科学衛星「ひてん」打ち上げ(1990/01/24)
世界で初めて月を探査するために立ち上げられたプロジェクトは米国のパイオニア計画です。米国は1958年から探査機の打ち上げを行いましたが失敗を繰り返し、十分な成果を得ることができませんでした。1959年3月に打ち上げたパイオニア4号で月の探査に成功しました。地球の重力圏から離れ、月面から6万キロメートルまで近づき、放射線の検出を試みました。
同じ頃、ソビエト(現ロシア)も月探査を行うルナ計画を進めていました。1958年に探査機の打ち上げを3回試みましたが、いずれも失敗に終わりました。1959年1月に打ち上げで探査機を月に向かう軌道にのせることに成功し、月面から6千キロメートルまで近づくことに成功しました。この探査機をルナ1号と名付けました。1959年9月に打ち上げられたルナ2号は月面への衝突、ルナ3号は月の裏側の写真の撮影、ルナ9号は月面への着陸に成功しています。
当時の冷戦化において、このソビエトの月探査の偉業やガガーリンを載せた有人宇宙飛行船ボストーク1号の打ち上げ成功は米国にとって衝撃的なものとなりました。宇宙開発でソビエトに遅れをとっていた米国は有人宇宙飛行による月面着陸をめざすアポロ計画を立ち上げたのです(ココログ 夜明け前「ケネディ大統領が月面着陸の声明を出す」)。
20世紀末以降は月の探査がいろいろと行われています。最近では中国の探査機の嫦娥4号が2019年1月に人類初の月の裏側への着陸を果たしています。
さて、ロシア、アメリカに次いで月へ向かった探査機は日本の探査機「ひてん」です。1990年1月24日、M-3SII-5ロケットによって鹿児島宇宙空間観測所(現内之浦宇宙空間観測所)から打ち上げられました。「ひてん」は直径1.4 m、高さ0.79 mの円筒形の探査機で、燃料と孫衛星「はごろも」を含めた重量は197kgです。
「ひてん」のミッションは将来の宇宙探査に必要となる技術やデータの取得、月の重力を利用した精密なスイングバイの実験などです。また、ミュンヘン工科大学の共同研究として、宇宙塵カウンターによって地球と月の間に存在する宇宙塵の分布の計測もおこなわれました。
スイングバイは地球から遠く離れた宇宙探査に必要な技術で、全部で8回行われました。また地球の大気層の抵抗を利用して軌道を修正する世界初のエアロブレーキ実験を行いました。「ひてん」は他国の探査機では実現できていない極めて高度なスイングバイを成し遂げることに成功しました。また、1990年3月に孫衛星「はごろも」を分離し、月周回軌道へ投入することに成功しています。
1993年4月、「ひてん」の任務は月面のステヴィヌス・クレーター(豊かな海)近傍に衝突することで終了しました。「ひてん」によって得られた知識と経験は、その後打上げられた探査機に活用されています。探査機「はやぶさ」の高度な制御も「ひえん」によって培われた技術がベースになっています。
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