通産省がPCBの生産使用禁止を通達(1972年3月21日)
PCBとはポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated biphenyl)という化学物質のことです。PCBは2つのベンゼン環がつながった「ビフェニル」の水素原子の1つ以上が塩素原子に置き換わった構造をしており、広い意味ではダイオキシンの一種とされています。
PCBは1881年にドイツで開発され1929年にアメリカで工業的な製造が始まりました。日本でも1954年に製造されるようになりました。PCBは耐熱性や絶縁性に優れているためので、トランス(変圧器)やコンデンサの電気機器の絶縁油などに使用されました。トランスやコンデンサは工場などの大掛かりな機械の他、蛍光灯、テレビ、電子レンジなど家電製品にも使われていました。また、熱によって分解されにくいため、いろいろな機械の加熱・冷却用の油にも使用されていました。
PCB非常に幅広い分野で使用されるようになりましたが、毒性が高く1968年に「カネミ油症事件」が起きました。福岡県のカネミ倉庫株式会社で製造された米ぬか油を食べた人たちの身体に異常が発生したのです。皮膚が黒くなったり、肝臓が働かなくなったり、手足のしびれが起きるなどしました。原因は米ぬか油の製造ラインで脱臭工程の熱媒体として用いられていたPCBやPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)が米ぬか油に混入していたからでした。この事件によってPCBの問題が注目されるようになり、当時の通商産業省は1972年3月21日にPCBの生産・使用禁止の通達を出しました。
PCBは国内では使用されなくなってもう30年以上経ちます。PCBに対する人々の意識は薄れてきていますが、回収されていない製品が未だに存在しています。また過去に廃棄されたものから漏れ出したPCBが土壌や水質を汚染し、PCBが生物の体内に蓄積されて害を及ぼす可能性も指摘されています。
世界的には2028年までにPCBを全廃しようというPOPs条約が2001年に成立しています。未だにPCBを含む電気機器が見つかったり、回収されたPCBの処分が遅れたりするなどの問題があります。2028年に向けてPCB問題は再び注目されるようになるでしょう。そういう意味では30年経過した現在においてPCB問題は古くて新しい問題と言えそうです。
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