誰が名付けたウルトラマン
ウルトラマンの第一話を見るとわかりますが、ウルトラマンは自分のことをウルトラマンとは名乗っていません。
第一話でウルトラマンが初めて登場するのは、青色の球体を追いかけていた赤色の球体が、ハヤタ隊員が操縦する小型ビートルに衝突した後です。赤色の球体の正体がウルトラマン、青色の球体の正体はウルトラマンが連行していたベムラーです。ウルトラマンは逃げ出したベムラーを追いかけていて、ハヤタ隊員の小型ビートルに衝突したわけです。
この後、小型ビートルの墜落地で倒れていたハヤタ隊員を、赤色の球体が包み込みます。ハヤタ隊員は目を閉じたままですが、ウルトラマンと次のようなやり取りをします。
ハヤタ隊員「おい誰だ、そこにいるのは?君は一体何者だ?」
ウルトラマン「M78星雲の宇宙人だ」
ハヤタ隊員「M78星雲の宇宙人?」
ウルトラマン「そうだ。遠い宇宙からベムラーを宇宙の墓場に運ぶ途中、ベムラーに逃げ出されて、それを追って地球に来た」
ハヤタ隊員「ベムラー?」
ウルトラマン「宇宙の平和を乱す奴だ。悪魔のような怪獣だ。申し訳無い事をした、ハヤタ隊員。その代わり、私の命を君にあげよう」
ハヤタ隊員「君の命を?君はどうなる?」
ウルトラマン「君と一心同体になるのだ。そして地球の平和の為に働きたい」
~ウルトラマンがベータカプセルをハヤタ隊員の胸の上に落とす~
ハヤタ隊員「これは何だ?」
ウルトラマンマン「ベーターカプセル」
ハヤタ隊員「ベーターカプセル?」
ウルトラマン「困った時にこれを使うのだ。そうすると…」
ハヤタ隊員「そうするとどうなる?」
ウルトラマン「フッフッフッ..心配する事は無い」
この後、ハヤタ隊員を包み込んだ赤色の球体が爆発して消えてしまいます。このやり取りからわかる通り、ウルトラマンは自分のことをM78星雲の宇宙人だと自己紹介していますが、自分はウルトラマンとは言っていません。
物語が進んで、ハヤタ隊員はウルトラマンに変身し、ベムラーと戦います。ウルトラマンが登場すると、石坂浩二さんの淡々としたナレーションが始まります。こう言っています。
物語を第三者的に説明するナレーションも、ウルトラマンのことを「M78星雲の宇宙人」と呼んでいます。
なぜ、このM78星雲の宇宙人の名前がウルトラマンになったのか。それはドラマの最後にわかります。科学特捜隊の隊員たちが、こんなやり取りをします。
アラシ隊員「おーい!」
ハヤタ隊員「おーい」
アラシ隊員「ハヤタ!大丈夫か?」
ハヤタ隊員「五体ピンピンだよ」
イデ隊員「ハヤタ、君は本当のハヤタなのかい?」
ハヤタ隊員「本当も嘘も無い、実物はたった一つだよ。キャップ、ところでベムラーはどうなりました?」
ムラマツ隊長「うん、宇宙人がおっぱらってくれたよ!」
ハヤタ隊員「やっぱり彼が出て来ましたか。僕もそうじゃないかと 思って安心してたんですよ」
アキコ隊員「するとあなたを助けてくれたのも」
ハヤタ隊員「彼だ」
イデ隊員「ちょちょちょい待ち!彼彼って親しそうに言うけど一体名前は何ていうんだい?」
ハヤタ隊員「名なんか無いよ」
イデ隊員「よせやい!名無しのゴンベなんてあるもんか!」
ハヤタ隊員「うーん、そうだな…じゃウルトラマンなんてのどうだ?」
アキコ隊員「ウルトラマン?」
ハヤタ隊員「ああ、ウルトラマン。どうだ?」
イデ隊員「そりゃ..う~ん、ウルトラに良いでしょ」
アキコ隊員「でも、ウルトラマン、どっか行っちゃったんじゃないの?」
ハヤタ隊員「どこへも行かいさ。彼は自分の宇宙船(赤い玉?)が爆発して自分の星へは帰れなくなったんだ」
ムラマツ隊長「うむ。君は全く悪運に強い男だよ!」
ハヤタ隊員「僕は不死身ですよ、キャップ」
このやり取りでもわかるとおり、ハヤタ隊員が「ウルトラマンなんてどうだ?」と名付けているのです。 ハヤタ隊員の「なんてどうだ?」という思いつきで、M78星雲の宇宙人の名前がウルトラマンになったわけです。
ところが、たとえば33話ではメフィラス星人がハヤタ隊員に対してウルトラマンと呼んでいます。最終話では、ゼットンに倒されたウルトラマンを助けに来たゾフィーが、倒れているウルトラマンに対して、開口一番「ウルトラマン」と呼んでいます。なので、M78星雲の宇宙人がウルトラマンであることはみんな知っていたわけです。
変身していないハヤタ隊員はウルトラマンと一心同体になっています。この状態で、ウルトラマンの意識がどうなっているかは、いろいろ解釈があるのですが、ウルトラマンがハヤタ隊員の意識に働きかけて、ウルトラマンと名付けさせたと考えることもできそうです。
また、ドラマの描写ではハヤタ隊員とウルトラマンの記憶は共有されているように思いますので、ハヤタ隊員がウルトラマンという名前だったということを認識して、そのように名付けたと考えることもできそうです。
このとき、ハヤタ隊員が断定的に「あれはウルトラマンだ」というと、イデ隊員などに「なぜ名前を知っているのか」と突っ込まれることになります。そこで、ハヤタ隊員が皆を欺くために「なんてどうだ?」ととぼけたことを言って、M78星雲の宇宙人をウルトラマンだと知らしめた可能性もありそうです。
これはハヤタ隊員自身がそう言ったと解釈できるでしょうし、またウルトラマンがハヤタ隊員にそう言わせたとも解釈できるでしょう。それならばウルトラマンはハヤタ隊員と最初に出会ったときに「M78星雲から来たウルトラマンだ」と素直に名乗らなかったのしょうか。また最初に出会った時点で記憶が一体化しているならばハヤタ隊員がウルトラマンにあれこれ訪ねるのもおかしい・・・という疑問も残ります。
最初に出会ったときには記憶は一体化していなかった。ウルトラマンがハヤタ隊員にウルトラマンと呼ばせたと考えるのが一番辻褄が合うように思います。
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