鉄砲魚(Archer Fish )と光の屈折
先日、早撃ちシュリンプという記事で、Pistol Shrimpの映像を紹介しました。
鉄砲というとやはりすごいなと思うのが、鉄砲魚(Archer Fish )です。
この映像を見るとわかりますが、水中から空中の枝にとまっている昆虫に水鉄砲で撃ち捕食します。鉄砲魚は水の中から目で昆虫に狙いを定めて水鉄砲を撃つわけですが、光は空気中から水中に入るときに、境界面で屈折して折れ曲がります。
写真のようにカップの底にコインを置き、カップのふちでコインが見えなくなる位置に目線を合わせ、カップに水を入れていくと徐々にコインが見えてきます(画像はアニメーションgifになっています。クリックしてください)。
この現象を図で示すと次のようになります。
(A)のように水がない場合は、コインから出た光は矢印のように進むため、カップの縁にさえぎられ目には届きません。水を入れると(B)のように水面で光が折れ曲がり、コインから出た光が目に届くようになります。ところが、私たちは、光が水面で折れ曲がったことは分からないので、コインがあたかもP’の方向にあるように見えるのです。水の入ったコップの中に入れた箸が折れ曲がってみえたり、風呂の中で手や指が短く見えたりするのも同じような理由で起こる現象です。鉄砲魚は水中にいますからこの逆のことが起こっているわけです。上のカップの例でいうと、コインの位置に鉄砲魚の目があることになります。
光がどれぐらい折れ曲がるのかはスネルの法則を使って求めることができます。
鉄砲魚はスネルの法則を本能的に利用しているということになります。
【追記(2007/08/21)】
この記事に関して、鉄砲魚は本当に屈折を補正するように水鉄砲を撃っているのかというコメントを頂いています。鉄砲魚が水鉄砲を撃つときには、エサのほぼ真下にくるので、屈折はあまり関係ないのではないかという話になっていますが、それだけではない部分もありそうな感じもします。
Google Scolarでarcher fish refractionをキーワードに検索してみると、最近でも論文がたくさん出ているようです。序文にまだよくわかっていないのではあるが・・・と書いてあるのもありました。ちょっといろいろと調べてみようと思います。
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コメント
コメントありがとうございます。
現在、お話をしている内容の範囲では光の道筋については幾何光学で求めることができますし、カワセミが水の中に入るときの道筋は~弾丸のようなものでないので面倒ですが~物体の運動で考えることができるかと思います。おそらくエリプソさんもそのようなお話をされていたのだと思います。自分が悪いのですが、お話が最初とだいぶずれてきましたし、ここで光と物質の相互作用についてのお話を続けるのも困難に思いますので、このあたりで幕引きとさせて頂ければ幸いです。すみません。
投稿: toshizo | 2007年8月22日 (水) 23時22分
ご返事ありがとうございました。
物体が界面をへて異なる媒体に入ったとき、速度や方向が変わることをいい表す言葉がなかったので、光(電磁波)などの波とのアナロジーでわかりやすく「屈折」と表現したまでです。光と物体の両者については、媒質中の運動量とその不連続生を考慮すれば、同じように議論できるはずです。運動量を基本として屈折現象を議論しなければ、例えばX線が金属を通ときの屈折率が1より小さくなる現象など、グローバルには説明できないでしょう。
投稿: エリプソ | 2007年8月22日 (水) 20時27分
エリプソさん、コメントありがとうございます。
自分はよくカワセミなどの鳥類の観察によく出かけるのですが、カワセミが木の枝から水面に飛び込んで魚を捕まえるまでの時間はわずか1秒か2秒のできごとです。様子を見ていますと、最初に定めた狙いを途中で補正するのはもちろんやっていると思いますが、最初に定めた狙いもかなり正確のように思います(最終的に垂直に飛び込む場合でも)。週末に観察にいくつもりなので、カワセミを見かけたら注意して見てみます。
光が空気中から水中に入るときの屈折と、物体が空気中から水中に入るときに方向がずれることを、同じように「屈折」と表現されていますが、光の屈折と物体の運動は単純に比較できないのではないかと思います。
http://www.moge.org/okabe/temp/quantum/node3.html
投稿: toshizo | 2007年8月22日 (水) 06時45分
お騒がせしております。
しつこくて申し訳ございません。
光がなぜ屈折するかというと、例えば空気水界面で運動空間が突然変化するわけで、空気中の運動量と水中の運動量が異なるためです。水面に垂直な方向をy軸とし、それと直交する方向をx軸とすると、光なりカワセミなりが入射した場合、x軸方向の運動量は保存しますが、y軸方向は保存しません。従って運動量の比が屈折率の比なるわけです。なにが言いたいかというと、光が屈折するのと同じように、カワセミも斜めに入水すると突入してきた空気中のベクトルとは異なる水中でのベクトルになってしまうわけです。ですから、仮に屈折率を補正して獲物をめがけて斜めに入水しても、カワセミ自身が「屈折」して、「一撃」で獲物を捕らえることは困難だと思われます。これが「一撃」できるとするならば、カワセミは屈折率を補正してねらいを定め、自身の体重、入水速度などなどを補正するという非常に困難な動作を行わなければならないでしょう。カワセミが斜めに入水して獲物を捕らえる現実は、獲物を視認したあと、だいたいの場所に斜めでも垂直でも入水したあと、水中で獲物にねらいを定め、水中を「泳いで」、捕らえている、つまり「一撃」で捕らえている訳ではないのでは、と思っています。一撃で捕らえる場合は、獲物の真上からの垂直入水の場合が多いのではと考えます。
投稿: エリプソ | 2007年8月21日 (火) 11時57分
エリプソさん、コメントどうもありがとうございます。
確かに水面すれすれから、90度に近い角度で水鉄砲を撃てば屈折によるずれは小さくなりますね。最初に紹介したビデオだと70~80度ぐらいでしょうか。
またカワセミは確かにホバリングを頻繁に行いますのでなるべく真上から魚を捕るようにしているのだろうと思います。
おっしゃる通り、やりやすい方法で捕食しているというのは理にかなっていると思います。
ただ、いろいろと観察していると、それだけじゃなさそうな部分もありそうだなとも思っています。
たとえば、よく自分はカワセミを観察していますが、そこそこ離れたところに、かなり斜め方向から飛び込んで素早くエサをとるときがあります。
それから、下記の映像は鉄砲魚ですが、映像から水面付近での口と目の位置関係がわかりますが、この感じだと口と目の位置の違いはありそうだなと思えてしまいます。
http://jp.youtube.com/watch?v=_6LsXA_FJ
Google Scholarで「archer fish refraction」で検索してみたら最近の研究論文もたくさん出てきました。どうもまだよくわかっていないこともたくさんあるらしいです。
http://scholar.google.com/scholar?q=archer+fish+refraction&hl=ja&lr=&start=10&sa=N
エリプソさんのご指摘のおかげでいろいろと調べるきっかけができました。このあたりを調べるのとても面白いです。
投稿: toshizo | 2007年8月21日 (火) 04時42分
こんばんは。お返事ありがとうございます。
水槽などで飼われていて、いつも同じ位置に餌を置かれているテッポウ魚は斜めからねらうこともあるということを聞いた事があります。マングローブの林などにいる天然のテッポウ魚は、獲物がいる位置が一定でなく、動くこともあり、生きるために確実に打ち落とさねばならないこともあり、真下からねらうことが多いようです。いずれにせよ、テッポウ魚が水をはき出すときは、口が水面より上に出ており(でないと、水の抵抗で鉄砲水の勢いがそがれる)、口のそばにある目も水面近くにあり、水中で屈折した光の変位量もわずかで、虫の大きさと光の入射角が有る程度小さいことを考慮すると、スネルの法則を意識しなくても打ち落とすことができると考えられます。カワセミも水上でホバリングして魚を探した後、ほぼ水面に対して垂直にダイビングするようで、状況によって多少斜めに入水することも有りますが、いずれにせよ、入射角は非常に小さく、獲物の大きさを考慮すると、光の屈折による変位を意識すること無しに、十分獲物を捕獲できると思われます。捕食は生きるための重要な行為で、できるだけ確実かつシンプルに行われるものだなぁと思っています。
投稿: エリプソ | 2007年8月20日 (月) 23時01分
エリプソさん、コメントありがとうございます。
確かに鉄砲魚が水鉄砲を撃つときにはターゲットのほぼ下に来ることが多いのですが、以前に鉄砲魚の水槽を見たときにはかなり斜めの方向に飛ばしていました。
YouTubeで探してみたところ、若干斜めぎみに水鉄砲を飛ばしている映像がありました。
http://www.youtube.com/watch?v=3f3vUhA3920
できることなら、水槽に障害物などを置いて、真下に来られないようにして実験してみたいです。
あとカワセミなどの鳥が川にダイブして小魚をとるときも、木の枝からかなり斜め下の水面に飛び込んで魚を捕まえるのをよく見ます。
投稿: toshizo | 2007年8月20日 (月) 18時01分
テッポウ魚が水テッポウの様に水を吹きだし虫を落とす能力には感心します。
でも、テッポウ魚が水と空気の間の屈折率差を考慮してねらいを定めているというのは、ややテッポウ魚を買い被りすぎかと。テッポウ魚が獲物を撃ち落とすときの画像をよくごらんいただければわかると思いますが、テッポウ魚は、ほぼ、獲物の真下から打ち落としていることがわかります。スネルの法則を説明した図では、θ1=θ2=0、つまり、水中からでも空気中の獲物の位置がずれて見えない獲物の真下からちゃんとねらっているわけで、単純な戦略です。生物はたしかに神秘的ですが、以外と単純?
投稿: エリプソ | 2007年8月20日 (月) 14時22分
出かける10分前ぐらいに急いで書いたので誤変換が多くなってしまったようです。
ヘクトの本は本屋さんでも売ってると思いますので、中身を見てから買うと良いのではと思います(紙がペラペラなので、買うのはamazonが良いかも)
投稿: toshizo | 2007年8月16日 (木) 23時10分
お返事ありがとうございます。
買ってみようと思いました。
#このごろamazonの空箱が増えてきました。vv
厚さの盛夏・暑さの成果?
暑さのせいか、変換ミスが多かったですね。(笑)
投稿: 科学の芽 | 2007年8月15日 (水) 22時19分
コメントありがとうございます。
厚いですね。寝室の部屋のエアコンが壊れてしまったらしくえらい目にあっています。
鉄砲魚は2mぐらいまで射程距離があるそうです。このぐらい離れると、水が重力で放物線状になると思います。その分も考えて水鉄砲を撃ってるのでしょうね。
図は矢印の入ってないのをアップしてしまいました。跡で修正しておきます。ありがとうございます。
私たちは物体から出た光がまっすぐに目に届くことを経験的に知っているので、屈折や反射で光の道筋が変わると「だまされる」ことになります。鏡は手品でもよく使われますね。
ヘクトの本は他の光学書に比べると説明と図が多いのでだいぶ理解しやすいと思います。式ばっかりで面食らうということはないと思います。とりあえず1と2を買ってはどうでしょうか。おそらく、普段実験とかやられているので大丈夫と思います。
マックス・ボルンの光学の原理というのも有名ですが、こっちは式ばっかりです。やはりヘクトがお勧めです。
投稿: toshizo | 2007年8月15日 (水) 20時19分
こんにちは、暑中お見舞い申し上げます。
ご紹介ありがとうございます。
魚も、進化の過程で、勉強していったのでしょうか?不思議です。
(A)の図の矢印がないですよ~ん!
最近、錯覚の本をよく見てるのですが、光はまっすぐに進んでくると人は思っているから、POから光が来ていても、P’Oから光が来ているように感じるんだ。と解釈しています。これってわかりやすいと思いますが、間違っていませんよね。
それと、先日紹介されていた、3冊の光の本は、私には、難しいでしょうか?
見ずに購入するのは、ちょっと引けてるのですが...
以上です。お邪魔しました。
投稿: 科学の芽 | 2007年8月15日 (水) 19時44分