ゴムの日に天然ゴムのおはなし(5月6日)
毎年5月6日は「ゴムの日」とされています。この日に因んでゴム製品をPRする企業はたくさんありますが、どの団体がいつ頃に「ゴムの日」を制定したのかはわかっていません。
天然ゴムの原料
人類が初めて使ったゴムは、南米のアマゾン川流域の熱帯雨林を原産地とするパラゴムノキの樹液を固めた天然ゴムです。パラゴムノキはトウダイグサ科パラゴムノキ属の常緑高木で、名前の「パラ」はブラジル北部のパラ州に由来しています。
このパラゴムノキの幹に傷をつけると、乳液状の白い樹液が得られます。これが天然ゴムの原料となります。
採取したばかりのパラゴムノキの樹液は、ゴムの成分が分散した白い水溶液(ラテックス)です。これに少量の酸を加えて凝固させて乾燥すると生ゴムになります。
天然ゴムの発見
紀元前1200年頃から紀元前300年頃、現在のメキシコのベラクル州とタバスコ州の境目あたりでオルメカというアメリカ大陸最古の文明が栄えていました。オルメカという名前は現地のインディオの言葉で「ゴムの国の人」という意味です。このあたりにはパラゴムノキが豊富にあり、人々は天然ゴムを使いこなしていたのでしょう。
オルメカの遺跡から、宗教的儀式として球技が行われた祭祀場と、その球技に使われた天然ゴム製のボールが発見されています。この球技は「トラチトリ」と呼ばれるフットボールによく似た球技として、その後に発展したマヤ文明やアステカ文明にも受け継がれました。
1493年にクリストファー・コロンブスが第2回目の航海でジャマイカに立ち寄った際に、原住民が天然ゴムで作ったボールで遊んでいるところを発見したことで、天然ゴムがヨーロッパに伝わりました。
しかし、その後約300年の間は特に利用価値もなく希少品として扱われるのみでした。天然ゴムが初めて道具として使われたのは1700年代後半になってからです。酸素の発見者としても有名なイギリスの科学者ジョセフ・プリーストリーが天然ゴムを使うと鉛筆で書いたものを消せることに気がつき、1772年に消しゴムを作りました。この天然ゴムを使った消しゴムはあっという間に世界中に広まりました。ゴムのことを英語でRubberといいますが、これはrub out(文字を消す)という言葉が語源になっています。
天然ゴムの主要生産地が東南アジアなのは
19世紀の終わりになると、自動車などのタイヤに天然ゴムが使われるようになり、天然ゴムは需要に対して供給が不足して価格が暴騰しました。そのため、イギリスは南米からもち帰ったパラゴムノキの苗木を、当時植民地支配していた東南アジアのセイロン島(現在はスリランカ)に持ち込み天然ゴムの栽培を始めました。これが南米を原産とするパラゴムノキの樹液から作られる天然ゴムの主要な生産地が東南アジアとなっている理由です。
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