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2022年1月23日 (日)

世界で初めて地球最深部に到達(1960年1月23日)

 スイスの物理学者オーギュスト・ピカールが発明しイタリアで製造されたバチスカーフ(Bathyscaphe )と呼ばれる潜水艇。バチスカーフはギリア語のbathys(深い)とskaphos(船)に由来する造語で深海探査用の潜水艇です。

 バチスカーフはフロート、キャビン、水バラストタンク、固形バラスト収納部、動力部からなります。未使用時フロートには通常は窒素が封入されていますが潜水する際には水より比重の小さいガソリンが封入されます。フロートには液体が封入されているため頑丈に作らなくても十分な耐圧が得られるようになっています。キャビンはいわゆる潜水球と同じものですがフロートから吊り下げられています。キャビン内部は大気圧とほぼ同じ圧力の空気で満たされています。内部が気体のキャビンは液体が封入されるフロートとは異なり頑丈に作られています。動力部にはバッテリーで稼働するモーターが取り付けられています。

 バチスカーフは水バラストタンクに水を入れることによって潜水します。普通の潜水艦は水バラストタンクの水を圧縮空気で吐き出すことによって浮上しますが、バチスカーフが潜行する深海では水圧のために水バラストタンク内部の水を排出することができません。そこでバチスカーフには固形バラストが搭載されており、これを捨てることによって浮上します。固形バラストは固形バラスト収納部に電磁石で取り付けられており、電気をオフにすると固形バラストが外れるようになっています。そのためカーチスは電力が喪失しても固形バラストが外れて浮上するようになってます。浮力を小さくする方の微調整はフロート内のガソリンの一部を海水に交換することでも可能です。

 最初のバチスカーフは1948年にベルギーで建造され「FNRS-2」と名付けられました。後にフランスに売却され改造を経て「FNRS-3」となりました。「FNRS-3」は1958年に来日し日本海溝の調査を行いました。宮城県の金華山沖で水深3,000メートルまで潜航しました。

 第二のバチスカーフはイタリアで1953年に製造され「トリエステ」と名付けられました。「トリエステ」は1957年に米国海軍に売却され深海潜水試験に使用されました。そしてマリアナ海溝の深度を調査するネクトン計画に使用するため1959年11月にグアム島に運ばれました。

 1960年1月23日、「トリエステ」はオーギュスト・ピカールの息子ジャック・ピカールと海洋学者のドン・ウォルシュ海軍中尉を乗せてマリアナ海溝の最も深くなるチャレンジャー海淵で潜航を開始しました。1枚の窓から破壊音が聞こえましたが損傷は確認できなかったことから潜航を続け、約5時間後に海底に到着しました。海底に到達したとき「トリエステ」の水深計は11,521メートルを示していました。これによって「トリエステ」が世界で初めて地球最深部に到達した潜水艇となりました。

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チャレンジャー海淵探査前のトリエステ(上)
キャビン(左下)とピカールとウォルシュ(右下)

 ピカールとウォルシュは深海底で魚類を発見し高水圧下で脊椎動物が生息していることを確認しました。海底に到着して20分ほど滞在しましたが窓にひびが入っていることがわかり浮上を開始し3時間15分後に無事に帰還しました。

 なお1995年の日本の「かいこう」の探査によってチャレンジャー海淵の正確な深度は10,911メートルであることが判明しています。

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