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2022年3月 4日 (金)

バウムクーヘンの日(1919年3月4日)

 バウムクーヘンは年輪のような模様が特徴的な中心に穴が空いた形をしているドイツのケーキです。ドイツ語でバウム(baum)は木を意味し、クーヘン(kuchen)は菓子を意味します。

 バウムクーヘンの起源はいくつかの説があります。バウムクーヘンの製法はオーブンなどで蒸し焼き上げられる焼き菓子と異なり、心棒に生地を巻き付けて直火で焼き上げられれます。この製法から考えるとバウムクーヘンの起源は古代ギリシアの心棒に紐状に伸ばした生地を巻き付けて直火で焼くオベリアスというパンと説があります。オベリアスは普通の蒸し焼きで作るパンとは明らかに異なりバウムクーヘンと共通する製法ですが、この製法だけでオベリアスをバウムクーヘンの起源とすることはできないという見解もあります。オベアリスはパンであり菓子のバウムクーヘンとは見た目も味も異なりますが、この串焼きパンが串焼き菓子になったという主張もあります。

 ドイツには15世紀の中頃に書かれた心棒に生地をまいた菓子の製法の文書が存在しています。この文書の題名は「1本の串でクーヘン(kuchen)を食べる」となっていますから、オベアリスよりもバウムクーヘンの起源に近いと言えるでしょう。16世紀半ばになると紐状の生地を巻き付けていたものが板状の生地を巻き付ける製法に変わります。17世紀後半になると卵と生クリームで作られた液体状の生地が使われるようになり、よりケーキに近い菓子になります。液体状の生地を何度もかけて焼き上げていくため菓子の断面にはバウムクーヘンのように年輪状の模様ができます。18世紀になると生地に卵やバターとともに砂糖が加えられ気泡を含んだケーキ生地となりバウムクーヘンの原型が完成したと考えれています。現在のバウムクーヘンの起源はドイツ北部の町ザルツヴェーデルでバウムクーヘンが作られたことが記録に残っています。このバームクーヘンは2010年に原産地名称保護認証を受け、ザルツヴェーデルがバウムクーヘン発祥の地とされています。

 さてドイツを起源とするバウムクーヘンですがドイツでは日本ほど普及していないそうです。日本にバウムクーヘンを紹介したのはドイツの菓子職人カール・ヨーゼフ・ヴィルヘルム・ユーハイムです。ユーハイムは1908年にドイツの租借地だった中国の青島に移住し、1909年に喫茶店「ユーハイム」を開業しました。1914年に第一次世界大戦が始まり青島は日本軍に占領されました。ユーハイムは軍人でなかったにも拘わらず日本軍の捕虜として捉えられ青島に懐妊した夫人を残して大阪の収容所に移送されてしまいました。1917年に大阪の収容所の捕虜たちはインフルエンザ予防の理由で広島の収容所に移送されました。

 ユーハイムに転機が訪れたのは1919年です。当時の広島県が同年3月4日にドイツ人捕虜による「ドイツ作品展示会」を広島県物産陳列館(原爆ドーム)で開催しました。ユーハイムは何とか材料をかき集めてバウムクーヘンを作り販売しました。このバウムクーヘンが日本で初めて紹介されたバウムクーヘンとなりました。日本人にとっては見たこもない焼き菓子でしたがユーハイムが日本人の口に合わせた味付けのバウムクーヘンを作ったこともあり売れ行きは好調だったようです。

カール・ユーハイム
カール・ユーハイム

 1918年11月、第一次世界対戦が終戦を迎え収容所から解放されたユーハイムは青島に戻ろうとしましたが青島でコレラが流行していたため日本に残ることを決めました。明治屋が銀座に開店した「カフェ・ヨーロップ」で製菓の主任として働くことになり青島から家族を呼び寄せました。ユーハイムのバームクーヘンは高く評価されましたが、1922年2月に「カフェ・ヨーロップ」との契約期間が終了しました。

 その後、ユーハイムはロシア人から横浜のレストランを購入し、同年3月7日に夫人エリーゼの名前を組み入れて名付けた「E・ユーハイム」を開店しました。当時珍しかったドイツ風のレストランは大繁盛しましたが1923年9月に発生した関東大震災で焼失してしまいました。ユーハイムは全財産を失い神戸のドイツ系高級ホテルに勤務しようと考えていましたが、当時来日していたロシア人バレリーナのアンナ・パヴロワに神戸市内の洋館で店を開くように勧められ貴喫茶店「JUCHHEIM'S」を開店しました。店は大繁盛しバームクーヘンなどの菓子を卸販売するようになりました。日本で初めてマロングラッセを販売したのも「JUCHHEIM'S」です。

 「JUCHHEIM'S」の経営は順調でしたが第二次世界大戦中の1944年頃から材料の入手が困難となり店を閉めることになりました。そして1945年8月14日、ユーハイムはこの世を去りました。敗戦後、エリーゼはGHQによってドイツに強制送還されてしまいました。

 1948年10年、「JUCHHEIM'S」で働いていた日本人が「ユーハイム商店」を設立しました。「ユーハイム商店」は1950年に株式会社となり、1953年にドイツから戻ったエリーゼを会長として迎えました。エリーゼは1961年10月に社長となり、会社は1963年に「株式会社ユーハイム」と社名を変更、日本でバウムクーヘンなどを製造販売する有名な洋菓子製菓会社となりました。株式会社ユーハイムはユーハイムが日本で初めてバウムクーヘンを紹介した3月4日を2010年にバウムクーヘンの日と制定しました。

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