昔は泥から生まれるといわれた生物
■長く支持された生物の自然発生説
紀元前4世紀頃、ギリシャのアリストテレスはダニやミミズ、エビやウナギなどの生物は泥から生まれると考え、生物の自然発生説を唱えました。
自然発生説はその後も長い間支持され続けました。17世紀の初めに、オランダのファン・ヘルモントは「汚れたシャツを倉庫に放置したら、ハツカネズミが自然発生した」という実験を行っています。当時の科学の知識では、ファン・ヘルモントが有名な錬金術師でもあったため、このような実験結果が認められたのです。
17世紀の後半になると、自然発生説を否定する実験が行われるようになりました。イタリアのフランチェスコ・レディは、口の開いたビンと蓋をしたビンの中に魚の死体を入れて、口の開いたビンではウジが発生するが、蓋をしたビンではウジが発生しないことを確認しました。この結果から、彼は蓋をしたビンはハエが卵を産みつけることができなかっ
たらウジが発生しなかったと結論づけ、生物の自然発生説を否定しました。しかし、ウジが自然発生しないことを証明できただけで、生物の自然発生説を完全に否定するまでには至りませんでした。
18世紀の後半、オランダのアントニー・レーウェンフックは自作の顕微鏡で湖の泥を観察していたところ、泥水の中で動き回っている微生物を発見しました。微生物の発見によって、微生物が自然発生するのかどうかの論争が起こり、自然発生説の議論を大きく進展させることになりました。
イタリアのラザロ・スパランツァーニは肉汁をフラスコに入れて1時間煮沸してから密閉すると微生物が発生しないこと、そのフラスコに空気を通じると肉汁が腐って微生物が発生することをつきとめました。彼の実験によって、食品を加熱滅菌して密封すると長期間保存できることがわかったのです。彼はこのことから生物は自然発生しないと結論づけましたが、彼と同じ実験をしたジョン・ニーダムは密閉すると酸素が供給されないから微生物が増殖しないと反論しました。この論争は19世紀に入っても続きました。
■パスツールの白鳥の首のフラスコ実験
19世紀に、ルイ・パスツールは微生物が自然発生するのかしないのか確かめる実験をしました。彼は新鮮な空気は入るが、微生物は入ることができないS字管のついたフラスコを使ってスパランツァーニと同様の実験を行いました。このフラスコに肉汁を入れて煮沸しました。もし、微生物が自然発生するならば、やがてフラスコの中で微生物が発生して肉汁を腐らせるはずです。しかし、肉汁は時間がたっても腐りませんでした。パスツールの実験で微生物が自然に発生することはないことが証明され、生物の自然発生説は完全に否定されたのです。
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