメの身体の様子を撮影するためのものでした。海での撮影はずいぶん大変だったようで予算400万ドルだったところ撮影には900万ドルもかかったそうです。
「JAWS」の公開は1975年6月20日ですが、これに先だって3月26日にダラスで2回、3月28日にロングビーチで1回の試写会が行われています。ハリウッドでカットの追加などの変更を加えた最終版の試写会が4月24日に行われました。
映画評論家の淀川長治さんも試写会に参加したそうですがテレビの解説では激闘」しか制作していないスピルバーグ監督の知名度も低く試写会の参加者はわずかだったと言っています。しかし、この試写会を見て大成功すると確信したそうです。
「JAWS」の日本公開は 1975年12月6日です。ずいぶん前評判が高かったことから父が自分と弟を映画館に連れていってくれました。サメが突然現れるシーンなどもあり、3人で「ワッ」と驚きながらものすごい迫力の映像に見入っていました。
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