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2007年5月 2日 (水)

世界最古のレンズは本当にレンズか?

Googleで「最古のレンズ」で検索してみると、「紀元前700年頃、現在のイラクの北方にあったアッシリア文明の都市ニネヴェの遺跡から、直径3.8cm、焦点距離11.4cmの水晶のレンズが見つかっている。このレンズは太陽光を集めるのに使われた」という説明がたくさん出てくる。これはいったい何が原典になっているのだろうか。

海外ではこちらのサイトに似たような記述がある。いろいろ検索してみた。たぶん原著は下記なのであろう。

W. B. Barker, The Nineveh Lens, British Journal of Physiological Optics, Vol. 4, No. 1, January 1930., pp. 4-6.

この論文を引用して説明しているサイトでは、このレンズは大英博物館にあり、レイヤードという人物が1853年に発見したとかかれています。

しかし、大英博物館にある1853年にレイヤードが発見した「水晶体の小片」はアッシリア文明のニムルドという都市で見つかったもので、紀元前800~900年頃のものとなっている。このことは、1996年に日本で開催された「アッシリア大文明展」の図録 『大英博物館 アッシリア大文明展 芸術と帝国』 にも写真付きで紹介されています。

レイヤードの発見が1853年、上記の論文が1930年、77年もの開きがあるのも気になるところです。

 レヤードが水晶の小片を発見したとき、彼はすぐにそれがレンズではないかと想像したそうです。小片の大きさは、長さ4.2cm、幅3.45cmでほぼ円形の形をして、厚さはもっとも肉厚のところが0.64cmでした。そして、小片の片面が平らで、他方は凸レンズの形をしていました。本の上に置くと、文字を拡大して見ることができました。たくさんのレンズの専門家が調べた結果、この水晶の小片は焦点距離が12cmのレンズであり、意図的にレンズとして作られたに違いないと結論づけられ、それ以来、「ニムルードのレンズ」と呼ばれるようになりったそうです。

プトレマイオスがガラス玉で物を拡大して見ることができると述べたのが紀元後2世紀のことですから、もし、それより古い紀元前のアッシリアから精巧なレンズが見つかったとなると、これは世紀の大発見ということになりますが、その時代に意図的に作られたレンズが存在していたとはたいへん考えにくいです。

発見者のレヤードは「この小片は多くの不透明な青いガラス片の下から出土した。それらのガラスは朽ち果てた木製や象牙製の何かを覆っていた象嵌材の破片と考えられる」と報告しています。つまり、壁や何かの像などに埋め込まれていた水晶の板ということになります。たまたまレンズの形をしていただけで、太陽の光を集める目的で作られたレンズではなかったわけです。現在では、家具や置き物などの装飾に使った象嵌材として作られた可能性が高いというのが考古学の専門家の見方のようです。

ということで、インターネットで「世界最古のレンズ」と紹介されているニネヴェのレンズというのは、「ニムルードのレンズ」と同じもののことであり、最古のレンズではないと結論づけておきたいと思います。

これがその「レンズ」の写真です。

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