ミレトス学派のタレス 万物の根源は何か
古代の人々にとって、身の回りのものが何からできているのか、この世界がどのようにできあがっているのかという疑問に対する答えは、世界中に神々による天地創造の神話がたくさんあることからわかるように、神々の存在だったでしょう。しかしながら、神々による天地創造のような説明は、地域や文化によって内容や解釈が変わるものであり、普遍的な真理ではありませんでした。
紀元前6世紀頃、現在のトルコの南西部に存在したイオニアにミレトスという古代ギリシャの植民都市が栄えていました。当時、ミレトスは地中海交易の拠点都市であり、様々な国から多くの人が訪れ、異文化交流が自然のうちに進みました。異文化交流が進むと、これまで人々が信じていた世界観や価値観が崩れ、多様化し、混乱しました。古代ギリシャの人々にとっては、彼らがそれまで信じていたオリンポスの神話が崩れていくことになりました。そのような中で、普遍的な原理の追求が行われるようになり、ここでミレトス学派という哲学者たちの活動が始まりました。これが哲学の始まりとなりました。
ミレトス学派の哲学者のタレスは、身の回りのものが何からできているのかを考えました。そして、タレスは万物の根源は水であり、私たちの身の回りに存在するすべてのものは水が姿を変えたものであると考えました。すべてのものは水から生まれ、そして滅ぶと水に返っていくと考えました。タレスが水を万物の根源を水と考えたのは、生命が水を必要としたからだと考えられています。
タレスの弟子のアナクシマンドロスは、万物の根源のことをアルケーと名付けました。そして、彼はアルケーは水のような実体的な物質であるはずがないと考えました。実体として存在する水が何からできているのかを説明する必要があると考えたからです。彼はアルケーは無限なもの(ト・アペイロン)であると唱えました。ト・アペイロンは変化することなく、常に新しい物質を生みだし続けるものです。そのアナクシマンドロスの弟子のアナクシメネスはアルケーは空気(息)であると唱えました。
タレスを始めとするミレトス派の哲学者が自然科学に与えた重要なことは「万物の根源は何か」という問いそのものを導き出したことに他なりません。彼らは、物質の成り立ちについて、誰にでも合理的に説明することが可能な原理は何かという視点で答えを求めたのです。
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