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2021年1月15日 (金)

男子100メートル「10秒の壁」を破った選手たち

 陸上競技の男子100メートルの世界記録は9秒台ですが、かつては9秒台を達成するのは極めて難しいとされ「10秒の壁」と言われていました。

 ワールドアスレティックス(WA、世界陸連)が公認している男子100メートルの最初の世界記録は、1912年7月6日にストックホルムオリンピックで記録された米国ドナルド・リッピンコット選手の10秒6でした。当時は手動ストップウォッチしかありませんでしたので、記録は1/10秒までしか計測することができませんでした。1/100秒まで計測可能な電動時計が使われ始めたのは1964年の東京オリンピックからですが、1976年までは手動と電動の計測結果の両方が公認記録とされました。電動時計の計測結果のみが公認となったはのは1977年以降です。

 1912年の記録から50年以上「10秒の壁」が破られることはありませんでしたが、1968年6月20日にカリフォルニア州サクラメントで開催された全米選手権において、ジム・ハインズ選手、 チャールズ・エドワード・グリーン選手、ロニー・レイ・スミス選手の3人が10秒の壁を破り、9.9秒を記録しました。この記録は公認されていますが手動計測によるもので、同時に行われた電動計測の結果では、それぞれ10秒03、10秒10、10秒14でした。

 電動計測で「10秒の壁」を破ったのは1968年10月14日のメキシコシティオリンピックで金メダルを獲得したジム・ハインズ選手です。このときの記録は電動計測で9.95秒、手動計測も9.9秒でした。世界記録は9秒95と認定され、人類初の9秒台の達成となりました。公認記録としては前述の3人が9.9秒を達成していることになっていますが、実質的にはジム・ハインズ選手の9.95秒が世界初の9秒台でしょう。

ジム・ハインズ選手の記念切手
ジム・ハインズ選手の記念切手

 さて、メキシコシティオリンピックは標高2000メートル超える高地で行われたため、ジム・ハインズ選手の9.95秒は「高地記録」とされました。標高が高いと気圧が低く空気抵抗が少ないためより速く走れますが、明確な基準がないため「高地記録」と記された公認記録となります。

 次に「10秒台の壁」を破って世界新記録を達成したのは米国のカルヴィン・スミス選手で、1983年7月3日にコロラドスプリングスで開催されたU.S. Olympic Festivalで9.93秒を記録しました。ジム・ハインズ選手から15年も経過しており、この記録も高地記録と記され、高地では好記録が出るジンクス通りとなりました。

 世界記録更新ではないものの、このジンクスを打ち破り、初めて平地で9秒台を達成したのが米国のカール・ルイス選手です。1983年5月14日にモデストで開催されたModesto Invitational Track and Field Meet で9.97秒を記録しました。カール・ルイス選手はその後も記録を更新し、1988年のロサンゼルスオリンピックでカルヴィン・スミス選手の世界記録を更新する9秒92を記録しました。1991年に東京で開催された世界陸上競技選手権大会では9.86秒を叩き出し、人類史上初めて9.8秒台で100メートルを駆け抜けました。

カール・ルイス(1984年ロサンゼルスオリンピック)
カール・ルイス(1984年ロサンゼルスオリンピック)

 1990年代以降、世界記録は次のように数年ごとに更新され、「10秒の壁」は消滅し、9秒台の記録が当たり前になりました。

・米国のリーロイ・バレル選手(1994年9.85秒)

・カナダのドノバン・ベイリー選手(1996年9.84秒)

・米国のモーリス・グリーン選手(1999年9秒79)

・ジャマイカのアサファ・パウエル選手(2005年9秒77、2007年9秒74)

・ジャマイカのウサイン・ボルト選手(2008年9秒73、2008年9秒69、2009年9秒58)となっています。

 しかしながら、2009年のベルリンオリンピックのウサイン・ボルト選手の9秒58を最後に現在に至るまで世界記録は更新されていません。9秒58は前人未到の記録どころか後人未到の記録になっています。9秒7の壁を破った選手はボルト選手の他に米国のタイソン・ゲイ選手(2009年9秒69)、ジャマイカのヨハン・ブレーク選手(2012年9秒69)しかいません。ボルト選手の9.58秒がいかにすごい記録かわかります。

ウサイン・ボルト選手のベルリンオリンピックでの世界記録については「ココログ」夜明け前の「ウサイン・ボルト選手の最高速度は時速何キロか?」に20メートルごとのラップタイムや最高速度、およびYouTube映像のURLを記載してあります。

 日本人選手で10秒の壁を破ったのは桐生祥秀選手(9秒98 2017年)、サニブラウン・ハキーム選手(9秒97 2019年)、小池祐貴選手(9秒98 2019年)、山県亮太選手(9秒95 2021年)の4人です。多田修平選手も参考記録ながら2017年に9秒94をマークしています。

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