うるしの日(11月13日)
漆は人類が古くから利用してきた天然樹脂で塗料や接着剤として利用されてきました。漆はウルシノキなどウルシ科の植物から得られ、その主成分はウルシオールといいます。
日本では5000年以上前の縄文時代の遺跡から、漆を表面に塗り重ねた漆器が出土しています。5000年以上の時を経ても漆器は鮮やかな朱色を保ったままで出土し、漆がきわめて安定性にすぐれた物質であることがわかります。
漆器をつくるためには、まずウルシノキの幹に傷をつけて樹液を集めます。この作業を漆掻きといいますが、1本の木から得られる樹液の量はわずか150 gほどしかありません。漆の採取は実に根気のいる作業です。
採取した樹液は樹皮などの異物を除去したのち、撹拌しながら均質にし、水分を蒸発させます。できあがった漆を器に何度も塗り重ね、高温多湿の環境でしばらく乾燥させます。すると漆が固化して安定した物質に変化します。漆は大変すぐれた安定性をもっていますが、採取できる量が少ないうえ加工に手間がかかるため今も昔も大変貴重な天然樹脂なのです。
さて、轆轤(ろくろ)で椀や盆など木工品を作る職人さんのことを木地師といいますが、轆轤は平安時代の第55代文徳天皇の第一皇子である惟喬親王が考案しましたものです。惟喬親王は皇位を継ぐことができず、9世紀に近江の山間地に隠棲しているときにろくろを考案し伐採や製材に従事していた杣人に木工技術とともに伝えました。このことから惟喬親王は木地師の祖と呼ばれています。
木地師が製作した木工品に漆職人が漆を塗ると漆器になりますが、漆の製法や漆塗りの技術も惟喬親王に由来しています。惟喬親王が京都嵐山の法輪寺に参籠し満願の日を迎えた11月13日に虚空菩薩から漆の製法や漆塗りの技法を伝授され広めたという伝説があります。1985年、日本漆工協会はこの言い伝えをもとに11月13日を「うるしの日」と制定しました。
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