フェルマーの原理とスネルの法則の関係を考えてみましょう(リクエストのあった式の導出です)。
■フェルマーの原理
まず下図の左を見てください。私たちがA地点からB地点に向かうとき、その経路は無数にあります。A地点からO地点を経由してB地点に向かう、A地点からB地点に直接向かう、あるいはA地点からB地点にジグザグに進んで向かうなどがあるでしょう。しかし、普通は最短距離となるA地点とB地点を直線で結んだ経路を取ると思います。最短距離を選べばもっとも早く目的地のB地点に到達するからです。つまり最短時間で目的に到達できるということです。ただし、これはどの経路を通っても移動速度が変わらないという大前提があります。
最短距離が必ずしも、最短時間にならない場合もあります。下の図の右を見てください。右の図は海岸をイメージしたものです。A地点からO地点のところまでは砂浜、O地点からB地点までは海となっています。海岸の砂浜のA地点から、海上のB地点まで一番早く到達する経路を考えてみましょう。ここで問題になるのは、海の中を移動する速さは砂浜を移動する速さより遅いということです。A地点とB地点を直線で結ぶ①の経路は最短距離ですが、この経路だと海の中を走る距離が一番長くなります。一番早くB地点にたどりつくことができるのは②の経路のようになるのです。
光は同じ媒質を進むときは直線しますが、光がある媒質から別の媒質に入るとき、光は媒質と媒質の境界面で進む方向が折れ曲がり屈折します。下の図は光が空気中から水中に入るときの様子を示したものです。
光の速度は真空中ではおよそ秒速30万キロメートルです。空気中の光の速度は真空中とほとんど変わりませんが、水中での光の速度は約秒速22.5万キロメートルになります。光が空気中から水中に入ったとき、光はある角度で折れ曲がりますが、その角度の大きさ、つまり屈折角の大きさは光が水中を進む距離が短くなるようになるのです。
フランスの数学者のフェルマーは「最短時間で到達できる経路が、実際に観測できる光の通る道筋である」と説明しました。この原理をフェルマーの原理といいます。
■スネルの法則
オランダの天文学者でもあり数学者でもあったスネルは、入射角θ1と屈折角θ2の関係について次のような図を示し、入射光と垂線、屈折光と垂線とが作る2つの三角形の高さの比が常に一定になることを導き出しました。
スネルの法則の式を使うと、屈折率が異なる2つの媒質の境界面で光がどれくらい屈折するのかが分かります。例えば、光が入射角30度で空気中から水中に入った場合、空気の屈折率n1は1ですから、屈折角は sinθ2=sinθ1/n2 で求めることができます。屈折角は22度ということになります。
■ スネルの法則は最短時間の経路を示すか
スネルの法則で導かれる光の道筋が本当に最短時間となっているのかを考えてみましょう。<時間=距離/速さ>ですから、時間が最小となるような距離になっているかどうかを確かめられば良いということになります。
次のような図で考えてみましょう。
光はP点を出て、O点で屈折して、Q点に向かいます。光が移動する距離はPO+QOということになります。媒質1での光の速さをv1、媒質2での光の速さをv2とすると、光がP点からQ点に移動するのに必要な時間tは
t = PO/v1 + QO/v2
となります。POおよびQOは次の三平方の定理の関係から求めることができます。
PO2 = a2 + x2
より
PO = ( a2 + x2 )1/2
また、
QO2 = b2 + (c-x)2
より
QO = ( b2 + (c-x)2 ) 1/2
つまり、
t = ( a2 + x2 )1/2/v1 + ( b2 + (c-x)2 )1/2/v2
となります。この式の極小値を求めれば良いということになりますから、dt/dx=0を求めれば良いことになります。
ちょっと難しそうですが、合成関数の微分を考えれば簡単です。右辺の第1項の分子について考えてみましょう。
u1 = ( a2 + x2 ) とし、t1 = u11/2 とします。
dt1/du1 = 1/2 u1(1-1/2) = 1/2 u1 -1/2
du1/dx = 2x
dt1/dx = (dt1/du1)(du1/dx)
= (1/2 u1 -1/2 )(2x)
= x / (u11/2)
= x / ( a2 + x2 )1/2
ということになります。
第2項の分子も同じ方法で解くことができます。
u2 = b2 + (c-x)2 とし、t2 = u21/2 とします。
dt2/du2 = 1/2 u2 -1/2
du2/dx = -2 (c-x)
dt2/dx = (dt2/du2)(du2/dx)
= (1/2 u1 -1/2 )(-2(c-x))
= -(c-x) / (u21/2)
= - (c-x) / ( b2 + (c-x)2 )1/2
となります。
tの微分は
dt/dx = x / v1( a2 + x2 )1/2 + - (c-x) /v2 ( b2 + (c-x)2 )1/2
PO = ( a2 + x2 )1/2 QO2 = b2 + (c-x)2 ですから
dt/dx = x/(v1PO )+ -(c-x)/(v2QO)
ここで、x/PO = sinθ1、(c-x)/QO = sinθ2であることを考慮すると、
dt/dx = sinθ1/v1 - sinθ2/v2
dt/dx = 0 ですから
sinθ1/v1 = sinθ2/v2
v1、v2は光速をc、媒質1と媒質2の屈折率n1、n2を用いると、
v1 = c/n1、v2 = c/n2
となります。これを上の式に代入すると、
n1 sinθ1 = n2 sinθ2
となり、スネルの法則の式となります。
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