映画「七人の侍」公開(1954年4月26日)
1954年4月26日は世界で最も有名な日本映画、黒澤明監督作品「七人の侍」が公開された日です。
この完璧な出来栄えと言われる時代劇は黒澤明監督が最初から構想していたものではありませんでした。黒澤監督は1952年に公開された志村喬主演「生きる」を撮影しているときに、現実的な時代劇を制作しようと考えました。
黒澤監督が最初に構想した時代劇は下級武士の生活を描いた「侍の一日」という作品でした。脚本家の橋本忍氏はリアリティを追求するため上野の国立国会図書館で武士の日常生活についていろいろ調べましたが、侍が昼食をとっていたのか、いつから風呂に入るようになったのかなどの記録を見つけることができませんでした。橋本氏はこのような日常生活の基本的なことが判明しなければ現実的な時代劇は制作できないと考え、黒澤監督に相談することなく脚本を書き進めることを断念し、東宝のプロデューサーに中止を申し入れました。この橋本氏の独断の行動に対して黒澤監督は不満を述べました。橋本氏は、日本の歴史は事件については詳細に書き記されているが、侍の日常生活のような記録は一切残っておらず、これではリアリティを追求した時代劇は作れないという考えを述べました。この説明を聞いた黒澤監督はそれ以上は何も言わなかったそうです。
「侍の一日」をお蔵入りとした黒澤監督は次に「日本剣豪列伝」を企画しました。この時代劇は上泉信綱などの剣豪を登場させ、その活躍ぶりを描いたものでした。この時代劇も脚本は橋本氏が担当しましたが、多くの剣豪の戦いの短編を集めただけでは山場の連続となり物語にならないとの結論に達し制作を断念しました。
どうしたらリアリティを追求した時代劇を制作できるのか。あるとき黒澤監督と橋本氏は戦国時代の浪人は全国を流浪しながらどのようにして生活の糧を得ていたのかという素朴な疑問がわき、東宝の担当者に調べるように頼みました。その後、映画プロデューサーの本木荘二郎氏から宿泊先する場所がない場合は百姓に飯と宿を与えてもらう代わりに盗賊などから村を守っていたという調査結果の報告があり、これが「七人の侍」の物語の原点となりました。
1952年12月、黒澤監督と橋本氏は脚本の執筆に小国英雄氏を加えて熱海の旅館「水口園」に詰めて脚本の執筆を始めました。黒澤監督は七人の特徴を詳細に設定し、橋本氏と小国氏とひとつひとつのシーンの脚本を作り上げていきました。
翌1953年5月27日に「七人の侍」の撮影が開始されました。当初は10月上旬の公開をめざし90日で撮影する予定でしたが、撮影は分散したロケ地や悪天候の影響を受けて大幅に遅れ、9月になっても全体の1/3程度しか撮影できておらず、予算も使い果たしていました。撮影は中断となり、東宝は制作を続けるのか中止とするのか決断に迫られましたが、予算を追加して制作を続行することを選択し、11月に撮影が再開されました。ところがその後も撮影は円滑に進まず、1954年1月に再び撮影が中断、東宝は黒澤監督にこれまで撮影したところまでを試写するように要求し、黒澤監督はその要請に応えました。その結果、撮影続行の決断がなされ、2月の極寒のなかで豪雨の決戦シーンが撮影されました。大雪が降るなどして撮影は困難を極めましたが3月19日にすべての撮影を終了しました。
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