宇宙のトイレ事情の歴史
一九六一年四月十ニ日、人類初の有人宇宙ロケットが旧ソ連によって打ち上げられました。このロケットに乗っていたのは、ユーり・ガガーリン宇宙飛行士。「地球は青かった」という彼の言葉で、人類の宇宙への旅立ちが幕を開けたのです。アポロ計画での月面着陸、スペースシャトルの登場、大規模な国際宇宙ステーション開発など、人類は輝かしい宇宙開発の歴史を刻んいます。
私たちに先駆けて宇宙を旅した宇宙飛行士たち。宇宙空間といえども、そこには人の生活があります。睡眠を取ったり、食事をしたりとありますが、一番大変だったのは、うんちとおしっこの後始末だったようです。最初の頃は、宇宙服を着たままで、おしめをしていたといいますから大変です。
アポロ計画の頃までのロケットにはトイレはありませんでした。この頃は、うんちとおしっこを袋に詰めて地球に持ち帰っていました。
おしっこは、管のついた採尿袋に集め、貯まってくると宇宙空間に捨てていました。おしっこは、真空・低温の世界で細かな氷の粒となります。そこに太陽光が当たると、ダイアモンドダストのように輝いて見えるそうです。
うんちは接着剤のついた袋をおしりにあてがってしましたが、何せ無重力ですから、ふんばりがききません。やっと出ても、プカプカと浮くわけですから、宇宙飛行士にはたいへん不評だったようです。
一九六五年、二機のロケットで世界初のランデブーに成功した米国のジェミニ計画では、片方のロケットで大事件が起きていました。うんちの袋の口が開いてしまい、船内をうんちが浮遊、どうすることもできなくて、その状態で地球に戻ってくるはめになったというのです。
このように、宇宙開発の歴史は、宇宙飛行士とうんちとおしっことの戦いの積み重ねの歴史でもあったわけです。
最新のスペースシャトルのトイレは一メートル四方の小さなスペースの中にあり、男女兼用です。原理は掃除機と似ており、うんちやおしっこを吸引する仕掛けになっています。うんち用の便器は洋式トイレに似ていますが、無重力空間の中で体が浮かないようにシートベルトがついています。便器の真ん中に一〇センチぐらいの口があり、そこから、うんちを空気で吸引します。吸引されたうんちは、乾燥・粉砕されてタンクに貯蔵されます。
ちなみに無重力空間で、この吸い込み口に合わせて便器に腰掛けるのにはちょっとした熟練が必要で、宇宙飛行士の地上訓練にはトイレの訓練があるそうです。おしっこの場合は、トイレにの中にある掃除機のホースのような管を排泄器官にあてがい吸引します。最近は、船外に捨てずに、貴重な水分をリサイクルする方向へ研究が進んでいるようです。
宇宙遊泳をしているときはどうするのでしょうか。実は宇宙飛行士は、打ち上げ、宇宙遊泳、宇宙から地球に戻るときには宇宙服を着ています。宇宙服には与圧がかかっており、トイレを使うことができません。このときばかりは、今も採尿袋とおしめを使っているのだそうです。
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