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2020年11月 8日 (日)

エックス線の発見(1895年11月8日)

 健康診断や病院の検査でおなじみのレントゲン写真。肺や胃などの内臓、骨折、虫歯の状態など、体の内部の様子を確認することができます。レントゲン写真の撮影にはエックス線(X線)と呼ばれる電磁波を使います。エックス線は物質を透過する性質があるため、ものの内部の様子を確認することができます。その様子を撮影したものがレントゲン写真です。

 エックス線は1895年11月8日にドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲンによって発見されました。 発見者の名前に因み、エックス線による写真がレントゲン写真と呼ばれるようになりました。

ヴィルヘルム・レントゲン
ヴィルヘルム・レントゲン

 レントゲンはもともとエックス線の発見を目的とした実験をしていたわけではありません。当時、レントゲンは真空放電や陰極線の研究をしていました。真空のガラス管の両端に電極を取り付け、高い電圧をかけると、ガラス管壁が発光します。この実験装置をクルックス管(真空放電管)と言います。クルックス管の陰極から飛び出し来るものがガラス管壁を光らせていると考えられ、陰極線と呼ばれるようになりました(陰極線の正体は1897年に電子であることが突き止められています)。

 レントゲンがクルックス管に高電圧をかけて陰極線を発生させているとき、近くに置いてあった蛍光紙(シアン化白金バリウムの紙)が暗く光っていることに気がづきました。クルックス管は黒い紙で覆われており、光が漏れていないのに蛍光紙が光ったのです。レントゲンはクルックス管の内部から黒い紙を通り抜けて未知の放射線が出ていると考え、これをエックス線と名付けました。レントゲンはエックス線の実験を重ね、エックス線が1000ページを超える分厚い本、ガラス、薄い金属箔を透過するが、鉛の板は透過しないこと、磁場の影響を受けないことなどを突き止めました。また写真乾板を用いることにより、エックス線で手の骨の写真を撮影することに成功しています。

 レントゲンはエックス線の発見と研究の成果により、1901年にノーベル物理学賞を受賞しました。ノーベル賞は1901年が第1回目でしたから、レントゲンはノーベル物理学賞を世界で初めて受賞した科学者にもなったのです。 

 レントゲン写真が撮れる仕組みを簡単に説明しましょう。エックス線はすべての物質を透過するわけではありません。エックス線が透過したところは黒く映り、透過せずに吸収されたところは白く映ります。たとえば、骨はエックス線を吸収するため、レントゲン写真では白く映ります。肺は空気が多量に含まれているので、黒っぽく映りますが、肺炎などにかかると、炎症が生じている部分が白い影となって映ります。

レントゲンが撮影した妻の手のレントゲン写真
レントゲンが撮影した妻の手のレントゲン写真

 エックス線は普通のレントゲン写真のほか、体内を輪切り状に撮影するCT(Computed Tomography、コンピューター断層撮影法)にも使われています。空港の手荷物検査にも利用されていることは良く知られていると思います。また、DNAの分子構造がわかったのもエックス線のおかげです。エックス線をDNAに当てたときに生じる回折現象(波が障害物のうしろに回り込む現象)を調べたたところ、DNAが二重螺旋構造をしていることがわかったのです。このようにエックス線の人類と医療への貢献は計り知れません。

 さて、今ではエックス線は電磁波の一種の電磁放射線であることがわかっています。その波長の範囲は10-8~10-12 nm(1 mの1億分の1~1兆分の1)です。ところで、同じ電磁放射線のガンマ線(γ線)にはエックス線と同じ波長のものがありますが、エックス線とガンマ線の違いは波長ではなく、その発生の仕組みの違いです。エックス線は原子核の周囲の電子の状態の変化によって発生し、ガンマ線は原子核の内部の状態の変化に伴って発生する電磁放射線です。

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