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2011年7月 1日 (金)

避難勧奨地点とは

原子力災害現地対策本部が福島県伊達市の113世帯を特定避難勧奨地点に指定しました。特定避難勧奨地点は警戒区域でもなく、計画的避難区域でもない場所で、避難は強制しないが、住民の判断で避難をした場合に支援を行う地域だそうです。何だかまた曖昧な対応のような感じがします。

避難勧奨地点とはどのような地点かというと、経済産業省に資料があります。

事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される特定の地点への対応について(「特定避難勧奨地点」)
http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110616007/20110616007.html

避難勧奨地点とは上記のタイトルの通り「事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される特定の地点」ということです。

計画的避難地域と特定避難勧奨地点の違いは次の通りとあります。

計画的避難地域 特定避難勧奨地点
対象となる区域 事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超える地点が、地域全体に広がりをもって存在 事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超える地点が、地域の一部に存在(除染が容易でない住居の単位で存在)
安全性の観点 生活全般を通じて20mSvを超える懸念がある 線量の高い地点を離れればより低い線量であることから、必ずしも生活全般を通じて20mSvを超える懸念は少ない
政府の対応 計画的な避難(政府として一律に避難を求める) 注意喚起、情報提供、避難の支援等(政府として一律に避難を求めるものではない)

特定避難勧奨地点の説明は、被曝の可能性としては深刻な方を採用せずに、良い方を取っているような感じがします。生活環境によって、20mSvの被曝を超える人は少ないということでしょうが、逆に考えれば、生活環境によって20mSvを超える人がいるということです。

例えば、安全性の観点の一文を次のように書き換えると、印象が大きくかわります。

  • 線量の高い地点に近づけばより高い線量であることから、必ずしも生活全般を通じて20mSvを超えないとは言えない

上記のページにある別の資料には、しっかりと次のように書いてあります。

  • 特定避難勧奨地点については、政府として一律に避難を指示したり、産
    業活動を規制したりするような状況ではありません。一方で、生活形態
    によっては年間20mSvを超える可能性も否定できません。

特定避難勧奨地点に指定された世帯に対して「年間20 mSvを超える可能性のある生活形態」というのが具体的にどのような生活なのか個別に説明があるのかもしれませんが、実際に生活していて20mSvを超える可能性があるのかどうかは分からないと思います。そのような状況で住民が避難して良いのやら、残って良いのやら正しい判断ができるでしょうか。結局のところ不安が残ります。

福島県伊達市の特定避難勧奨地点の指定は地域ではなく、世帯ごとの指定となっています。特定避難勧奨地点は113世帯で、32世帯が年間積算線量が20mSvを超えるようです。残りの81世帯は20mSVは超えないものの、近くに高い線量の場所があり、日常の生活で住人が高線量の場所ぶ立ち入る可能性がある世帯とされています。また、小学生以下の子どもや妊婦がいる世帯については柔軟に判断して指定に加えたとあります。

同じ地域の中でも、指定された世帯は避難すると支援されますが、指定されなかった世帯は避難したくても支援はされないという問題が残っています。同じ地域なのですから、多少離れていても、生活形態から高い線量の場所に立ち入らざるを得ない住民もいるかもしれません。その生活形態が生活の糧になっているのだとすると、支援が必要になるでしょう。

「年間20mSvを超える可能性のある生活形態」の生活形態の部分からきちんと判断するようにしないと駄目だと思います。不安だけでなく、さらに不公平感が広がることにもなってしまいます。皆で助け合いながら頑張っていきましょうという思いを、バラバラに壊すような対応でいいのだろうか・・・

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