燃料電池の仕組み
電気は私たちの生活にとって必要不可欠なエネルギーですが、現在は主に火力発電や原子力発電によって作られています。日本は東日本大震災の影響もあり火力発電が主流ですが、世界の多くの国々では原子力発電が主流になっています。これは火力発電の燃料源である石油が有限な資源であること、火力発電で生じる二酸化炭素や窒素・硫黄などの酸化物が地球温暖化や酸性雨などの問題になるからです。しかし、原子力発電も放射性物質を扱う発電であり、発電の制御や放射性物質の廃棄物の処理問題など大きな課題が未だ残されており、決して理想の発電方式とは言えません。
長い間、環境に対する影響や資源の有効利用を重視した発電方式が考えられてきましたが、新しい電気エネルギー源として燃料電池が有望視されています。
電池は化学反応により電気を作り出すものですが、燃料電池も普通の乾電池や鉛畜電池と同じように化学反応によって電気を作り出します。しかし、燃料電池には他の電池とは大きく異なる特徴があります。電池はあくまでも電気を貯えることが目的ですが、燃料電池は化学反応を起こす物質(=燃料)を供給することにより連続的に電気を作り出すことができるようになっています。充電式の電池と同じように考える人もいるかと思いますが、充電式電池はあくまでも電気を貯えるのが目的であり燃料電池とは異なります。そういう意味で燃料電池は単なる電池と考えるよりも一種の発電装置と考えた方が的を射ています。
燃料電池が電気を起こす原理は非常に簡単です。学校の理科の実験で、水の電気分解を行った人は多いと思います。水の電気分解の装置は水に電気をかけて水素と酸素にするものですが、燃料電池は水の電気分解の逆の原理を利用したものです。すなわち、水素と酸素を反応させて水を得る反応で生じる電気を取り出す装置が燃料電池です。燃料電池の燃料は水素と酸素であり非常に簡単に得ることができます。また水素は爆発性が高く非常に危険な物質ですが、燃料電池は水素を直接燃料として使うわけではありません。LPガス、天然ガス、メタノールなどの化学物質から水素を取り出しながら反応を行います。従って貯えてある水素が爆発するなどというような事故は起きません。安全に安定的に水素を供給し電気を得られるしくみになっています。
燃料電池は①有害物質の発生が非常に低い②燃料源に幅があり資源の渇枯問題に柔軟に対応できる③発電効率が比較的高い④燃料電池は発電機でもあり電力会社からの送電ロスをなくし資源の有効利用ができる⑤電気を発電する際に発生した熱を利用できるというような特長があります。燃料電池は将来、様々な分野で利用されるようになるでしょう。一家に一台燃料電池が設置される時代が来るかもしれません。
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