社長が語る1円玉の価値を小料理屋の女将さんがばっさり切る
とある小料理屋さんでの出来事である。
ある日カウンターで食事をしながら飲んでいた。
そこへお客さんが入ってきて隣に座った。
久しぶりと声をかける女将さん。
どうやら女将さんとは知り合いのようだ。
このお客さんは会社を経営している社長さんらしい。
隣同士で時事問題などいろいろな話をした。
時間が過ぎ去り、お勘定となった。
財布を出す社長さん。
そのとき小銭入れから1円玉が飛び出し床に転がった。
拾ってあげようとしたら、拾う必要はないと。
1円玉を拾うには1円以上の費用がかかるというのだ。
ん?質量とエネルギーから計算すると1円拾った方がいいのは明白。
そういう話ではないらしい。
床に落ちた1円玉を見つけて手を伸ばして拾い上げて小銭に戻す。
これに5秒間かかったとする。
仮に社長さんの月給が200万円だったとすると、日給は約65,700円。
1日8時間働くとすると時給は約8,200円だ。
こんな言い方はしないが
分給料は約137円、秒給は2.28円。
だから5秒では約11円。
社長さんの仕事の時間単価を考えると1円を拾う仕事は11円ということになる。
月給100万円でも約5円である。いやいや月給は200万円よりもっと高いかもしれない。
ミスで落とした1円を拾うのに時間と労力を使うなら別のことに費やして1円以上の価値を生み出す。
それが心情らしい。
なるほどそういうものなのかと感心して聞いていたら・・・
そこに女将さんの声。
ちょっとあなたたち!
「うちの店の床に落ちた1円は誰の時間と労力を使って拾うことになるのよ」
ニヤッと意味ありげな笑い顔。
「あ゛ーっ!」と言って、すかさず1円玉を拾う。
すっかり一本取られた社長さん。
あわてて1円を探して拾うまでに10秒ぐらいはかかったぞ。
20円も使った。いや30円かもしれない。
お勘定を済ませて「また来るよ」と颯爽と帰っていく社長。
自分も勘定を済ませて店をあとにした。
一円を笑う者は一円に泣く。
これもまた重要。
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