眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く
アンドリュー・パーカー (著) 渡辺 政隆 (翻訳) 今西 康子 (翻訳)
カンブリア紀(5億4300万年前~)に爆発的な進化をとげた生物の秘密を光をキーワードに解き明かしていきます。生物にとって光と色は何か?、生物がどうして/どのように光を感知する眼を獲得したのかなど、著者の学説を丁寧に解説しています。
一つは、なぜカンブリア紀以前の地層から化石が見つからないのか? もう一つは、眼という「完璧にして複雑な器官」が進化によって説明できるのか? 本書によって、この二つの問いがふいにつながり、眼の誕生がもたらした壮大な進化ドラマが見えてきた。
5億4300万年前、カンブリア紀の始まりと同時に、生物は突如、爆発的に進化した。カンブリア紀の爆発として知られるこの急激な進化は、なぜ起こったのか?
その謎に挑んだ若き研究者は、もともと貝虫類というミジンコなどの仲間を研究していた。ある日、貝虫がきらりと光る。その光に魅せられ、生物の体色研究にのめりこんだ彼は、バージェス動物の体色を現代に甦らせ、ついにカンブリア紀の爆発の謎にたどりつく。
カギを握るのは「光」。光は生物進化にいかなる影響をもたらしたのか?
地球最初の眼が見た光景とは? そして生物学、地質学、光学、化学などの最新の成果から見出した「光スイッチ説」とは? 画期的アプローチで生命史の大問題に挑む。まさに目からウロコの興奮と驚き、生命進化の奥深さを実感する書だ。
内容(「BOOK」データベースより)
ダーウィン、グールドをも悩ませた爆発的進化の原因とは?5億4300万年前、生命最初の「眼」がすべてを変えた。生物はなぜ、突然、爆発的に進化したのか?そのカギをにぎる「光スイッチ」とは―。生命史最大の謎に迫る、驚きの新仮説。
抜粋
今を去ること5億4300万年前、今日見られる主要な動物グループのすべてが、いっせいに硬い殻を進化させ、それぞれ特有の形態をもつにいたった。しかもそれは、地史的に見れば一瞬に等しい期間で起こった。これこそ、動物進化におけるビッグバン、史上もっとも劇的な出来事といってよいかもしれない。では、この「カンブリア紀の爆発」と呼ばれる出来事を招来した起爆剤は、いったい何だったのか。
この尋常ならざる爆発的進化を起こした原因については、これまでにさまざまな説が提唱されてきたが、納得のゆくものはなかった。いずれにも強力な反証が存在するのだ。有力とされる説もくわしく検討してみると、どれもみな、進化史上の異なる出来事を説明する説ではありえても、カンブリア紀の爆発そのものの説明とはなっていないことがわかる。早い話、進化のビッグバンで起きたことに関しては多くのことが書かれ、広く知れ渡っている一方で、それが起きた原因については皆目わかっていないというのが実情なのだ。本書の目的は、カンブリア紀の爆発が起こった原因を解き明かすことにある。
その原因を解き明かすにいたった物語を語るにあたっては、「謎」とか「手がかりを捜す」といった表現がぴったりである。そう、この物語は、科学的犯罪捜査として語るにふさわしい話題なのだ。したがって本書はおのずと探偵小説の構成をとることになった。
これまではぼくは、関心が赴くまま、また目前に立ちはだかる謎を解く必要上から、さまざまな研究分野に首を突っ込んできた。歩んだ道は決して平坦な者ではなかったが、長い捜査の果てに姿を現したのが、カンブリア紀の謎だった。謎をひとつひとつ解き明かす過程でおのずと証拠が集積され、最後に手にした答については、今もって反証の現れる兆しがない。つまり、最後に残ったこの答こそが「真実」であると、ぼくは確信している。
発売日 : 2006/2/23
単行本 : 384ページ
ISBN-10 : 4794214782
ISBN-13 : 978-4794214782
出版社 : 草思社 (2006/2/23)
言語: : 日本語
目次
第1章 進化のビッグバン
第2章 化石に生命を吹き込む
第3章 光明
第4章 夜のとばりにつつまれて
第5章 光、時間、進化
第6章 カンブリア紀に色彩はあったか
第7章 眼の謎を読み解く
第8章 殺戮本能と眼
第9章 生命史の大疑問への解答
第10章 では、なぜ眼は生まれたのか
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