冥王星が発見される(1930年2月18日)
米国アリゾナ州フラッグスタッフのローウェル天文台。この天文台は天文学者パーシヴァル・ローウェルが自費で設立したもので、ここでローウェルは新惑星の発見に取り組んでいました。海王星・天王星の動きから新惑星の存在を予言していましたが、新しい惑星を発見することができないまま亡くなりました。ローウェル天文台はその後も新惑星の探索を続けました。
アメリカのクライド・ウイリアム・トンボーは経済的な理由で大学に進学することができませんでしたが、独学で勉強に励み1926年に自作の反射式天体望遠鏡を作り、天体観測をしていました。トンボーがローウェル天文台に火星と木星の観測結果を送ったとおろ、高く評価されて1929年にローウェル天文台で働くことになりました。トンボーはここで新惑星を探索する仕事に就きました。
当時の惑星探索には、同じ空を時期をずらして撮影した2枚の写真を比較する点滅コンパレータ(ブリンクコンパレータ)という装置が使われていました。当初トンボーはこの装置の操作をすることはできませんでしたが、やがてこの作業を任せられるようになると、ローウェルが新惑星があると予測した空を自ら丁寧に調べ始めました。
1930年2月18日、トンボーは、1月23日と29日に撮影した写真を比較していたところ、動いている天体が存在することに気がつきました。この天体は海王星の外側にあることがわかり、ついにトンボーは第9番目の惑星を発見したのです。この天体は予想していたよりもずいぶん暗い15等星で、ローウェルが計算した位置から6度もずれていました。また、後に判明したことですが、1929年4月11日に撮影した写真にも新惑星が写っていたのです。トンボーの丁寧な調査がなければ、見落とされたかもしれません。新惑星発見のニュースはローウェルの誕生日である3月13日に発表されました。
新惑星の名前はイギリスの11才の少女ヴェネチア・バーニーが提案した「プルート」に決まりました。天文学とギリシア神話に興味があったバーニーは、非常に暗い新惑星には冥府の国の神の名がふさわしいと考え、ギリシア神話の冥府の神ハデスに対応するローマ神話のの冥府の神プルートを選びました。なお、日本名の「冥王星」は英文学者で多数の天文関係の書籍を著した野尻抱影が名付けました。
天体観測の技術が向上すると、冥王星のような天体が多数見つかるようになり、「惑星」の定義が見直されることになりました。そして2006年に「冥王星」は惑星ではなく準惑星(ドワーフ・プラネット、dwarf planet、矮惑星)に分類されることになりました。ちょうど1906年生まれのトンボーの生誕100年に当たる年のことでした。
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