けむりのくも
昔は家の前で家庭ゴミの野焼きがよく行われていた。
一般家庭には焼却炉などないから一斗缶やブロック囲いで野焼きしていたものだ。
当たり前の風景だった。
煙突などないから煙があたり一面に広がる。
気温や湿度や風向きなのか本当に平面的に広がるときがある。
まるで地面に雲が降りてきたように。
その雲の中を子どもたちがはしゃいで駆け抜ける。
煙の匂いなど気にしない。
煙でむせたり涙が出ることはある。
そんなことより雲の中で遊ぶことの方が楽しいのである。
ところがある頃から黒い煙や煤が出てくるようになった。
プラスチック、ビニール、発泡スチロール。
あまり見かけたことがない材料。
この黒い煙が出てくる様子や材料が燃えてドロドロ溶けていく様子を見るのは面白かった。
しかし、白い煙とは違う。雲にもならない。
黒い煙や煤は面白いが心のどこかで避けていた。
空き地が少なくなり、住宅が増え、人口が増えると、野焼きは次第に少なくなった。
ついに野焼きは一部の例外を除いて法律で禁止となった。
もうあの野焼きはできない。
それは当たり前のことだ。
しかし、思い出もめぐる。
あの雲の中を走ることは二度とできない。
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