液体燃料ロケットの打ち上げ成功(1926年03月16日)
世界で初めての火薬で推進するロケットは13世紀頃までに宋王朝で開発されたと考えられています。当時のロケットは兵器として使われ、固体の黒色火薬が使われていました。兵器としての威力は限定的だったかもしれませんが、武器が自ら空を飛んでくるわけですから敵を威嚇するには十分な効果があったでしょう。また、当時はロケットで宇宙に行こうなどとは誰も考えていなかったでしょう。
世界で初めて液体燃料ロケットを考案したのはロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーです。ツィオルコフスキーは1903年に出版した「Исследование мировых пространств реактивными приборами(ジェット装置による宇宙空間の探求)」で液体酸素と液体水素を燃料としたロケットを発表し、多段式ロケットの仕組みなどについて言及しまいた。1879年にはロケットの打ち上げに必要なツィオルコフスキーの公式を発表しています。ツィオルコフスキーは実際にロケットを作りませんでしたが、ロケットで宇宙旅行が可能であることを示したことから「宇宙旅行の父」と呼ばれています。「Планета есть колыбель разума, но нельзя вечно жить в колыбели(地球は人類のゆりかごであるが、人類は永遠にゆりかごで生きていくことはできない)」という言葉を残しています。
実際に液体燃料ロケットの打ち上げを世界で初めて成功させたのはアメリカのロバート・ハッチングズ・ゴダードです。ゴダードは高校生の頃からH・G・ウェルズの「宇宙戦争」やジュール・ヴェルヌの人間が大砲の弾丸に乗って月へ行く「地球から月へ」を読んで宇宙旅行に興味を持つようになりました。ゴダードは1912年にニュージャージー州のプリンストン大学の研究員となりロケットの研究を進め1919年に月飛行の可能性に関する論文を発表しています。
この頃、世界各地でロケットの研究開発が行われていましたが、多くのロケットは固体燃料ロケットでした。固体燃料ロケットは構造が簡単で低コストで製作することができますが、点火後に噴射を制御することができないという欠点がありました。そこでゴダードが注目したのがツィオルコフスキーが考案した液体燃料ロケットでした。液体燃料ロケットは構造が複雑で高コストで製作が難しいという欠点がありますが、噴射を制御することができるためロケットの打ち上げを自在に行うことができます。
しかし、当時は液体水素の入手は容易ではなく、ゴダードは燃料としてガソリンと液体酸素を選択しました。ロケットの研究は周りから理解が得られませんでしたが、資金難の中、1926年3月16日にマサチューセッツ州オーバーンで液体燃料ロケットを打ち上げの実験を行いました。ロケットは飛行時間わずか2.5秒でしたが、高度12メートル、飛距離56メートル、平均時速100キロメートルを記録しました。ゴダードは世界初の液体燃料ロケットの打ち上げに成功したのです。
1929年の打ち上げ実験では、打ち上げに成功したものの理解を得られず、消防署が出動する騒ぎとなり、地元の新聞はロケットの打ち上げは失敗し空中で爆発したという記事を掲載しました。実際にはロケットは爆発しておらず落下しときの衝撃で破壊しただけでした。このことが、きかけになって、マサチューセッツ州でのロケットの打ち上げ実験は禁止となりました。
その後、大西洋横断飛行で有名なチャールズ・リンドバーグの支援によって、ゴダードは資金援助を得てニューメキシコ州ロズウェルで実験を続けることができるようになりました。第二次世界大戦中に軍用のロケットの研究を行いましたが理解されないまま終戦間際の1945年8月になくなりました。
当時、ゴダードの研究は理解されませんでしたが、ロケットの実用化が進むにつれゴダードの業績が高く評価されるようになり、ゴダードは「ロケットの父」と呼ばれるようになりました。
「昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実である」、ゴダードが残した言葉です。
●下記はツィオルコフスキーの伝記です。ゴダードも少しだけ紹介されています。
耳が聞こえず孤立するなか、「伝説の独学」によってロケットの基礎となる理論を打ち立てたロシア人科学者コンスタンチン・エドゥアールドヴィッチ・ツィオルコフスキー。人類みんなを宇宙に飛ばすことを夢見て、知性と理論による驚異的な未来予想で科学を発展させた「ロケット推進の父」の日本ではじめての伝記。
【関連記事】液体燃料ロケットの打ち上げ成功(1926年03月16日)
・地球は青かった ユーリー・ガガーリン 類初の有人宇宙ロケットボストーク1号
・ケネディ大統領が月面着陸の声明を出す(1961年5月25日)
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